第14回 県立自然科学館 夏の特別展「トイレ?行っトイレ!」を体験

新潟県立自然科学館は、昭和56年(1981)11月に開館。地上3階、地下1階の鉄骨鉄筋コンクリート造のモダンな外観の建物です。
毎年夏には親子で楽しめる特別展を実施。今年は、「トイレ?行っトイレ!~ボクらのうんちと地球のみらい」と題し、子どもから大人までトイレの問題をみんなで考える企画展を8月28日(日)まで開催しています。

新潟バイパス桜木ICから車で約3分。緑豊かな鳥屋野潟公園の一角にある。

日本では長らく、トイレのことを「不浄」「けがれのある場所」と言って人前で話すことを避けてきました。「私たちはこれまで、トイレやうんちについて周囲の人と話すことを余りしてきませんでした。むしろ話題にしてはいけないと考えてきたように思います」と語るのは、同館広報連携グループの坂川亜由美さん。「トイレには、食べることと同じで日常的に考えなければいけない重要なことがたくさんあります。今回の特別展を親子や友達同士でトイレやうんちに関して話し合える良い機会にしたい」と坂川さんは続けます。

「自然科学館は楽しく体験しながら学べる施設です。ぜひ遊びに来てくださいね」(坂川さん)。

トイレやうんちを徹底的に明るく楽しく学べる今回の特別展。さあ、これから順番に体験して行きますよ。

会場入口では、うんちのキャラクター「ブリット君」がお出迎え。

エントランス付近では、特別展をナビゲートしてくれるトイレやうんちのキャラクターと一緒に、おもてなしの心に満ち溢れた最先端のトイレが出迎えてくれました。

トイレは確実に進化してきた。最先端のトイレには、便座に座っている間中、好みの音楽が流れるものもある。

おや、トイレのキャラクター「トイレの助」が何やら叫んでいます。「人間たちは、僕らトイレのことを『汚い』『臭い』『はずかしい』と思っている。僕らは彼らを友達だと思っているのにあんまりだ。ありがとうって感謝もしてくれない。もう人間のうんちなんて流してあげないよ!」それは、トイレの助のストライキ宣言だったのです。

トイレにも不満がいっぱい。

「トイレの助の機嫌を直すには、今からトイレやうんちのことをしっかり勉強して、『ありがとう』って伝えるしかない。僕のためにもトイレの旅に行って来て!」とうんちのキャラクター「ブリット君」が私たちに訴えます。

流されないで、トイレの中にいるブリット君。ブリット君のためにも何とかしなきゃ。

毎日つき合っているのに、私たちは意外とうんちのことを知りません。まずはうんちの基本を知らなくては・・・。そこでまず、さまざまな生きもののうんちを観察できるエリアに向かうことにしました。うんちは、色や形、においなどから、体の内部の状態を教えてくれているそうです。「うんちにはブリストルスケールという国際的な基準があって、コロコロしたものからピシャピシャしたものまでその状態を7段階に分けています。理想はブリストルスケール4のうんちで、水分もちょうどよく『完璧なうんち』と言われています。ヨーロッパなどでは、医者と患者の会話で『今日はレベル何々だよ』などと普通に話せるくらい浸透しているそうです」(坂川さん)。

7段階に分かれたうんちの模型。色や形が本当にリアル。

「自由研究を考えているのなら、動物のうんちのコーナーがおすすめです」と坂川さんが教えてくれました。動物のうんちを分析すると、食生活や消化の仕方から生活環境までわかるそうです。このエリアでは9種類の動物を紹介していて、食べものや体のしくみによって、出てくるうんちが異なることを実物を見ながら理解できます。「小さいお子さんは『大きい動物はふんも大きい』で済ませてしまいますが、もう少し年齢が上がってくると、『象さんは体の器官が単純だからボンと出てくる』とか、『キリンさんは反芻(はんすう)するからだ』とか、体のしくみや消化の仕方と関連付けて考えるようになります。『他の動物も見てみよう』とか、『自分の身近な犬や猫はどうかな』などと対象を広げていくと研究に厚みも出ます」(坂川さん)。

パンダやトラなど普段見ることのできないさまざまな動物のうんち(レプリカ)が展示されている。

「香りの嗅ぎ分け体験もおもしろいですよ」と坂川さん。香りは良い香りだけだとなかなか深みが出ないが、良い香りの中に臭い香りを入れると深みが増して、さらに良い香りとして感じることができるそうです。会場では、良い香りだけのもの、臭い香りのもの、この2つを混ぜたものの3種類を実際に嗅ぐことでその違いを体感できます。

左から香料のみのにおい、うんちのにおい、うんち+香料のにおい。

私たちが一生のうちにトイレで過ごす時間を合わせると、約3年だそうです。そう考えるとトイレにもっと気を配ってもいいのかもしれません。会場内にマジックミラーで覆われたおもしろ空間のトイレを見つけました。その名も「1人になれないトイレ」。

右:マジックミラーで囲まれたトイレ。外側からは中を見ることができない。

中に入ってトイレに座ってみましたがなんだか落ち着きません。広さや環境が異なると落ち着けないのがトイレなのかも・・・。

マジックミラーで囲まれたトイレの内側から見える外の様子。外側からはこちらが見えないとわかっていても落ち着かない。

トイレの助に納得してもらうためには、トイレの歴史も知らなくては。会場内にある歴史コーナーでは、紀元前5000年まで遡るトイレの歴史を紹介していました。

そのまま自由研究のテーマになりそうな資料がたくさん展示されている。

あれ?子どもたちの楽しそうな声が向こうの方から聞こえます。うんちの帽子を被ったお姉さんが、指差す方向を見てみると・・・。

うんちの帽子を被ったスタッフの方が、にこやかに応対してくれる。

そこには巨大なトイレの滑り台が!子どもも大人も大興奮の様子。“うんちの帽子”を被って階段を上り滑り台をジャーッと降りると、そこにあるのは下水道の世界。水がきれいになる仕組みやうんちに含まれる利用可能な資源の回収など、トイレの先に広がる世界が疑似体験できます。さあ、うんちになりきって下水道の旅へ「行っトイレ!」。

子どもも大人もうんちの帽子を被ってうんちの気分を満喫!

「トイレの問題は地球環境や再生エネルギー問題にもつながっています」と坂川さん。国際宇宙ステーションで使用されている現在のトイレは、空気の流れでおしっことうんちを吸い込み、尿を飲料水として再利用していますが、次世代のものはおしっことうんちを分けて回収し、おしっこは再生水に、うんちを植物の肥料にすることを目指して開発中だそうです。宇宙船の中で排出されたうんちが肥料や資源となり、食物が作れるようになれば、深刻な環境問題を解決する糸口になるかもしれません。

次世代の宇宙トイレのコンセプトモデル。便器に注目!

7番目のエリアでは、トイレをとりまくさまざまな問題がパネルや実物等で紹介されていました。「みんなが幸せになれるトイレって何だろう?」という大きなくくりの中で、年齢や環境、災害を切り口にして日本や世界のトイレとうんちの問題を取り上げることで、子どもたちに「世界には何か問題があるぞ」と認識してもらえるように工夫がされているそうです。

赤ちゃんから高齢者まで、人の一生とトイレの問題をパネルや実物、映像を使って紹介。

トイレの助のストライキから始まった今回の旅でしたが、坂川さんに教えていただき、トイレやうんち、下水道のことを良く理解することできました。「トイレの助、今までごめんね。そして、ありがとう。これからもよろしくお願いします。」

機嫌が直ったトイレの助が、仲間と一緒に気持よく歌ってくれた。

期間中、館内の常設展ではトイレとうんちをテーマにしたパネルや所蔵物が特別に展示され、平日には無料展示解説ツアーも実施されています。ムササビやノウサギのうんちなど普段見ることのできない珍しいものも展示されているのでぜひ参加してはいかがでしょう。

夏の特別展 「トイレ?行っトイレ!~ボクらのうんちと地球のみらい」

会場:新潟県立自然科学館
1階 特別展示室
期間:~8月28日(日)まで ※8月22日(月)休館
時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
特別展入場料:大人700円、小・中学生400円
※別途、入館料:大人570円、小・中学生100円(未就学児無料)

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新潟県立自然科学館
新潟市中央区女池南3-1-1
電話025-283-3331

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