新潟の地域文化を紡ぎ繋げる 新潟文化物語

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file-105 観光列車が走る!(前編)

  

「列車に乗ること」が旅行の目的


 個性的なデザイン、豪華な食事やお酒、楽しい演出――観光列車が各地で誕生しています。そうした列車は単なる移動手段ではなく、乗ること自体がひとつの目的となり、新たな観光資源として注目を集めています。新潟県内でも、レトロなSL列車から近未来を思わせる新幹線まで、多彩な観光列車が走っています。今回は、観光列車の魅力と併せて、誕生までの経緯、込められた期待やこれからの目標についてご紹介します。

新潟鉄道発祥の地の「マイレール運動」

地域が連携。みんなで鉄道を守る。

 まず、新潟県の鉄道の歴史をひもときましょう。新橋・横浜駅間を日本初の蒸気機関車が走ったのが明治5年(1872)。その14年後の明治19年(1886)8月15日、直江津・関山駅間で、県内初の鉄道が開業しました。

 

直江津駅 ポストカード

開業130周年記念で制作した限定のポストカード。初代直江津駅は、現在の上越市東雲町周辺に設置

パネル展

開業130周年を記念して、直江津駅と列車の歴史を伝える写真展を開催/上越市

 「開業130周年を迎える今年、上越市では、鉄道に親しむ様々な催しを行っています。」と、上越市 新幹線・交通政策課の杉田博紀さん。鉄道パネル展や駅舎見学ツアー、鉄道の歴史講演会などが行われ、「親子参加の駅舎見学ツアーは好評で、子どもさんが興味津々だったのが頼もしくて」と、杉田さんは笑顔を見せます。というのも、こうした催しや事業の根底には、「マイレール運動」の意識を市民の中に育てたいという狙いがあるからです。

 

上越市役所 ふたり

「列車の魅力は色んな車両があること」と杉田さん(左)、「更なるマイレール意識の醸成を」と廣川さん

 「マイレール運動」とは、平成12年(2000)の鉄道事業法改正により、不採算路線からの撤退が容認されたことで、日本の各地で起こった路線存続のための運動です。
 上越地域では、北陸新幹線開業に伴って並行在来線が経営分離されるため、どのようにその路線を存続させていくかが課題になり、平成20年(2008)頃から運動が始まりました。その中心的な役割を担う北信越マイレール事業実行委員会の廣川雄一さんに、上越市でのマイレール運動について伺いました。
 「地方都市では鉄道の公共性は高く、特に高田地区には高校が集中しており、鉄道は生活に欠かせない手段。そこで、身近な路線が存在することが当たり前ではない、ということを改めて地域の人に実感してもらうと同時に、より親しみを持ってもらうために活動しています。」

 

鉄道見学会

鉄道に親しんでもらうことが狙い。鉄道施設見学会/北信越マイレール事業実行委員会

スタンプラリー

各駅のスタンプがご当地キャラクターであることもスタンプラリーの人気の理由

 平成21年(2009)には、新潟県上越地域振興局・上越市・妙高市が連携して「信越本線スタンプラリーdeマイレール」を実施。駅や協賛店でスタンプを集めて応募するとプレゼントが当たるラリーは、回を重ねるごとに参加鉄道路線が増え、その結果7回目の平成27年(2015)には応募総数が1600通を越えました。第1回の2.7倍です。
 「この冊子を見て旅行が楽しくなった、訪ねてみようと思ったという声もいただいており、好評です。」と、廣川さんは大きな手応えを感じています。一方で、「あくまでもこれは手法のひとつ。もっと多角的な取り組みや自主的な行動が必要」とも考えています。
 「異なる鉄道会社の路線を乗り継げる切符、観光列車、イベントの入場券と乗車券のセット販売など、鉄道会社各社の努力が次々に形になって登場しています。こうした取り組みと地域の産業、市民が一体となって地域の鉄道を盛り上げていってほしいと思います。」

6名が担った新事業。需要を作り出せ。

トキてつ ふたり

雪月花担当の黒崎さん(左)、年間30本の貸切イベント列車を企画する小野さん

 平成27年(2015)3月、上越市に鉄道会社「えちごトキめき鉄道」が誕生しました。鉄道発祥の地、直江津駅を起点にした2路線、総延長98.3kmをJRから引き継いでのスタートです。
 「人口の減少、マイカー利用などの背景から、既存の『運ぶ』という機能だけでは、将来的に集客の伸びは期待できません。また、北陸新幹線開業により、この地域には『取り残されるのでは』という不安もありましたね。」と、えちごトキめき鉄道・総合企画部の黒崎直史さんが、設立時を振り返ります。
 地域の足として存続し、県外から人を呼び込むという難しい二つの命題は、地域の要請でもありました。そこで、設立準備段階から、同社では黒崎さんら6名が新事業に取り組みます。

 

雪月花 外観

緑や青、雪や紅葉など、自然の景色に映える銀朱色を基調にした「雪月花」(2両編成)

 ターゲットは首都圏の旅慣れた中高年世代。地域の風景や素材を盛り込み、洗練された形で提供する「他のどこにもない、リゾート列車」を造ろう――建築家やアドバイザー、料理家などのクリエーターたちとタッグを組み、設立翌年の春、「えちごトキめきリゾート雪月花」の運行をかなえました。

 

雪月花 内観

「雪月花」の定員は45名。展望ハイデッキやラウンジを備えた、余裕のある空間

雪月花 食事

地元の旬の食材にこだわった食事を提供

 「造るからには、イベントや季節性に関わらず、列車の魅力で集客できることを目指しました。そのためには、『一つとして妥協なし』の姿勢で臨み、老舗料亭のご主人にもいろいろ無理をお願いしました。」
 車内で提供する食事は、上越妙高駅発便は、ミシュラン二つ星レストランのシェフ監修によるフレンチを、糸魚川駅発便は、江戸時代創業の老舗料亭による和食のメニュー。また、車両は国内最大級といわれるワイドな車窓とこだわりのインテリア。

 

新大 鉄道研究部

創部35年の新潟大学鉄道研究部。「観光列車はそれぞれのコンセプトが違っておもしろい!」

 「雪月花は、既存車両ではなく、イチから設計した新造車両だから、あれだけのインパクトのあるデザインができるんですよ。」と、構造について熱く語るのは、新潟大学鉄道研究部の皆さん。「窓は大きく上部にも広がっているので視野が広いし、座席が通常の車両よりも高く作られているハイデッカーだから眺めもいい。他にはないデザインです。車体の赤と風景のコントラストで、遠くからでもぱっと目に入るのがまたいい。」と言います。この観光列車はもともとターゲットではなかった若者の心もしっかりととらえたようです。
 開業して半年、乗客の55%は県外客です。海外からも約50名が乗車しました。国内外ともこの列車に乗り込むために旅行を計画したという声が多く、狙い通りです。
 首都圏のお客様が多くなっているが、「これからは、関西をはじめ全国のお客様にも来ていただけたら。」と黒崎さん。

 

鉄道発祥の地では、平成の今、観光列車が列車の新しい価値を生み出していました。
後編では、アートをキーワードに運行する、ローカルと最新観光列車を追います。

 

■ 取材協力
杉田博紀さん 上越市 企画政策部 新幹線・交通政策課 交通政策係 主事
廣川雄一さん 北信越マイレール事業実行委員会 事務局長
小野仁司さん えちごトキめき鉄道株式会社 総合企画部 企画課 企画担当課長
黒崎直史さん えちごトキめき鉄道株式会社 総合企画部 販売課 営業担当課長
新潟大学鉄道研究部の皆さん

 

後編 → 観光列車が走る!(後編)
『「アートを楽しむ」ために乗る』

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