file-65 にいがたの美術館・博物館めぐり(前編)

  

美しい景観とともに非日常を味わう!ミュージアムカフェ

雄大な越後三山を眺めつつ、一息。 ~池田記念美術館~

池田記念美術館_コーヒー

まろやかでコクのある味わいが魅力の「ラフカディオ珈琲」。水のほとりで自然の表情を楽しみながら、優雅な時間を過ごせる。

池田記念美術館_抹茶

陶芸家・吉田明氏の刷毛目茶碗で味わう抹茶も格別。他にも、南魚沼市のジェラート工房で作られたアイスなど、地元にゆかりのあるメニューを提供している。

 南魚沼市の「池田記念美術館」は、緑豊かな八色の森公園内にある“公園の中の美術館”。魚野川と水無川が流れる美しい自然の中で、スポーツや文学、アートなど、さまざまな文化に触れることができます。この美術館に一歩足を踏み入れると、エントランスに広がる絶景に圧倒されます。雄大な八海山と駒ケ岳、また目の前の光の池との雄大な景色を存分に楽しめるガラス張りの空間設計が特長です。
 ご紹介する「いけびカフェ」は、まさにこの空間の一部にあり、館内の芸術作品と魚沼の風景をともに満喫することができます。人気のメニューは「ラフカディオ珈琲」(300円)。ラフカディオとは、文豪・小泉八雲(こいずみ・やくも)の出生名「ラフカディオ・ハーン」を冠したもの。小泉八雲の著書『LA CUISINE CREOLE(ラ・キュイジーヌ・クレオール)』(日本語訳:クレオールの料理読本)を参考に、コーヒーの煎れ方や風味を再現しました。「毎日コーヒーを飲んでいた」と言われるほど、コーヒー好きだった小泉八雲。彼の常設展を設ける「池田記念美術館」ならではの奥深い一杯を、この機会に味わってみてはいかがでしょうか。
 

      

童心に返る、木造校舎のランチ。 ~絵本と木の実の美術館~

鉢_全体

小学校給食の懐かしいイメージと、モダンなカフェの新鮮さが心地良い空間。大人たちがくつろぐ間、隣の教室で子どもたちがお絵かきをするという家族連れも多いそう。

鉢_アロス

素材本来の旨みを引き出した、2種類のアロス(スペイン料理の米という意味)。カフェタイムは、ケーキや各種デザート、ドリンク(アルコール)も豊富。

 十日町市の鉢(はち)集落で廃校になった真田小学校を、そのままの姿で活かした「絵本と木の実の美術館」。廃校当時の在校生や先生をモチーフにした物語と、ドングリや木蓮などの木の実、流木などをふんだんにアレンジしたオブジェとの一体感が楽しめます。
 この小学校の職員室と校長室だった場所を調理室としたのが「Hachi Café(ハチカフェ)」。学校の机や椅子をもとに、現代感覚でアレンジしたインテリアにも思わず笑みがこぼれます(購入も可能)。窓から見えるのどかな集落の風景と、木造校舎に残された時計や黒板、児童のらくがき…。子どもの頃の記憶にタイムトリップしたくなる、郷愁との出合いも一興です。メインメニューはスペイン料理で、十日町市の特産である妻有ポークを使った「山のアロス」、旬の野菜を使った「畑のアロス」(各1,000円)がオススメ。手づくりのブイヨンを使って、豊富な具材と一緒に炊き上げるやさしい味わいのご飯。サラダのドレッシングは、地元で作られた味噌を使うというこだわりが徹底しています。アートも、食も、人も、風景も―。空間全体で温もりを感じることができるミュージアムカフェ。小さな子どもから大人まで、「家族みんなで楽しめる」というポイントも見逃せません。
    

自分好みの器を選べる、粋な茶房。 ~雪梁舎(せつりょうしゃ)美術館~

田母木_全体

日本庭園を望む、純和風の茶房。夏は蓮(はす)池が美しく、冬の雪景色も格別とのこと。日曜日限定の抹茶セット(500円)は、9月まで東京藝術大学学長の宮田亮平氏の硝子茶碗で提供。

田母木_ケーキセット

ヨーロッパを中心としたカップ&ソーサーからお好みを選べる、ケーキセット。シュガー&ミルクポットやケーキ皿は、ウェッジウッド。

 新潟市西区の焼鮒(やきふな)公園内にある、純和風建築の美術館。「雪梁舎美術館」の茶房「田母木(たもぎ)」も同じく、太い梁を通した日本家屋の落ち着きに満ちています。この昔ながらの佇まいにガンダーラの石仏など多彩な出土品が並び、和風のインテリアと心地良く共演。美しい日本庭園と相まって、見事な品格を感じさせます。
 ご紹介するメニューはケーキセット(700円)。日替わり3種類のケーキから1種、ドリンク(コーヒー、紅茶、ホットココア、オレンジジュース)もお好みで。また、30~40種類以上ある国内外の陶磁器から自分好みでセレクトできる点も人気の秘密です。マイセンを中心に、ノリタケ、ロイヤルコペンハーゲンなど、多彩なデザインのカップ&ソーサーからティータイムのパートナーを選べるとは、まさに粋な配慮。86畳敷きの常設展、マイセンやシャガールの部屋を観賞した後なら、なおのこと贅沢な時間を過ごせそう。
 ちなみに「田母木(たもぎ)」とは、稲架木(はさぎ)※注(1)のこと。美術館の名前には「雪」の文字が。米どころ&雪国新潟を象徴するネーミングにも、ふるさとを実感するヒントが隠されています。

※注(1)刈り取った稲を乾燥させるために田んぼに沿って植えられている木。

file-65 にいがたの美術館・博物館めぐり(前編)

  

地域の歴史と文化が薫る!ミュージアムショップ

石や鉱物から歴史を学ぼう。~フォッサマグナミュージアム~

ミュージアムショップ

石や鉱物に関する商品から、糸魚川ジオパークの歴史が分かる各種書籍やフォッサマグナミュージアムオリジナル商品まで幅広く取り揃えている。

ひすいアイテム

ショップアイテムのメインとなっているヒスイ商品。1,000円前後のアイテムから数万円の高価なヒスイまで。日常使いにもお土産にもオススメ。

 「フォッサマグナミュージアム」は、糸魚川市の美山公園にある石の博物館。フォッサマグナとは、ラテン語で「大きな溝」を意味する東北日本と西南日本の境目とされる地帯です。この地質学的な溝には、大昔の岩石から今なお活動を続ける火山岩まで、長い歴史がつまっています。「フォッサマグナミュージアム」を中心とする「糸魚川ジオパーク」は、2009年に日本初の「世界ジオパーク」認定を受けたことでも知られ、地質学的に珍しい地形や岩石・鉱物などを見ることができる世界的にとても価値のある地域。貴重な「地質の宝もの」や地域の自然・文化にますます注目が高まっています。
 ミュージアムショップでは、糸魚川で採取されたヒスイを中心に販売。まが玉はもちろん、現代的に加工したアクセサリーやストラップなどの豊富なヒスイ商品を取り扱っています。糸魚川ヒスイ海岸では、天然のヒスイ探しができるので、石に興味のある方はぜひ行ってみましょう。ショップは他にも、恐竜模型やキット商品、ハンマー、ルーペなど、石や鉱物の採集にまつわるアイテムもラインアップ。敷地内の「化石の谷」で体験できる化石採集などと合わせて、知的好奇心・探求心を高めてみてはいかがでしょう。
 

 

郷土の歴史を堪能しよう!~新潟県立歴史博物館~

取扱い書籍

長岡市ゆかりの人物にスポットを当てた書籍。他にも新潟県内の歴史にまつわる多数の古書を取り揃えている。

柏屋

酒造メーカーが運営する「ミュージアムショップ柏屋」。お酒の取り扱いはもちろん、バラエティー豊かなアイテムを提供する。

  

 

 河井継之助(かわい・つぎのすけ)、山本五十六(やまもと・いそろく)、小林虎三郎(こばやし・とらさぶろう)と言えば、長岡市ゆかりの偉人たち。他にも、戦国武将から長岡藩主、文豪まで広げれば、多くの偉人の功績によって歴史が成り立っていることが分かります。
 「新潟県立歴史博物館」の「ミュージアムショップ柏屋(かしわや)」でも、売上の多くを占めているのが歴史に関わる書籍です。河井継之助記念館の館長である稲川明雄氏(長岡市立図書館の館長で郷土史家でもある)著作の本、偉人伝、長岡藩に関する書籍、また新書だけでなく古書も大変多く、新潟県内の文化、風土、考古学にまつわる本まで広く興味関心が集まっているとのことです。
 書籍以外は、地元のお菓子や民芸品、お酒、各種お土産品とバラエティー豊か。「新潟県立歴史博物館」の特別展示に合わせてコーナーを設け、埴輪(はにわ)や金など、催事に応じたアイテム・グッズを販売しています。偉人たちの思想も、出土品も、いわば歴史をひもとく糸口。時には何世紀にもさかのぼり、今の新潟、今の暮らしがあることを改めて実感するのも一興です。

ギフトにも好適!アートなグッズたち。
~越後妻有里山現代美術館[キナーレ]~

キナーレ

永年のものづくりの歴史と斬新なデザインとが融合した、大地の芸術祭オリジナルアイテムの数々。「地域の魅力をクローズアップする」壮大なプロジェクトへの挑戦はこれからも続く。

オリジナルグッズ

(写真右から)豚ジャーキー:480円/大吟醸 松乃井(大吟醸):1,800円/天神囃子(特別純米酒):1,280円/魚沼手繰りそば(布乃利つなぎ):1,580円/キョロロロロ(ふろしき)50cm角(緑):1,890円/80cm角(赤):3,800円

 2003年にオープンしたキナーレは、2012年「越後妻有里山現代美術館[キナーレ]」としてリニューアル。しなのがわバルのカフェ&ショップを併設し、建築や食、生活、文化など地域全体をアートとして提案しています。
 越後妻有と言えば、大地の芸術祭。2012年に5回目を迎えたビッグプロジェクトですが、芸術祭の期間(50日間)以外も通年で「アートのフィルターを通して地域の潜在的な魅力を再発見する」取り組みがなされています。地域の特産品をたくさんのクリエイターと協働で創作した大地の芸術祭オリジナルアイテムの数々。その全商品が並んでいるのがこちらのミュージアムショップです。
 地元企業や生産者とのコラボレーションから生み出された、お酒、妻有ポーク、かりんとう、蕎麦、十日町のきもの技術を発展させた商品などは、2009年から継続して取り組まれている「Roooots(ルーツ)」名産品リデザインプロジェクト※注(2) を契機に登場しました。
 これらの商品は、内容の美味しさ・楽しさ・品質の高さもさることながら、パッケージデザインの新しさ(グッドデザイン賞をはじめ国内外の賞を多数受賞)、流通・販売までのプロセス(仕組みづくり)にも高い評価を得ています。それは、生産者、メーカーはもちろん、全国のクリエイターやアーティスト、大地の芸術祭を支える関係者など、大勢の協働の賜物。実際に越後妻有へ足を運んでみると、きっとアートの力、人の魅力、地域の文化を全身で感じることができると思います。
 
※注(2) 地域の名産品のパッケージデザインを、公募により選ばれたクリエイターたちが一新させるプロジェクト。
 

    

    

<参考ホームページ>

▷ ・「池田記念美術館」

▷ ・「絵本と木の実の美術館」

▷ ・「雪梁舎美術館」

▷ ・「フォッサマグナミュージアム」

▷ ・「新潟県立歴史博物館」

▷ ・「越後妻有里山現代美術館[キナーレ]」

▷ ・越後妻有オンラインショップ

 

file-65 にいがたの美術館・博物館めぐり(前編)

  

県立図書館おすすめ関連書籍

「もっと詳しく知りたい!」、「じっくり読みたい!」という方、こちらの関連書籍はいかがでしょうか。以下で紹介しました書籍は、新潟県立図書館で読むことができます。貸し出しも可能です。ぜひ、県立図書館へ足をお運び下さい。

▷『新潟・隣県美術館博物館巡り:名作・名品に出会う旅。』

(ニュ-ズ・ライン出版/2007年)請求記号:N /706 /N722
 新潟県内や隣県、東京都の美術館・博物館を紹介した1冊です。各館の特徴や収蔵品について簡潔な文章でまとめられているほか、豊富なカラー写真からは館内の様子も知ることができます。
 このほか、特集記事では現存する「豪農の館」など10軒が紹介されているほか、江戸時代の彫刻師石川雲蝶や良寛などが取り上げられています。県内の美術館・博物館めぐりの行程にぜひ加えたくなる見所が満載です。
      

▷『知識ゼロからの博物館入門』

(竹内誠監修/幻冬舎/2010年)請求記号:069 /Ta67
 こちらの本は「一度は行きたい博物館」、「歴史好きにはたまらない博物館」、「体験したらもっと楽しい博物館」など著者の視点で選ばれた、国内の個性的な博物館およそ100館が掲載されています。各館の特徴や展示品が写真入りで紹介されているほか、アクセス方法や休館日など基本的なデータも掲載されているため、ガイドブックとしても利用できるのではないでしょうか。
 このほか巻末には、「博物館を200%楽しむ基礎知識」として展示方法や展示品の輸送手段など、知っていると博物館をより楽しめるような情報も掲載されています。
      

▷『ぶらりあるき香港・マカオの博物館』

(中村浩著/芙蓉書房出版/2012年)請求記号:069 /N37
 こちらの本は、「ぶらりあるき博物館」シリーズのうちの1冊です。本書では香港の大規模な博物館や、マカオの市街地で巡ることができる館などが掲載されています。
 このシリーズではこれまでにバンコク、マレーシア、パリ、ウィーン、ロンドン、ミュンヘン、オランダについて刊行され、すべて当館で所蔵しています。貸出しもできますので、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。
      

      
ご不明の点がありましたら、こちらへお問い合わせください。
(025)284-6001(代表)
(025)284-6824(貸出延長・調査相談)
新潟県立図書館 http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/

 

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