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file-99 おふだにねがいを(後編)

  

誰かの「勇気」や「本気」を後押しする、大切な一枚。


 おふだの持つ不思議な魅力やご利益、そして新潟県立歴史博物館で開催中の企画展「おふだにねがいを―呪符―」について紹介した前編。後編では、より身近なところにあるおふだのエピソードをクローズアップします。

おふだ物語の決定版「さんまいのおふだ」


「さんまいのおふだ」は、全国的に知られているおふだを題材にした昔話です。語られる地域によって微妙に設定が異なりますが、小僧がおふだの力で山姥から逃げおおせる筋書きは同じです。「新潟の昔話 さんまいのおふだ」(福音館書店)は長岡市出身の民俗学者・水沢謙一氏による再話で、1978年に月刊「こどものとも」の1月号として初めて出版されました。1985年にはハードカバー版が発売され、今日まで版を重ね続けています。

便所の神さまがくれたおふだ

 山へ花切りに出かけた寺の小僧は、日が暮れたため道に迷ってしまいます。運良く白髪のおばあさんの住む一軒家に泊めてもらった小僧でしたが、夜中に目を覚ますとどうも様子がおかしい。その時通り雨が降り、雨だれが小僧に「おばあさんは恐ろしい鬼婆だ」と教えてくれます。小僧は「便所へ行きたい」と言って、「手の中にしれ」(「しれ」は、新潟弁で「しろ」の意味)というおばあさんに懇願してどうにか便所に行かせてもらいます。すると便所の神さまが小僧の前に現れて、三枚のおふだを授けます。小僧はおふだを一枚ずつ使って鬼婆から逃れ、なんとか寺に逃げ帰って、戸をたたきながら「あけてくんなせ」(「くんなせ」は、新潟県の方言で「ください」の意味。この他にも「そうせば」や「こんだ」などの方言が登場します。)と何度も和尚様に頼みます。逃げる小僧、追う鬼婆、そしてのんびりと余裕たっぷりの和尚様。三者三様の異なる動きがこの昔話の醍醐味です。擬音語や擬態語を上手に使い、スリル満点。一気に読者を引き込みます。

「さんまいのおふだ」に登場する神さま

さんまいのおふだ

さんまいのおふだ
水沢謙一再話/梶山俊夫画
福音館書店

 ところで水沢版「さんまいのおふだ」には、何人の神さまが登場するのでしょう。便所の神さまと雨だれ、そして小僧が投げたおふだからできた山・川・火と、全部で5人の神さまが考えられます。古来日本では、木や岩などあらゆる森羅万象に神さまが宿っていると信じられてきました。小僧に鬼婆のことを教えてくれた雨だれや山・川・火も八百万(やおよろず)もいると言われるこれらの神さまたちの一人だったのではないでしょうか。冒頭でもご案内しましたが、「さんまいのおふだ」は地域によって微妙に設定が異なります。そのほとんどが、小僧におふだを授けたのは和尚様と伝えていますが、水沢版ではおふだを授けたのは「べんじょのかみさま」とはっきり言っています。そこには、柳田国男氏に感銘を受け、昔話と伝承者を探し求めて県内各地の村々に出かけ新潟の昔話を体系的に調査した、民俗学者・水沢氏ならではの視点が反映されているように思えます。

人気番組がつなぐ、新しい「おふだ」のカタチ

遠藤麻理さん

遠藤麻理さんは新潟市出身のフリーアナウンサー。「私にとっておふだとは、リスナーと一緒に築きあげた信頼の証です」。

 FM PORTの朝の顔として親しまれている「モーニングゲート」。このラジオ番組のステッカーが、リスナーの間で “モーゲーのおふだ”と呼ばれ話題になっています。一体そのルーツはどこにあるのでしょうか。番組ナビゲーターの遠藤麻理さんにお話を伺いました。

 「そもそも番組ステッカーとは、それぞれの番組のイメージや個性を反映させたオリジナルシールのこと。リスナーに配布するものですから、プロのデザイナーに頼んでおしゃれに仕上げてもらうのが普通ですよね」と話す遠藤さん。しかし当時のチーフディレクターが、なんと経費削減のために自身でステッカーをデザインしてしまったそう。「そして出来上がったのが、縦書きに筆文字で『遠藤麻理』と書かれた、異様な雰囲気のステッカー。ほどなくしてそれがリスナーに『おふだみたい』と指摘され、初代“モーゲーのおふだ”が誕生しました」。

効果絶大!?モーゲーのおふだ

モーゲーのおふだ

8つの願いの頭文字(恋・安・働・健・摩・家・金・学)が印象的にデザインされた“モーゲーのおふだ”。使う際の約束は、「うまくいったらおふだのお陰、もしダメだったら自分のせい」だそう。

 意外にも些細なきっかけで生まれたおふだですが、次第に『受験、試験に合格した!』『子を授かった』などの報告が相次ぎ、様々なシーンでその効果を発揮していきます。“モーゲー”スタッフも、おふだのパワーをより強めるため、滝行、火渡り、神輿渡御(みこしとぎょ)など体を張った努力を続けているとのこと。「その甲斐あってか、番組には毎日おふだを求める声が届きます。でも、恋愛に効いたという報告だけは未だにないんですよね」と、不思議そうな遠藤さんですが、願う人々の心の支えとして立派に活躍しているようです。

 一日に30~40枚ものおふだをリスナーへ贈ることも。遠藤さんはその全てに手書きのメッセージを添えています。「このおふだにどれ程の効果があるのかは分かりませんが、不安や迷いを抱え、本気でこのおふだの力を借りたいと願う人には、私も本気で向き合って、少しでも勇気を与えていきたい」と、語調を強める遠藤さん。『誰かのためになりたい』というスタッフ一同の想いと、築き上げてきたリスナーとの信頼関係が、ただの“番組ステッカー”に不思議なパワーを与えているのかもしれません。

 企画展「おふだにねがいを―呪符―」にて行われる関連イベント「おふだトーク」でも、遠藤麻理さんから“モーゲーのおふだ”にまつわるエピソードを聞くことができます。
おふだトーク「モーゲーおふだの未知なるパワー~恋愛だけには効きません~」
日時:2016年5月8日(日)13:30~15:00
会場:新潟県立歴史博物館 講堂
定員:150名(無料)
URL http://nbz.or.jp/?p=12021

■ FM PORT「モーニングゲート」は毎週月曜〜金曜6:50~10:00オンエア

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