中越・歴史と自然を訪ねる旅
祖父と共にお米と野菜を生産する農業タレントとして活躍する田中さきさん。新潟県建設業協会小千谷支部青年部会特命広報アンバサダー、長岡市川口観光大使のほか、中越市民防災安全士として中越防災安全推進機構のコーディネーターも務めています。「中越は地元ですが、今日は訪ねたことのない場所も行くので楽しみです!」と元気に旅をスタートしました。
十日町市博物館
2020年に新築された十日町市博物館。雪の結晶模様の織物をイメージしたという曲線状の庇(ひさし)と、火焔型土器の文様を表現した外壁が美しい建物です。「すごくきれい。外観だけでテンションが上がります」と田中さん。
エントランスホールでの注目は「十日町空中散歩」のプロジェクションマッピング。白い地形模型に次々と映し出される十日町の風景に田中さんは目を見張ります。
常設展示室1は「縄文時代と火焔型土器のクニ」。国宝展示室では、国宝に指定された縄文時代の火焔型土器を鑑賞。「360度方向から見られるとは思いませんでした。国宝が十日町にあるってすごい。縄文時代の物が現代に残っているのは奇跡ですよね」と感心。
ここでは縄文時代の暮らしについても分かりやすく展示しています。田中さんは模型の縄文土器の組み立てにチャレンジしましたが「なかなか難しい」と苦笑い。縄文時代の衣服を着た自分のアバターが縄文の暮らしを疑似体験する映像展示では「子どもたちが夢中になりそう。大人でも面白いし遊びながら学べます」と見入っていました。
常設展示室2「織物の歴史」では、十日町市の織物文化の歴史を紹介。国指定重要文化財「越後縮の紡績用具及び関連資料」を中心に、古代から現代までの着物が展示され、十日町市と雪、信濃川、産業の関わりと歴史を学べます。
さらに興味深いのは、市内の民家を移設したコーナー。田中さんも屋内に入り、大正時代の農家の冬ごもり生活を体験します。「タイムスリップしたみたい。昔の人の苦労と工夫を感じます。現代の私たちは恵まれているんですね」としみじみ話しました。
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十日町産業文化発信館「いこて/IKOTE」
大きなかまくらのような建物が印象的な「いこて」は十日町市本町の通りに面しています。屋内は木のぬくもりが感じられるくつろぎの空間。
地元食材にこだわったメニューを見て、お米と野菜づくりをしている田中さんは興味しんしん。「私も祖父と5町歩(約5ヘクタール)の田んぼで魚沼産コシヒカリを、野菜は主に長岡野菜の神楽南蛮を生産しています。食べてくださる方の『おいしい』という一言で農作業の苦労も報われますね」。小学6年生の時に中越地震で被災し、避難所暮らしを経験した田中さん。食の大切さを当時から強く意識していたと言います。
田中さんが選んだのは「いこての越後妻有たっぷり御膳」。妻有ポークのローストや地元野菜をふんだんに使った料理にデザートも付き、ボリューム満点です。十日町の食材を使った料理5種とご飯、みそ汁のセット「十日町おそうざい定食」も人気メニュー。おいしくヘルシーな地産地消ランチでエネルギーチャージができました。
〇概要
住所/十日町市本町5-39-6
営業時間/
[LUNCH]11:00-14:00L.O
[CAFE]11:00-17:00
[DINNER]17:00-22:00(21:00L.O 日・水曜日休み)
定休日/月曜日
電話番号/025-755-5595
公式サイト
清津峡渓谷トンネル
次に向かったのは紅葉真っ盛りの清津峡。日本三大渓谷の一つで、国の名勝・天然記念物に指定されています。1996年に清津峡渓谷トンネルを開坑し、2018年、「大地の芸術祭」でアート作品として改修されました。
©マ・ヤンソン/MADアーキテクツ《Tunnel of Light》
田中さんが「なんだかワクワクしますね。これから冒険に出かけるぞ!という気持ち」と語ったトンネルの通路は5色の光で彩られ、途中三つの見晴所はアーティスティックな雰囲気。全ての場所が「絵になる」ため、多くの人がスマホで撮影しています。
20分ほどトンネルを進むと「パノラマステーション」に差し込む外の光が見えてきます。田中さんは「この瞬間が一番好きですね。歩いて良かった!と思います」。壁面は半鏡面のステンレス板に覆われ、沢水を張った床の「水盤鏡」が清津峡の景色を反転して幻想的な眺めが広がります。SNSにより国内外で有名になったフォトスポットで田中さんも撮影。「清津川が流れる音も清々しい。いい写真が撮れてすてきな思い出になりました」
※「ぐるっとミュージアムパスポート」は使用できません。ご注意ください。
©マ・ヤンソン/MADアーキテクツ《Tunnel of Light》
〇概要
受付時間/8:30~16:30(閉坑時間17:00)
※12/1(木)から2/28(火)まで 9:00~15:30(閉坑時間16:00)
定休日/なし(冬季は降雪状況により臨時休坑あり)
入坑料/大人(高校生以上) 1,000円、子供(小・中学生) 400円、未就学児 無料
公式サイト
鈴木牧之記念館
新潟県産のスギ材を多用し、雪国特有の「せがい造り」を取り入れた鈴木牧之(ぼくし)記念館。天井の高い空間に木組みの美しさが際立ちます。
1770年、塩沢村に生まれた文人・鈴木牧之。越後の雪や雪国の暮らし、自然や生き物、行事や伝説などを調べ上げ、40年かけて7冊にまとめた『北越雪譜』は江戸時代の大ベストセラーになりました。
鈴木牧之記念館には『北越雪譜』初版本をはじめ、江戸の一流の文人との交流を示す資料や、牧之が当時の秋山郷の様子を記録した「秋山記行」関連資料、越後の民具や雪に関する資料、ユネスコ無形文化遺産で国の重要無形文化財「越後上布」の製作工程などが展示されています。
「牧之通りには以前お仕事で行ったことがありましたが、実は鈴木牧之さんについて詳しく知らなかったんです。今回、牧之さんのたくさんの功績が分かりました。特に雪の活用については考えさせられましたし、雪をポジティブにとらえることも大切だと気付きました」
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三国街道 塩沢宿 牧之通り
鈴木牧之記念館から数分歩くと牧之通りです。江戸と越後を結ぶ三国街道沿いの宿場町として栄えた塩沢宿。現在の牧之通りは当時の宿場町と雪国特有の雁木の町並みを再現したもので、2010年に完成しました。
「異世界に来たようでワクワクしますね。昔の人はこういう景色を見ながら暮らしていたんだろうなと想像できました」と田中さんは楽しそう。「普段は車ばかりなので、ゆっくり歩けるのはうれしい。友だち同士でも、デートでも、また来たいですね」。牧之通りにつながるハーブ通りのお菓子屋さんでお菓子とお土産も購入。鈴木牧之記念館前の公園でおやつタイムです。
「十日町市から南魚沼市と駆け足でしたが、中越の自然の豊かさを実感しましたし、その土地の文化や歴史が今に語り継がれていることに感動しました。私も自分の住む場所について勉強し、多くの人に伝えていきたい。堅苦しいイメージだった記念館や博物館も、ミュージアムパスポートの利用で気軽に見学でき、面白くて興味深い体験ができました。休日に訪ねたいスポットが増えましたね」と大満足で今回の旅を振り返りました。