新潟の地域文化を紡ぎ繋げる 新潟文化物語

文化の丁字路~西と東が出会う新潟~

  • 文字サイズ
  • 標準

特集

  1. 新潟文化物語HOME>>
  2. 特集>>
  3. file-91 大地の芸術祭が農村に起こした化学変化

file-91 大地の芸術祭が農村に起こした化学変化

  

ボランティアスタッフ「こへび隊」インタビュー

こへび隊の村山さつきさん。

こへび隊の村山さつきさん。

こへび隊の村山さつきさん。


 大地の芸術祭では、首都圏の学生や若手社会人が中心となり「こへび隊」と称したボランティアとして関わっています。主に週末や祝祭日にやって来る彼らの元気で明るい笑顔が、高齢化が進む過疎地域に刺激と活力を与え続けてきました。

 隊員のひとり、村山さつきさんにお話をうかがいました。
 村山さんは埼玉県在住。2009年に首都圏のフリーペーパーで芸術祭に関する記事を目にし、2012年からこへび隊として関わっています。
 初めて大自然の中にあるアート作品をみた時に、スケールの大きさに胸をぐっと掴まれ、とりこになったそうです。

 こへび隊に参加し、作家や地元の方との協働作業が増えるにつれ、村山さんも作品の材料の調達方法や見せ方のアイディアなどをどんどん求められるようになりました。「こへび隊は年齢に関係なく、自分の意見が主張できるのが心地いい」。
 宿舎に泊まり、規則正しく働き、地元のお母さんの手作りご飯を頂いて、夜は仲間と語り合う生活。「ここにいると、生きている実感があります」。
 初めは、地元の人たちの芸術祭に対する反応は、全てが良好というわけではありませんでした。しかし、「回を重ねるごとに、地域の皆さんがこへび隊や観光客を温かく迎えてくれるようになり、今ではお互いに楽しんでいると感じています。お母さんたちの料理は、地元では当たり前に思っているかもしれないけれど本当に美味しく、都会では味わえません。私たちが引かれているこの土地の魅力を、イベントなどで広めたいしもっと学んでいきたいと思います」。

お母さんたちが演劇仕立てで料理を提供

「上郷クローブ座」レストラン

「上郷クローブ座」レストラン

「上郷クローブ座」レストラン。20人ほどのお母さんたちが交代で出演する。

半戸幸栄さん

半戸幸栄さん。

 2012年3月に閉校した旧上郷(かみごう)中学校(津南町)の校舎が、この夏、演劇拠点として生まれ変わりました。越後妻有「上郷クローブ座」です。劇団が滞在しながら地域と関わり、稽古場として、また作品を発表する劇場として活用されています。

 ここでは、「演劇仕立てのレストラン」が体験できるとのこと。芸術祭総合ディレクターである北川フラム氏と、食をテーマに活動中の現代美術作家EAT&ART TARO 氏が構想を練った企画とか。一体どんなものなのでしょう?
「お母さんたちが踊ったりお芝居をするわけではなく、演劇の空間演出を取り入れた、と言った方がぴったりきます」。大地の芸術祭スタッフの中平郎美さんに解説していただきました。

 教室をつなげたレストランでは、最初と最後に暗幕の中でろうそくがともされ、先人たちから受け継がれてきた雪国の暮らしを語る朗読があります。食事中には地域に伝わる民謡が流れ、土地の魅力をじんわりと味わえるよう導いてくれます。

 「上郷地区はこれまであまり大地の芸術祭に関わってこ なかったんじゃないかしら」と話す、お母さんメンバーの半戸幸栄さん。津南町上郷地区出身です。18歳で都会へ出て、42年間働いた後、この地に戻って来ました。「実は、大地の芸術祭に行ったことがなかったんです。都会で知人から『よかったわよ~!』なんて声をかけられて、困っちゃった」。

  3年前に初めて訪れた芸術祭で、こへび隊と出会ったことから半戸さんの中で何かが目覚めました。「東京の学生さんたちが夏休みに、私たちの町を応援しようってわざわざ来てくれている。一生懸命な姿を見て感動したんです。若い人たちを見習って、私にも出来る事を何かしなければって思いました」。
 半戸さんが住む朴木沢(ほきざわ)は15世帯が暮らす集落。毎年の秋祭りに人が集まらなくなる中で、子どもたちに思い出をつくってあげようと大人たちで神輿を手作りしてきました。なんとか地域を元気づけたいという気持ちをずっと抱えていました。
 旧上郷中学校の利活用について上郷クローブ座の構想が持ち上がったころから、2012年8月に設立された上郷地区振興協議会を中心に、地域で議論が重ねられました。開館に向けた準備期間にも地域の底力を発揮。草むしりなどの会場整備や劇団との交流もとてもスムーズに進みました。

観劇客との交流

観劇客との交流も、お母さんたちの大きな楽しみ。


 「レストランの話も嬉しかったですよ。初めは奥で料理すればいいだけかと思っていたの。でも演劇なんていうから何やらされるんだって、皆ちょっと警戒したんですけどね」。
 給仕をするだけでも不慣れだったお母さんたち。料理を企画したEAT&ART TARO氏が、お母さんたちのために料理の解説を書きこんだ「TAROメモ」を用意しました。
 今では夕顔の漬物のことなどを聞かれると、驚くほどすらすらと自分たちの言葉が出てきます。大きな夕顔を丸ごと見せたり、「クローブ座」の由来になった、豚肉を漬込む際の香辛料、クローブの香りをかいでもらったり。対話のやり方も工夫してきました。
「毎日なにかと忙しいけれど、ここに来ると楽しいですよ」とお母さんたち。無理のないよう、スタッフに材料の調達や交替シフトの調整などの事務を担ってもらいながら、今度はどんなおもてなしをしようかとアイディアを膨らませる日々です。

 大地の芸術祭を通じて、変わりつつある地域の人々。“都市と地域の交換”というテーマは今、越後妻有の各地で確実に花開いているようです。

 

■ 関連サイト
越後妻有 大地の芸術祭の里 http://www.echigo-tsumari.jp/

 

投稿はこちらから

  • イベントを投稿する
  • 地域文化データベースに投稿する
  • 投稿の仕方(PDF)
Copyright© Niigata Prefectural Government. All Rights Reserve