
file-118 みんなで作り上げる――演劇の魅力(後編)
市民演劇が進化している!
演じるのは地域に暮らす人々。演劇についての知識も経験もゼロから始めて、見事なステージを完成させる過程で、演者は楽しさと同時に、難しさや厳しさを経験し、新たな自分自身を獲得します。そこには、将来の方向性や目標を見つけ、演劇に関わる仕事に就く若者も。新潟市と魚沼市、見附市でその活動を追いました。
一人一人が輝く舞台
講座から生まれた演劇活動

「なんでここに自分は立っていないんだろう、悔しいと観客に思わせるような舞台を作りたい」/大作綾さん
公演の特徴について、大作さんは、「10代の高校生から50代の社会人まで、年齢や属性が偏っていないのが強み」と言います。「例えば、若い子の経験の浅さはネックであり、魅力にもなります。大人を刺激して、それがまた彼らに帰るというように影響しあっているんです。こういった役者から発せられるものを拾って、1ミリの芽を1センチに伸ばすのが私の役割」と、演者でもある大作さんは、基礎練習から彼らと一緒に行い、一人一人の表情や個性を身近でしっかりと受け止めています。

高校の放送部でも江南区の活動でも一緒。「これからも演劇を続けたい」と、吉川さん(左)と風間さん(右)

「自分の演技で笑っているお客さんを見ると、やりがいを感じます。まだへたっぴいなんですが…」/東城紫乃さん


江南区文化会館での「卵の中の白雪姫」公演を1週間後に控えた稽古風景/江南区演劇公演実行委員会
子どもが活躍するミュージカル

「仕事をしながらの劇団運営は、時間調整が最大の難関。みんなに助けられています」/アナボヌ実砂子さん


ミュージカル「ピーターパン」2017年9月公演/魚沼産☆夢ひかり
平成30年(2018)8月に初公演を予定しているのは、見附市民ミュージカル「夏の夜の夢」です。見附市文化ホールアルカディアの開館25周年を記念して計画されました。準備はすでに始まっています。平成28年(2016)に行った発声・発音などの基礎練習を主としたワークショップには、小学校5年生から70代までの幅広い年代の人が集まり、市民はもとより、市外からも多くの人が参加しました。その後の練習を経て平成30年2月にはプレビュー公演を開催し、4月には本公演のためのオーディションを予定しています。役者とコーラスを50人ずつ募集していますが、応募資格は小学校4年生以上で、芝居や歌に興味があり、稽古に参加できることの3つのみ。経験がなくても、子どもでも、シェークスピアの作品が演じられるのか、指導・演出を担当する栗田芳宏さんに伺いました。

「新潟県の演劇のレベルはここ20年間でアップし、才能のある若手も生まれています」/栗田芳宏さん


ミュージカル「真夏の夜の夢」2018年2月プレビュー公演/見附市文化ホールアルカディア
演じる人と、その才能や可能性を引き出し育てる指導者、その活動をサポートする人々、そして、舞台を楽しむ多くの人たち。演劇は人と人とを結び、新たな夢や目標を生み出してきました。新潟県には、演劇を展開するステージがあり、そして、その演劇に触れるチャンスがあります。演劇の豊かで深い世界、夢のようでいて現実に限りなく近い世界、その不思議な世界を体験してみませんか。新しい何かに出会えるはずです。
■ 取材協力
大作綾さん/演出家
吉川直輝さん、風間健太さん/2017年度江南区演劇に参加 役者
東城紫乃さん/江南区演劇公演実行委員会 制作統括
アナボヌ実砂子さん/「魚沼産☆夢ひかり」会長
栗田芳宏さん/見附市民ミュージカル 演出家
江南区演劇公演実行委員会
魚沼市小出郷文化会館
見附市文化ホールアルカディア