
file-150 カレー愛が盛り上がる! 新潟カレー物語(後編)
広い!新潟のカレーの世界
老舗レストランのカレーライスを出発点に、立ち食いカレー、カレーラーメン、カレー味のから揚げ、カレー豆、カレーせんべい、ご当地グルメ「イタリアン」のカレーがけなど、新潟ではカレー味の食べ物が続々と誕生。時代もジャンルも軽々と超え、広く愛されています。
新潟市と三条市のソウルフード

受け継いだ味を変えずに作ることを大切にしています/坂井実さん

万代そばのカレーは、つゆと混ぜることを想定した濃度・辛さだそうで、ぜひカレーうどんやカレーそばも食べてみてほしい
「もともとそばやうどんに掛けるためのカレーなので、濃度が濃いんですよ」と言うのは、4代目の店長、坂井実さんです。「カレーがあるならご飯にかけてよ、とお客様に言われて、ご飯を炊くようになったと聞いています。今ではオーダーの7割がカレーライスです」。マスコミで取り上げられて人気に火が付き、休日には1300皿が出たことも。「創業時から、スパイスの配合も含め、レシピは変えていません。内容は企業秘密。ぜひ味わって確かめてください」。

丼にたっぷり注がれたカレースープの中からは中華麺が。レンゲではなく、少し深めのスプーンが付いてくる

もともとカレーが大好きだという阿部圭作さん。スパイスを自ら調合するようになったのは、東京で食べ歩きをした経験からだという
「金属加工が盛んな三条市で、町工場の職人たちの胃袋を支えるために生まれたのが、ハイカロリーでエネルギッシュなカレーラーメン。カレー味なら夏バテしていても食べやすく、冬には身体を温めてくれると考えられたのでしょう」。
独自のスープに独自のカレーを合わせるカレーラーメンの味は、店によって千差万別。20種類のスパイスを熟成させたオリジナルのカレー粉で作る阿部さんのカレーラーメンは、最初は甘く、徐々に辛くなり、最後まで食べ飽きない味。「味が変化するように、コクと香り、辛さのバランスをとるのが難しい、じゃじゃ馬みたいなカレーなんです。毎日、気が抜けません」と笑います。今は三条市と協力してカレーラーメンによるまちおこしを、あの手この手で進めています。
新潟ではから揚げもカレー味

HPには上手な食べ方を指南した「半身揚げのトリセツ」が掲載されており、PDFのダウンロードも可能

子どものころから通ってくれている常連さんが昔話をしてくれて、初めて知るエピソードもあるという。お客さんから長く愛されていることがよく分かる/関雅仁さん
「実はよくわからないんですよ。初代である祖父が、子どもから大人までみんなが好きな味はカレーだ、と試しに出してみたところ大好評で、それ以来62年間、から揚げはカレー味一本でやってきました」と関雅仁さん。半身にしたのは、一品でお腹がいっぱいになるし、部位に分けると無駄が出るから。カレー味の半身揚げは、本店近くにあった、独自のディーゼルエンジンを世に出した新潟鉄工所(現・新潟造船所)と周囲の町工場の職人たちに絶大な人気でした。
「味つけは、普通のカレー粉と普通の塩だけ。レシピはありませんが、祖父と一緒に厨房に立っていたことがあるので、その調理方法を忠実に守っています」。年末・お盆・GWなど家族が集まる時期は、テイクアウト用に1日に2000個を揚げることも。今もなお、根強い人気を誇ります。

平成7年(1995)に亀田製菓が販売を開始した「亀田のカレーせん」

弥彦のお土産として人気の高い、成澤商店の「カレー豆」
カレーは可能性を秘めている

「道の駅たがみ」で提供されているスパイスキーマカレー。田上町特産のタケノコを使用し、食感の違いを出すために大きさを変えて刻んでいる


隠し味にイカの肝を使った「佐渡汽船カレー イカのスパイスキーマカレー」。佐渡汽船のカーフェリー内では、佐渡の形をしたご飯とともに味わえる

■ 取材協力
坂井実さん/万代シルバーホテル料飲部 万代そば 店長
阿部圭作さん/大衆食堂「正広」店主
関雅仁さん/「せきとり」専務
井上岳久さん/カレー総合研究所代表、カレー大學・カレー大學院学長
一条もんこさん/スパイス料理研究家、新潟カレー大使
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