山北町に塔下(とうのした)という戸数28件の小さな集落があります。この集落では、毎年12月31日の晩に大きなたいまつを手に山の頂上からかけおりるという行事が行われています。暗闇の中に浮かぶタイマツの炎は、特に雪の降り積もるこの時期に幻想的な風景が浮かび上がります。この行事は、蔵王権現が祀られている山の中腹(ナカノドウ)と頂上(オクノドウ)とで交互(元号の奇数年、偶数年で変わる)に、各家の代表が集まり丸太やシバを燃やし無病息災、五穀豊穣を祈願するもので「サイトサマ」と呼ばれています。「サイトサマ」への点火は神主が山の麓から種火を灯して山に登り、その種火で点火されていました。「サイトサマ」で燃やすシバは春の道普請の際にあらかじめ刈っておきます。また、使用する「タイマツ」は12月31日に茅の木にわらをしばり製作します。「サイトサマ」の火から参集者がそれぞれ「タイマツ」に火をもらい、村まで下りてきます。麓では村の氏子総代が待ち受けており、このタイマツの火を積み重ね燃やします。最近では、各家で使用したしめ縄やお札をこの火で燃やすようになりました。この行事には不幸があった家の人は参加できません。また、そのやり方が細かく決められており、現代では貴重な行事となっています。この塔下集落は「サイトサマ」や山北町唯一の山伏が確認されるなど、信仰的に非常に興味深い集落です。
出典:
『山北町役場提供資料』
提供元:山北町役場企画観光課