file-51 「東洋の花園~新潟の花卉産業~(後編) 日本一の花卉生産地 新潟の魅力

  

日本一の花卉生産地 新潟の魅力

新潟県園芸史研究の第一人者

倉重祐二さん

大学時代から新潟へ足を運んでいたという倉重さん。新潟県園芸史研究の道を切り開いてきた第一人者。

 新潟県立植物園の副園長である倉重祐二氏は神奈川県横浜市の出身。花々はいつどのようにして作られたのか。その生産過程に大きな興味を持っていたという。「新潟はツツジ、シャクナゲのメッカ」であり、園芸に詳しい人であれば、新潟県が鉢物花木の日本一の産地であることは周知の事実である。

 新潟県立植物園に勤務して12年目となる倉重氏。日本一の産地であるにも関わらず、新潟県の園芸史に関する資料は、皆無に等しかった。資料集めはまるで「雲を掴むような話だった」と語る。自らの足で歩き、電話帳片手に片っ端から手がかりとなりそうなお宅へ電話を掛ける。何度も同じ家へ通いつめ、話を聞く。そうして地道に集めた資料は1,000点以上にも上る。新潟県の園芸史を本格的に研究する第一人者である。

日本一の生産地 新潟県の魅力とは

アンジェリカ

「新潟オリジナル」の一つである‘アンジェリカ’。五泉市の樋口昭夫さん作出のシャクナゲ。にごりのない上品な色合いで人気が高い。

 その倉重氏に、園芸産地としての新潟県の魅力を尋ねた。「江戸時代から自然発生した歴史のある生産地で、その存在自体が貴重。他の新しい生産地では、みんなで一斉に同じものを作るが、新潟県内の生産者は一人として同じものを作っているお宅はないほど、多岐に渡っている」。また販売の仕方も、仲買人を通す人、市場に下ろす人、直接消費者に売る人など一様ではない。「その生産・販路の多様性が、幾多の困難を乗り越えてきたのだと思う」。そして「新潟オリジナル」と呼ばれる独自の品種があること。つまり新潟の花卉産業は、歴史があって、多様性に富み、そして独自性がある、という3拍子そろった全国でも貴重な生産地と言えよう。

今後への期待

桜小雪

こちらも「新潟オリジナル」の一つである、チューリップ‘桜小雪’。新潟県農業総合研究所園芸研究センター作出。咲き出しは白で、だんだんと紅ピンク色に縁取られる。

 しかしながら、新潟県が有名な花の生産地であることは、全国はおろか新潟県民でさえも知らない人が多いのではないだろうか。新潟=花のイメージは結びつきにくい。「素材もそろっているし、生産者のこだわりやまじめさなどの努力が、新潟県の園芸産業を作ってきた。ポテンシャルは秘めている。昔は生産と販売が分業だったから、生産者は作ることに専念できたが、今は違う。何が新潟の本物なのかを見極め、生産地全体としての販売戦略を練り、消費者へのアピールをもっとしていくべき時代ではないでしょうか。生産者と消費者をうまく結び付けるしくみができると、もっと良いと思う」と話す。

 「園芸品種は、その時代の美意識や社会的状況を反映したひとつの文化的遺産。生きた文化遺産である。」

 新潟県の園芸の魅力を知り尽くした倉重氏。だからこそ、日本一の生産地にかける期待も人一倍大きいのではないだろうか。
 

file-51 「東洋の花園~新潟の花卉産業~(後編) 「新潟の花」をめぐる現在の動き

  

「新潟の花」をめぐる現在の動き

ボケの聖地~秋葉区小須戸~

日本ボケ展

毎年3月に行われる日本ボケ展の様子。会場はたくさんの人で賑わう。

日本ボケ公園

新潟市小須戸にある日本ボケ公園。広大な敷地に多数のボケが点在する。

 日本一の花卉生産地である新潟で、さかんに生産されてきたボケ。昔から生産がさかんな新潟市秋葉区小須戸では、日本ボケ協会が設立され、毎年3月に協会主催による「日本ボケ展」が開かれている。2012年で34回目の開催となる。

 昔からボケは人気のある花のひとつであり、アマチュア育成もさかん。協会では、毎年数種の新花登録を受理し、これまでに75品種の登録数がある。江戸時代からの品種や、生産動向、技術などの歴史的背景の調査や、博覧会、展示会等のイベント展示、園芸雑誌、新聞等へのボケの紹介などの普及活動も協会が担う大きな役割である。

 また、小須戸にある「花とみどりのシンボルゾーン」内には、日本ボケ公園も存在する。敷地面積約9,100平方メートルを有するこの公園では、現存する150種類以上のボケ6,000本を中心に、季節ごとの花や花木を楽しむことができる。特にボケの見ごろである4月中旬から5月にかけては、多くの市民でにぎわう場所となっている。

摘み取ったチューリップで街を彩る ~にいがた花絵プロジェクト~

チューリップを摘み取る様子

開花後のチューリップを摘み取る様子。色や開花時期などにより、数か所の畑から条件に合う畑が選ばれる。

花絵作製に勤しむ様子

花絵作製に勤しむ様子。摘み取った色とりどりの花が、一枚の絵に生まれ変わる。

巨大花絵

2011年にJR新潟駅南口に展示された巨大花絵。

 新潟の春から初夏にかけての気候は、オランダとよく似ているという。そのためチューリップの球根栽培は、他の産地に先駆けて日本で初めて行われ、新潟市の生産量は現在も日本一を誇る。しかし球根成長のために、きれいに咲いた花は開花後にすぐ摘み取られてしまう。その摘み取った花をなんとか生かすことができないかと始められたのが、「にいがた花絵プロジェクト」。1993年に始まり、2012年で20回目を迎える。

 花絵プロジェクトにはたくさんの人たちが参加する。商店街、学校、町内など様々なグループによって花絵は作られる。摘み取るチューリップ畑は、新潟市、新発田市などで、子どもからお年寄りまで気軽に参加できるのも魅力。
 
 初めの年は2枚の巨大花絵だけだったが、年を経るごとに枚数も増えていき、最近では県内のみならず県外でも飾られるようになった。花絵は毎年4月下旬~5月上旬に飾られる。新潟のチューリップを全国へと印象づける春の恒例イベントである。
 
 日本一の園芸産業を誇る新潟県。春になるとその魅力は、文字通り一気に花開く。うららかな陽気の下、日本一の花を愛でに、足を運んでみてはいかがだろうか。
 
 

 

 


■ 写真・取材協力
▷ 新潟県立植物園 倉重祐二氏
▷ 日本ボケ協会
▷ にいがた花絵プロジェクト

■ 参考サイト・文献
▷ 県立植物園ホームページ「にいがた花物語」
▷ 新潟県における花卉園芸の歴史(新潟県立植物園 倉重祐二)
▷ 新潟検定新潟市観光・文化検定公式テキストブック(新潟市観光・文化検定実行委員会(新潟商工会議所・新潟観光コンベンション協会・新潟日報社))

file-51 「東洋の花園~新潟の花卉産業~(後編) 県立図書館おすすめ関連書籍

  

県立図書館おすすめ関連書籍

「もっと詳しく知りたい!」、「じっくり読みたい!」という方、こちらの関連書籍はいかがでしょうか。以下で紹介しました書籍は、新潟県立図書館で読むことができます。貸し出しも可能です。ぜひ、県立図書館へ足をお運び下さい。

▷『雪国 花ものがたり』

(小川清隆/著 八坂書房出版 2009年発行 請求記号:郷土472/O24 )
 新潟は雪深いだけに、誰もが春の訪れを心待ちにしているのではないでしょうか。ふくらみかけた蕾や、雪の間から顔を出した新芽に、つい見ているこちらも顔がほころびます。様々な植物や豊かな自然と、それをめぐる人々とのエピソードが綴られています。「ふるさとっていいなぁ」と思わずにいられない一冊です。
 

▷『雪割草 栽培と花創りの楽しみ』

(岩渕公一/著 新潟日報出版 2009年発行 請求記号:郷土N627/I92)
 「新潟県の草花」である雪割草。雪割草ってどんな植物なのか、どんな花を咲かせるのか知っていますか?この本では、豊富なカラー写真と丁寧な説明で、栽培と花づくりについて知ることができます。また5章「新潟の雪割草文化」では、新潟における雪割草の文化についてや保全活動への取り組みを紹介しています。

▷『チューリップ・鬱金香-歩みと育てた人たち』

(木村敬助/著 チューリップ文庫出版 2002年発行 請求記号:郷土627/Ki39)
 ご存知のように、新潟県はチューリップの栽培や品種改良がさかんです。また、私たちにとっても春の花としてとても身近な花の一つです。そんなチューリップを新潟で育ててきた人たちと、その歩みについて豊富な資料とデータに基づいて、大変詳しく書かれた一冊です。

▷『チューリップ ヨーロッパを狂わせた花の歴史』

(アンナ・パヴォード/著 白幡節子/訳 大修館書店出版 2001年発行 請求記号:627/P28)
 チューリップは、ヨーロッパで多くの人々に愛され、オランダでは政治や経済までをも狂わせたチューリップ熱とも言うべき、熱狂的なブームを巻き起こします。この本は1999年にイギリスで出版され、ベストセラーとなったそうですが、数百年を経た今もなお、人々を魅了してやまない花であることは確かのようです。

ご不明の点がありましたら、こちらへお問い合わせください。
(025)284-6001(代表)
(025)284-6824(貸出延長・調査相談)
新潟県立図書館 http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/

 

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