ふるさとのおすすめ満載!ぐるっと秋の県央旅
テレビやラジオなど各方面で活躍するお笑い芸人・関田将人さんは、三条市(旧下田村)の出身。豊かな自然の中で18歳まで暮らし、東京で活動したのち2013年から「よしもと新潟県住みます芸人」として新潟市へ。さまざまな仕事で県内各地を飛び回っています。そんな関田さんにふるさと・県央エリアのミュージアムを巡ってもらいました!
燕市産業史料館
最初に訪れたのは、燕市産業史料館。案内してくれたのは主任学芸員の斎藤優介さんです。この史料館は今年開館50周年。地場産業のみを紹介する日本でも珍しいミュージアムなんだそう。
燕の歴史を映像で学んだ関田さんは、度重なる洪水がまちの姿を変えていったこと、江戸時代から弥彦で銅が採掘されていたこと、銅の加工に下田の炭が使われていたことなどを知ります。「僕のおばあちゃん、下田で炭を作っていたんです。燕のものづくりがぐっと身近になりました」と嬉しそう。
館内には、江戸時代から続く鎚起銅器の技や明治時代後期から始まった金属洋食器の数々が展示されています。足を止めたのは、人間国宝・玉川宣夫の作品を集めたギャラリー。漆のような深い光沢を持つ「木目金」など究極の技術に驚いていました。
改めて燕のものづくりの歴史、深みに触れた関田さん、ここからはものづくり体験ということで体験工房館へ。お手軽な「チタン製スプーン酸化発色体験」から、ハイレベルな彫金、鎚起銅器製作までメニューが豊富にそろっています。地場産業を体験できるミュージアムは珍しく、県内外から大勢の人が訪れます。この日はアフリカ人のカップルが体験に取り組んでいました。
関田さんは鎚目(つちめ)入れに挑戦。内側に錫(すず)を塗った銅の器を金鎚で叩き、鎚目を入れるというものです。関田さんは純銅タンブラーを選びました。
匠に導かれ、作業台へ。キラキラ輝くタンブラーを回しながら叩き、鎚目を入れていきます。トントントンとリズミカルに叩くこと約30分。世界に一つだけのオリジナルが生まれました。
「達成感がすごいですね。作業に集中して無になれる貴重な時間でした。早くこれでビールが飲みたい!」と関田さん。東京から来る芸人さんに薦めたいと話していました。
毎年3月に新潟市で開かれる「にいがた酒の陣」前日には、自分で叩いたぐい呑みで飲みたいからとやって来る人もいるとか。楽しい体験を通し、燕のものづくりに触れてみてはいかがでしょう。
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三条市歴史民俗資料館
続いて足を運んだのは、リニューアルしたばかりの三条市歴史民俗産業資料館。国の登録有形文化財に指定されている建物の中に、三条市の歴史がすべて詰まっています。
子どもの頃から「三条って遺跡が多い」と感じていた関田さん。旧石器時代や縄文時代の遺物が整然と並ぶ館内は驚きの連続です。「三条らしさがどんなふうにつくられていったかがわかりますね。有名な吉野屋遺跡などは知っていたけど、保内に遺跡があったのは初めて知りました」と話す関田さん。鍛治職人と三条商人にまつわる展示では、先ほど見学した「燕市産業史料館」との比較もできそうです。
「あ!この人のことは学校で教わりました。下田の偉人です」と弾んだ声をあげたのは、八十里越の道路開削に尽力した西潟為蔵にまつわる展示コーナー。来年は没後100年、2026年には令和の八十里越が開通予定です。福島県南会津町、只見町と三条市が結ばれる日は、もうすぐそこまできています。
館内には六角巻凧や鯛車などが飾られ、三条まつりの行列人形や昔の絵葉書などの展示も。地元企業から借り受けた貴重なものも多数あります。学芸員の早川さん、棲井さんと記念撮影した関田さんは、ふるさとの奥深い歴史や文化に、また魅せられたようです。
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道の駅 漢学の里しただ
いよいよ関田さんの生まれ故郷・旧下田村へと向かいます。下田へと向かう国道289号の両脇には、そばの白い花が満開。到着した道の駅は、かつて関田さんが1日駅長を務めたゆかりの地。顔馴染みのスタッフと挨拶をしていると、駐車場に止めた車から「関田さ〜ん」の声。関田さんがパーソナリティーを務めるFMラジオのリスナーさんでした。
芝生の広がる道の駅は、下田の山々を眺めるロケーションも素敵。「下田は何もかもが美味しいんです。米はコシヒカリに棚田米、さつまいも、ブルーベリー。自慢の食がいっぱいあるんです」と言いながら、農家レストラン「庭月庵悟空」へ入店します。
多彩なメニューから選んだのは「モツ煮込み定食」1,250円。店長さんが「横田精肉店のモツを使っているんですよ」と話すと、関田さんは「ヨコニク!」とすぐ反応。同店は下田産の肉などを扱うフードショップヨコタ」を経営しており、子どもの頃からお馴染みの店。「ヨコニクはチューリップ(唐揚げ)が絶品」だそうです。
モツ煮込みは、美味しい下田の米に合う味付け。歯応えのよい手打ちそばは喉越しがよく、関田さんは大満足。米はもちろん下田産、そばは道中で眺めたトヨムスメを使っており、まさにオール下田ランチ。ご馳走さまでした!
関田さんの案内で野菜直売所「彩遊記」をめぐり、食後のデザートに季節のソフトクリーム(400円)を。香り高くさっぱりした甘さの下田産ブルーベリーの美味しさににっこり。ブルーベリーはこの地区で盛んに栽培されており、来シーズンは新しいスイーツの開発に取り組むんだとか。期待しましょう。
◯概要
住所/三条市庭月451-1
営業時間・定休日/店舗により異なります。公式サイトでご確認ください。
電話番号/0256-47-2230
公式サイト
諸橋轍次記念館
最後に訪れたミュージアムは、煉瓦造りの重厚な諸橋轍次記念館です。文化勲章受章者であり日本を代表する漢学者は、ここ旧下田村の出身。記念館は関田さんにとって、子どもの頃からお馴染みの施設です。
館長の嘉代隆一さんは関田さんの父の同級生、息子さんは関田さんの同級生。「高校生の頃は、諸橋轍次博士奨学金(※)をいただいていました」とのことで、実に深い関わりがあったと言えるでしょう。
※「諸橋轍次博士奨学金」事業は三条市に引き継がれ、向学心に燃える若者たちを応援し続けています。
この記念館では、諸橋博士の遺品・遺墨などを所蔵展示しており、30年余りの歳月をかけて完成させた『大漢和辞典』(全13巻)の全貌を知ることができます。博士の軌跡と古典名言「行不由徑(行くに徑に由らず)」を重ねた柱、年表などドラマチックな展示が迎えてくれました。今年は生誕140周年に当たり、さまざまな記念行事が開催されました。
館内には「諸橋博士の漢字塾」もあります。『大漢和辞典』引き方体験、漢字手のひらクイズ、漢字サークルビジョンは子どもたちも楽しめそう。最後に「古典名言おみくじ」を引くと、あの「行不由徑」が大当たり。関田さんは「座右の銘にします!」と大喜びしていました。
「子どもの頃から親しんでいた施設でしたが、大人になって改めてじっくり見学すると研究への情熱に圧倒されます。まさに郷土の誇りですね」と関田さんは感慨深そうに話しました。
記念館の周囲は広々とした庭園になっており、博士の生家、遠人村舎(茶室)などが点在。ここからは新潟県景勝100選の一つ、名勝・八木ケ鼻を望むことができます。高さ200メートル以上の石英粗面岩の壁が五十嵐川の上流にそそり立つ絶景は、ハヤブサの繁殖地。晩年の博士は夏になると帰省し静養していたそうですが、この景色を眺めていたんですね。
博士は幼少の頃、母の読み聞かせてくれた『西遊記』に憧れ、八木ケ鼻を花果山に見立て、中国への夢を育んでていたそうです。その夢を叶えるかのように、庭園には三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄らの像がありました。
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おわりに
下田地区には他にも、八木ヶ鼻を一望できる日帰り温浴施設「いい湯らてい」、オートキャンプ場や笠堀ダムといった観光スポットが点在。滞在型観光にもおすすめです。
高校を卒業して下田を出るとき、ここには何もないと思っていた関田さん。「でも離れてみると、ここには魅力しかないってことがわかりました。この景色や自然が当たり前すぎたんです」。ミュージアム巡りを通し、三条市と燕市に新しい魅力を再発見し地元愛が深まったと話しました。
新潟に戻って10年、昨年から「三条市ふるさとPR大使見習い」に就任しました。「三条市公式LINE登録者が3万人を突破したら『見習い』が外れるんです。ぜひ、お友達登録をお願いします!」