干し大根漬け
干し大根作り
大根の保存方法として広く行われてきたのが、干して保存する方法です。干すことで体積が小さくなり、保存性が高まり、冬の間もさまざまな料理に活用できることが、その大きな理由です。まずは、新潟市の「切り干し大根漬け」と上越市の「はりはり漬け」で使用される干し大根の違いをみてみましょう。
新潟市中央区の商店で作られる干し大根の様子です。ここでは大根を縦に8等分し、それらを紐で編んでから軒下に2週間ほど吊るします。こうして干した大根は、「切り干し」と呼ばれます。
一方、上越地域の家庭での大根干しの様子です。たくあん漬けにできない小さな大根を無駄にせず干し、それを輪切りにして「はりはり漬け」を作ります。
このように新潟市と上越市では干し方が異なりますが、共通しているのは冷たい季節風で乾燥させることです。冬の海から吹く風が、甘くて美味しい干し大根を作り出します。
このように新潟市と上越市では干し方が異なりますが、共通しているのは冷たい季節風で乾燥させることです。冬の海から吹く風が、甘くて美味しい干し大根を作り出します。
切り干し大根漬け
新潟市ではどのような切り干し大根漬けが親しまれているのかを調査するため、新潟市中央区の人情横丁で切り干し大根漬けを作る、1952(昭和27)年創業の「にいがた石山」の店主である石山イチ子さんに、その作り方を伺いました。
石山さんにこの作り方を教えてくれたお母さまは、若いころに『越乃寒梅』蔵元の石本酒造(新潟市江南区)で女中さんとして働いていました。そこで従業員の方々への振る舞いとして作っていた切り干し大根漬けが原型となっており、石山さんが作る切り干し大根漬けは、一般家庭のものと比べて、やや高級な仕立てとなっています。
材料は、阿賀野市産白首大根、するめ、利尻昆布、数の子、貝柱、しょうゆ、酒、みりん、かつお節。青首大根ではなく、あえて栽培が難しい白首大根を使うのは、甘みが少なく、大根が漬かった後の食感が抜群に良いことから。
石山さんにこの作り方を教えてくれたお母さまは、若いころに『越乃寒梅』蔵元の石本酒造(新潟市江南区)で女中さんとして働いていました。そこで従業員の方々への振る舞いとして作っていた切り干し大根漬けが原型となっており、石山さんが作る切り干し大根漬けは、一般家庭のものと比べて、やや高級な仕立てとなっています。
材料は、阿賀野市産白首大根、するめ、利尻昆布、数の子、貝柱、しょうゆ、酒、みりん、かつお節。青首大根ではなく、あえて栽培が難しい白首大根を使うのは、甘みが少なく、大根が漬かった後の食感が抜群に良いことから。
石山さんの切り干し大根づくりへのこだわりは他にもあります。店先で2週間ほど干した割り大根は、刻んだ後に焼酎に漬けて殺菌します。この一手間で旨味が引き立つとのこと。これと同時進行で、数の子の塩抜きやスルメと昆布をハサミで細切りにする作業も進めていきます。また、漬け汁の色が濁るためニンジンは使わず、崩れにくく歯応えが良いカナダ産の大きな数の子を惜しみなく入れるのがお決まりです。
各食材の下処理を2、3日かけて行い、具材を合わせて漬け込むと、1週間から10日ほどでようやくいい塩梅に漬け汁の美味しさが全ての具材に浸透します。
毎年12月20日ころから販売が始まる「にいがた石山」の自家製切り干し大根漬けは、事前予約も多数入る人気ぶりです。まだ冷蔵庫が各家庭になかった時代、酒としょうゆでしょっぱく味付けされ、長い冬を支えてきた保存食は、今や店ごとのおいしさを楽しむ新潟ゆかりの正月料理として親しまれています。
石山さんは、「この辺りでは甘くしませんね。具材を合わせてからも様子を見ながら2度返して、味を見ながらしょうゆとだしをいつも足しています。なかには『具は大根とスルメだけ』と話すお客さまもいますから、家庭ごとに味も食材も全然違うと思います」と語ります。現在は、50年以上作り続けてきた美味しさを後世に残すため、息子さんと共に切り干し大根漬けの作業に取り組んでいます。
はりはり漬け
上越市民の越冬料理として定着する「はりはり漬け」は、新潟市の「切り干し大根漬け」とどのような違いがあるのかを調査するため、20年以上料理教室を開いている齊京貴子さんと、子どものころから上越市沿岸部で暮らす主婦の星田千恵子さんに、その作り方を伺いました。
<正善寺工房・齊京貴子さんのはりはり漬け>
自然豊かな山間地域にある上越市大字下正善寺には、NPO法人食の工房ネットワークが運営する「正善寺工房」があります。お話を伺った齊京貴子さんは、23年もの間、郷土料理をはじめ地元の特産品を使用した料理教室の講師を務めています。この日は、はりはり漬け教室が開催されました。
齊京さんが作るはりはり漬けには、必ず濃縮五倍酢が入ります。これは齊京さんの嫁ぎ先である桑取のお母さんたちから教わった味で、酢を入れることで長期保存が可能になり、味が締まることから、欠かせない定番レシピとなったそうです。
材料は、大根、しょうゆ、酒、酢、砂糖、ニンジン、松前漬けの素(昆布とスルメ)。長期間保存することを考え、数の子は入れません。
まずは丸干しした大根を、熱湯消毒した厚布で丁寧に拭きます。「大根を洗うと美味しさが落ちてしまう上に、日持ちもしません」と齊京さん。お母さまから教わったやり方で大根の汚れを落とし、殺菌します。スルメを炒める作業は、生臭さを取り、風味をよくしてくれるとテレビ番組で得た情報を、齊京さんなりに追加したとのこと。
さらに、干し大根に味が染み込みやすくするために輪切り前に開いたり、ニンジンは繊維を断ち切らないよう斜めに薄切りにするなど、細やかな工夫も随所に見られます。
材料は、大根、しょうゆ、酒、酢、砂糖、ニンジン、松前漬けの素(昆布とスルメ)。長期間保存することを考え、数の子は入れません。
まずは丸干しした大根を、熱湯消毒した厚布で丁寧に拭きます。「大根を洗うと美味しさが落ちてしまう上に、日持ちもしません」と齊京さん。お母さまから教わったやり方で大根の汚れを落とし、殺菌します。スルメを炒める作業は、生臭さを取り、風味をよくしてくれるとテレビ番組で得た情報を、齊京さんなりに追加したとのこと。
さらに、干し大根に味が染み込みやすくするために輪切り前に開いたり、ニンジンは繊維を断ち切らないよう斜めに薄切りにするなど、細やかな工夫も随所に見られます。
具材がそろったら、しょうゆ、酒、酢、砂糖を鍋で加熱していきます。吹きこぼれないよう注意しながら熱し、たれが糸を引くよう、具材とは別に糸引き用昆布を追加します。沸騰してきたら、大根、ニンジン、スルメ、昆布を加え、混ぜて完成です。2~3日間置くと味が染み込み、より深みが増します。
添加物を使わず素材の美味しさを楽しむことが齊京さんのこだわり。食事はもちろん、酒の肴に、たくあんと一緒にお茶請けとしても親しまれている上越市のはりはり漬け。茶色が濃く、砂糖の甘みが際立つ美味しさは、味をまとめてくれる名脇役である酢が欠かせないことが分かりました。
<星田千恵子さんのはりはり漬け>
若いころは養蚕業に従事していた星田(ほしだ)さん。結婚後、地元の総合病院で介護助手として働いていた時に、同じ年の子どもを育てる看護師の友人からはりはり漬けの作り方を教わりました。
新年に向けてはりはり漬けを作るという日に、星田さんのご自宅を訪ねました。料理に使用するのは、大根、しょうゆ、酒、酢、砂糖、松前漬けの素(昆布とスルメ)。先述の正善寺工房とほぼ同じ材料です。
料理の準備が整うと、星田さんは水を張った鍋を加熱し、丸干しした小さな干し大根を沸騰したお湯で洗い始めました。同時進行で数の子は真水で塩抜きをしておき、しょうゆ、酒、酢、砂糖を計量して合わせ調味料を作ります。
洗った干し大根は基本的に輪切りですが、「今年は大きかったな」と言いながら、大きめのものは半月切りにしていました。大根は煮ることで乾燥前の大きさに戻るため、食べやすさを重視して切り方も工夫されていました。
次に合わせ調味料を加熱し、アクを取りながら沸騰させてたれを作ります。固さのある大根から順にたれに入れていき、味を調えていきます。鍋で合わせた具材を漬物樽に入れ、2~3週間ほど漬けて濃い飴色になったら完成です。
一度にたくさん出来上がるはりはり漬けは、味が染み渡るまで冷蔵庫で保存する人も多い中、星田さんは農機具を収納する納屋の一角で保存していました。電力を使うことなく、自然の涼しさを活用している様子に、先人の知恵を感じました。