古町~万代 アートと美味を巡る1日
「美術館が大好き」という水戸悠夏子さんは、新潟市中央区の古町エリアにあるセレクトショップ「TADAYOI(ただよい)」のオーナー。SNSでファッションやライフスタイルを発信しています。休日の一日、町を歩きながら新潟市内のミュージアムを訪れました。
目次
新潟市美術館
新潟市内だけでなく、市外の美術館に行くこともあるアート好きの水戸さん。
「いろんなジャンルの作品を見ることで得るインスピレーションは仕事に生かせますし、静かな空間で頭を空っぽにして、リラックスする時間にもなります。普段忙しいからこそ、お休みの日は時間をかけて興味のあるアートスポットを巡るのも良いですよね」。
新潟市美術館は久しぶりに訪れたとのこと。「外観も雰囲気がありますし、中に入ると落ち着きますね」。主に館所蔵作品を展示する「コレクション展」などをじっくりと鑑賞しました。
その後は、館内の「こかげカフェ」へ。県産小麦と地元食材を使った天然酵母ベーグルが人気で常時14種類をそろえます。「どれもおいしそう」と迷いながらも、夏季限定の枝豆入りと越後みそテイストのベーグルをテイクアウト。
ミュージアムショップ「ルルル」では、展覧会関連商品や雑貨、お土産に人気だというパッケージがおしゃれな新潟の郷土菓子、手のひらサイズの色鉛筆セットなどを見て「素敵なものがたくさんあって勉強になります」と話しました。
デジタルスタンプラリーにも参加!スマートフォンでQRコードを読み取り、スタンプを入手。「簡単!こういう企画があるとミュージアム巡りのモチベーションになりますね。」
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魚や片桐寅吉
ランチは、2020年オープンの「魚や片桐寅吉」で。国の登録有形文化財である築110年以上の堂々たる旧商家のレストランです。水戸さんは一歩中に入り「初めて入りますが、建物も調度品も素晴らしいです!」と驚いていました。
石水庭園を眺められる窓際の席でいただいたのは「刺身定食」。魚介類の仲卸問屋が経営するレストランだけあり、魚の新鮮さはお墨付き。季節の小鉢にもこだわりが感じられます。
食後は「注文を受けてからゆでる」という白玉を使った「雪室白玉ぜんざい」と「雪室珈琲」をセットにした「雪室甘味セット」を。「お魚も白玉もおいしかった!今度は近くに住む祖母と一緒に来ます」。
〇概要
住所/新潟市中央区上大川前通12番町2742
営業時間/11:00~15:00、17:00~21:00(夕食は完全予約制)
定休日/無休
電話番号/025-201-8082
北前船の時代館 新潟市文化財 旧小澤家住宅
黒塀がひときわ目を引く旧小澤家住宅。小澤家は江戸時代後期から米穀商として栄え、明治時代以降には回船経営や運送・創庫業などの事業を成功させた豪商で、歴代当主が政財界の要職で活躍しました。
店先から奥まで伸びた長い通り土間や、およそ150年前に建てられたと推測される主屋の座敷や仏間、増築されたとはいえ一世紀以上の歴史を誇る新座敷、江戸時代後期からある蔵などを丁寧に見て回ります。
小花や幾何学模様を施したクラシックな窓ガラスに「かわいい」とつぶやく水戸さん。新座敷「藤ノ間」の円弧型の地袋(床の間の戸棚)、「百合ノ間」の床の間や廊下に使われた高価な木材、和室にもマッチしたシャンデリアなど、随所に上品な意匠がさりげなく凝らしてあります。
水戸さんは説明に熱心に耳を傾け、注意深く観察。「こんなに貴重な建物を細部まで見学できるなんて、ぜいたくな経験だと思います」。
もう一つの見どころである庭園も歩いて見学。地面に流れ落ちるような枝ぶりの大きな松、県内外から取り寄せたさまざまな石材の使い方などに「センスがすごい。モダンさもありますね」と感心していました。
「ここまで時間をかけて見たことはなかったので新鮮でした。お庭は四季折々で違った風情になるでしょうから、季節ごとに訪れたいです」。
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新潟市歴史博物館(みなとぴあ)
続いては川沿いに出て新潟市歴史博物館(みなとぴあ)へ。敷地内には旧新潟税関庁舎などの開港当時を思わせる建造物があり、かつての堀をイメージした水路の脇には柳が植栽されて、かつての港町の情緒を感じさせます。
「博物館前の芝生の広場でイベントが開催されると来ますが、館内に入るのは子どもの時以来。懐かしいです」という水戸さん。
まずは「郷土の水と人々の歩み」をテーマにした常設展示室で、港町としての隆盛や、豊富な水の恵みを生かした農業などの歴史をたどります。館内にはミュージアムシアターもあり、CGと実写を組み合わせた映像作品も上映しています。
1階の「体験の広場」に展示してある昔の生活道具にも水戸さんは興味しんしん。昭和レトロな家電や昭和30年代の新聞広告、昔の新潟の風景写真などに見入っていました。
「館の周囲を歩き回ったり、信濃川左岸緑地まで出て、対岸の朱鷺メッセやふ頭から佐渡汽船が発着するのを眺めたりして過ごすのもいいですね」。
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田中屋本店 みなと工房
ちょうどおやつの時間になったので「田中屋本店 みなと工房」に足を延ばしました。1日3,000個以上作るという「笹だんご」の素早い笹巻き作業を見学した後、店員さんと談笑。「本町の田中屋さんがお店と近いのでよく利用します。県外のお客さまに商品をお送りする際、笹だんごをプレゼントとして同封することもあるんですよ。とても喜んでくださいます」。
そしてここでしか食べられない国産大豆のきなこ入り「ふわっとソフト」にあずきをトッピングして注文。2階のフリースペースでいただきます!
みなと工房限定のあたたかいタレをかけた「正油団子」と、つぶあんたっぷりの「豆入福餅」が定番の人気商品です。
〇概要
住所/新潟市中央区柳島町 1-2-3
営業時間/9:00~18:00(1~2月は9:00~17:30)
定休日/無休(元日を除く)
電話番号/025-225-8822
新潟市會津八一記念館/にいがた文化の記憶館
次は新潟日報メディアシップ5階にある2つの文化施設へ。
「新潟市會津八一記念館」入口には厳しい顔つきの會津八一の写真パネルが飾ってあります。
新潟市の中央区古町通五番町に生まれた會津八一。「古町通りに歌碑がありますよね。お菓子の大阪屋さんの看板も書かれたと聞いています」と、お店が古町エリアにある水戸さんは會津八一の名前は知っていたものの、その生涯や作品の多くに触れるのは初めて。
書家、歌人、優れた東洋美術史学者として知られる會津八一ですが、もともと左利きだったために少年時代は習字が苦手。お手本通りに書くことができなかったからこそ、独自の書を生み出したと学芸員さんから聞き「私も小学生時代は書道を習っていましたが、草書が苦手で……」と振り返ります。
ちょうどこの時開催されていた夏季企画展で、「多くの人に親しんでほしい」と自らの短歌をひらがなで書いた掛け軸や、弟子にあてた15メートルにも及ぶ筆文字の手紙を鑑賞。「お弟子さんにお説教するだけでなく、励ましていらっしゃる。写真の印象と違い、優しい方だったんですね」。
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會津八一記念館と隣接する「にいがた文化の記憶館」は、新潟の文化や芸術を担った偉人130人以上を紹介する施設。この館の最大の見どころは、美術や文学などテーマ別に文化人を分け、相関図にして紹介している常設展示コーナー。各人の関係やエピソードも紹介されており、分かりやすいことが特徴です。タッチモニターで文化人の情報を検索することもできます。
「多くの分野で文化人を輩出していることも新潟の魅力の一つ。水戸さんは県外のお客さまと接することも多いでしょうから、ぜひ新潟の文化人の多さをアピールしてください」と学芸員さんからのお願い。
水戸さんは「確かにそうですね。展示内容が充実していて、分厚い本を一冊読んだ気持ちになりました。気になった人をもう一度調べるためにまた来ようかな」と話していました。
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新潟日報メディアシップ20階 そらの広場 展望フロア
ミュージアム巡りの1日を振り返ろうと、最後は展望フロアへ。この日はあいにくの雨で視界良好ではなかったものの、悠々と流れる信濃川と萬代橋を眺めることができました。
「ミュージアムごとに個性があり、それぞれ工夫されていて楽しかった!ミュージアムは奥深いですね。今日訪れた施設にもまた足を運ぼうと思います」。