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雪国が生んだ多彩な保存技術
越冬貯蔵の知恵
大根を生で保存する方法に、屋外にわらで作る貯蔵庫での長期保存があります。貯蔵庫の形や呼び名は地域によって違いますが、使うときに雪の中から掘り出し、春まで残った大根は切って干して、料理に活用しました。大根とともに貴重な食材だった里芋などのイモ類は、屋内で貯蔵しました。
屋外の貯蔵庫「大根つぐら」
津南町(つなんまち)ではわらで編んだ大根の貯蔵庫を「大根つぐら」と呼びます。中央に竹を入れたふた付きの開閉式のものや、ふたごとわらで縛り、脇から取り出すタイプなどがあります。ネズミ除けのため底に杉の葉を敷いたり、春に役目を終えたつぐらのわらを再び田んぼにまいて肥料にする循環システムなど、大根つぐらにはさまざまな知恵が詰まっています。雪をかぶることで大根が凍らず、傷まず、最適な環境でみずみずしい状態が保たれます。「だいこだて」「大根ぐら」「大根にお」などの呼び名があり、新潟市(旧豊栄市)や上越市(旧三和村)では、わらや杉の葉を敷いた上に大根を大量に積み上げ、それをわらや杉の葉で覆う「大根にお」で長期保存していたという記録もあります。
寒さに弱いイモ類は屋内で貯蔵
雪国にいがたにとって、冬の間も汁物や煮物などに重宝する里芋やサツマイモは低温に弱いため、囲炉裏の周りに大きな穴を掘り、貯蔵していました。穴の底にわらやもみ殻を敷き、その上に里芋などを置いて寒さから守ることで、美味しい状態で保存することができました。里芋は新潟を代表する郷土料理「のっぺ」にも欠かせない食材です。
保存食の製造技術
新潟県では冬季の積雪や寒冷な季節風、そして特有の湿潤な気候を活用した、独自の保存技術が伝承されてきました。「乾燥」「塩漬け」「発酵」。この3つの手法は、雪国にいがたならではの環境と先人たちの知恵によって生まれ、育まれてきました。
乾燥
県内各地で最もなじみ深く大切な食材として活用されてきた大根をはじめ、山菜、きのこ、魚介、海藻類、果物など、食材を長期間美味しい状態に保つために、乾燥の技術が発達しました。軒下に吊るして冷たい風で乾燥させたり、天日干しや屋内の囲炉裏の上でいぶすなど、風土と食材に合わせた干し方があります。干すことで体積が減り、保存場所を確保しやすいという利点もあります。また、旨味成分が増すことも、科学的に証明されています。
塩漬け
食塩や食塩水により食材から水を出すことで保存性を高める「塩漬け」の技術。塩によって熟成が進み旨味が増すというよさもあります。塩づくりの技術は縄文時代にさかのぼり、その歴史とともに塩漬けによって保存性を高める知恵が広がり、伝承されていきました。新潟の家庭では、冬の間も青菜が食べられるよう、塩漬け保存していました。長期間保存するものは塩をきつくするなど、長年の経験によって保存性を高めていました。
発酵
雪によって低温が安定して続き、湿度が高い新潟県の環境は、こうじ菌にとって活動しやすく、こうじを使った発酵食品が各地に伝承されています。みそやしょうゆ、日本酒などの米や豆を発酵させた食品のほか、魚や野菜の保存を目的に発酵させる料理もあります。魚を使った代表的な発酵食品が「なれずし」です。北海道から北前船によりもたらされた身欠きにしんや、地元で揚がる魚介を米こうじで発酵させた「なれずし」は、山間地の郷土料理としても育まれてきました。村上市特産の塩引き鮭を使った「飯ずし(いずし・いいずし)」も「なれずし」の一種です。
塩引き鮭作り
稚魚の放流から4 年後に三面川に遡上する鮭を、塩と寒風で仕上げる村上市伝統の保存食が「塩引き鮭」です。塩引き鮭は、鮭を長期間保存するため、海沿い地域の冬の気候を利用した知恵から生まれた食文化です。
全長約40km、朝日連峰を水源とする三面川には毎年秋から初冬にかけてシロザケが遡上します。江戸時代中期の村上藩士青砥武平治(あおとぶへいじ)が鮭の回帰性を発見し、自然ふ化増殖システムの基礎を築きました。現在、三面川の鮭漁の主流となっているのは、川幅いっぱいに設けた「ウライ」と呼ばれる柵で、遡上を調整しながら捕獲するウライ漁です。冷凍や冷蔵設備がなかった時代から、秋に捕獲した鮭は、塩蔵と乾燥、発酵によって長期保存を可能にする「塩引き鮭」に加工してきました。塩引きの工程では、切腹を嫌った城下町・村上ならではの腹を全部割かない手法がとられ、吊るし方も首吊りを避けて頭を下にします。季節風による低温発酵で鮭は凍らず、腐らず、旨味を凝縮していきます。正月料理の飯ずしとともに、夏の村上大祭では長期間乾燥させた「鮭の酒びたし」が欠かせません。
塩引き鮭作りは、乾燥・塩漬け・発酵を巧みに組み合わせた、新潟県を代表する保存食の一つと言えます。
全長約40km、朝日連峰を水源とする三面川には毎年秋から初冬にかけてシロザケが遡上します。江戸時代中期の村上藩士青砥武平治(あおとぶへいじ)が鮭の回帰性を発見し、自然ふ化増殖システムの基礎を築きました。現在、三面川の鮭漁の主流となっているのは、川幅いっぱいに設けた「ウライ」と呼ばれる柵で、遡上を調整しながら捕獲するウライ漁です。冷凍や冷蔵設備がなかった時代から、秋に捕獲した鮭は、塩蔵と乾燥、発酵によって長期保存を可能にする「塩引き鮭」に加工してきました。塩引きの工程では、切腹を嫌った城下町・村上ならではの腹を全部割かない手法がとられ、吊るし方も首吊りを避けて頭を下にします。季節風による低温発酵で鮭は凍らず、腐らず、旨味を凝縮していきます。正月料理の飯ずしとともに、夏の村上大祭では長期間乾燥させた「鮭の酒びたし」が欠かせません。
塩引き鮭作りは、乾燥・塩漬け・発酵を巧みに組み合わせた、新潟県を代表する保存食の一つと言えます。