県内には多くの美術館や博物館があります。それぞれどんな収蔵品があるのかは、あまり知られていませんが、実は「意外なお宝」があります。
 前編に引き続き、各館の方々に「収蔵品の中でも特別なお宝」について伺いました。

1.新潟県立近代美術館(お話を伺った人:桐原浩さん)

「新潟県立近代美術館」のお宝は?

Q.収蔵品で「これぞ、うちのお宝です」というものをひとつ教えてください。

A.《カリアティードとアトラント》です。これは当館エントランスに展示している三体の彫刻で、近代彫刻の父といわれるロダンの作品です。

オーギュスト・ロダン 《カリアティードとアトラント》

 有名になる前のものなので誰もが知っている作品ではありませんが、元々はベルギーの首都ブリュッセルの大通りに面した建物を飾るために作られました。

 19 世紀後半のブリュッセルでは都市開発が進められ、特にこの3体一組の作品のような男性像柱(アトラント)、女性像柱(カリアティード)が建築装飾のデザインとして流行していました。現在でもその頃の作と思われるアトラントやカリアティードがブリュッセルの街中で見られます。ロダンのこの作品は3階のバルコニーを支えるように設置されていたもので、当時の文献に「ブリュッセルで見られるロダンの最も美しい作品」と記されているほどです。

 注目すべきポイントは、太い両腕と分厚い胸をした逞しい上体の圧倒的な量感と、皮膚の表面に浮き立つ筋肉の微妙な陰翳(いんえい)。大胆さと繊細さを合わせ持つ表現が見事で、ロダンの実力がうかがえます。ぜひ美術館にお越しいただき、三体の彫刻をじっくりとご鑑賞ください。
 そして、《カリアティードとアトラント》のさらに詳しい逸話・物語につきまして、ぜひ美術館ホームページ のコラムもお読みください。
https://kinbi.pref.niigata.lg.jp/topics/column24/

Q.その「お宝」を見る方法は?

A.美術館エントランスに展示してありますので、いつでも見ることができます。また、ロダンの代表作《考える人》も所蔵しているので、展示中であればコレクション展で見ることができます。(こちらは常時展示ではありません。)

○新潟県立近代美術館
長岡市千秋3-278-14 https://kinbi.pref.niigata.lg.jp/

 

2.新潟県立歴史博物館(お話を伺った人:渡部浩二さん)

「新潟県立歴史博物館」のお宝は?

Q.収蔵品で「これぞ、うちのお宝です」というものをひとつ教えてください。

A.《佐渡金銀山絵巻》です。
 江戸時代中期から幕末期まで、100年以上の長期にわたって描き継がれたもので、多様な絵巻が数多く伝えられています。
 佐渡金銀山の主体であった相川金銀山における採鉱、選鉱、製錬、小判製造などの一連の工程が描かれ、江戸時代の鉱山技術や鉱山社会の情報の宝庫です。

 開館以来、全国各地に散在する100点以上の佐渡金銀山絵巻の比較・研究を続け、他の鉱山絵巻や二代歌川広重の浮世絵の手本となったこともわかってきました。絵巻を通して佐渡金銀山の存在の大きさや人々の関心の高さを実感しています。

 当館では佐渡金銀山絵巻を13点所蔵しており、中には25mにも及ぶものもあります。

《佐渡金銀山絵巻》/新潟県立歴史博物館蔵

 

Q.その「お宝」を見る方法は?

A.常設展示室「新潟県のあゆみ」の新潟県の産物のコーナーで見ることができます。
※資料・場面替えあり

《佐渡国金銀山敷岡稼方図》/新潟県立歴史博物館蔵

○新潟県立歴史博物館
長岡市関原町1-2247-2 https://nbz.or.jp/

 

3.駒形十吉記念美術館(お話を伺った人:髙石真理子さん)

「駒形十吉記念美術館」のお宝は?

Q.収蔵品で「これぞ、うちのお宝です」というものをひとつ教えてください。

A.駒形十吉・加山又造・平山郁夫合作 《薄・鳥・山》です。
 烏を加山又造が、薄を平山郁夫が、そして富士山を駒形十吉が描いた合作です。

 昭和55年(1980)、駒形79歳、加山53歳、平山50歳のとき、東京の料亭での酒宴の折、興にまかせて描かれた合作です。

 当時のインタビューで平山郁夫氏は、「時々(駒形が)東京へ来られると呼び出しがありましてね、ご馳走になってましたけれど、一度じゃあいたずら描きをやるかってことで駒形さんも墨すったりして、加山又造さん、じゃあって言うんで、酔っ払ったついでにじゃあまた……と、一晩楽しんだことがありますね。もうおそらく二度とこういうこと、飲んで席画みたいなことは、以後やったことはないですね。」とおっしゃっています。

Q.その「お宝」を見る方法は?

A.未定ですが、企画展示の際にご覧いただけます。

○一般財団法人駒形十吉記念美術館
長岡市今朝白2-1-4
https://www.komagata-museum.com/375-2

 

4.敦井美術館(お話を伺った人:土田敏也さん)

「敦井美術館」のお宝は?

敦井美術館の土田敏也さん

 

Q.収蔵品で「これぞ、うちのお宝です」というものをひとつ教えてください。

A.国の重要文化財に指定された、板谷波山(いたやはざん)作の《彩磁禽果文花瓶(さいじきんかもんかびん)》です。
 この花瓶は、板谷波山が顧問・審査員を務めた、大正15年(1926)の東京府美術館開館記念「聖徳太子奉賛美術展」に出品した作品で、アール・ヌーボー様式の、大作の集大成として焼成したものです。

 薄肉(うすにく)彫りで表現された文様は、木彫の浅浮(あさうき)彫り手法を陶磁の技法に取り入れ、波山が独自に創出したもので、地文の柘榴(ざくろ)風の花文などがきわめて精緻(せいち)に表わされ、互いに見つめ合う雌雄(おすめす)の鳳凰(ほうおう)の図様も確かな構図により見事に表現しています。
 本作品の制作には、1年余りの歳月を費やしました。波山は本作品制作以降、大作から手を引くことになり、その点からもこの花瓶は板谷波山の記念碑的な作品の一つで、また、波山の陶芸を代表する作品の一つでもあります。

 昭和34年(1959)11月、東京日本橋・三越本店において開催された「波山米寿記念展」の開幕にあたり、板谷波山は自ら作品説明を行いましたが、その際《彩磁禽果文花瓶》の前では「この花瓶は1年余りの年月をかけ苦心の末にでき上った花瓶で私の代表作であります。将来は国宝に指定されるでしょうから、どうぞ大切に保存していただきたい。」とおっしゃいました。《彩磁禽果文花瓶》は、平成18年(2006)6月9日に国の重要文化財に指定されました。

 なお、波山作品の重要文化財指定は、平成14年(2002)に泉屋博古館(せんおくはくこかん)分館(東京都港区)所蔵の《葆光彩磁珍果文花瓶(ほこうさいじちんかもんかびん)》(大正6年(1917)作)に続き、この花瓶が2作品目です。

Q.その「お宝」を見る方法は?

A.当館では所蔵品のみによる企画展を年4回開催しています。

 当館では《彩磁禽果文花瓶》を含めて板谷波山の作品を59点所蔵しており、過去においては5年周期で「彩磁禽果文花瓶」を展示し、「板谷波山展」を開催しております。直近では令和5年(2023)に開催しましたので、次の開催と展示は、4年後の令和10年
(2028)になると思われます。

○敦井美術館
新潟市中央区東大通1丁目2-23 北陸ビル
https://www.tsurui.co.jp/museum/

5.新潟大学旭町学術資料展示館(お話を伺った人:丹治嘉彦さん)

「新潟大学旭町学術資料展示館」のお宝は?

新潟大学旭町学術資料展示館長の丹治嘉彦さん

Q.収蔵品で「これぞ、うちのお宝です」というものをひとつ教えてください。

A.《トキ剥製標本》です。
新潟大学には4体のトキ剥製標本が保管されており、当館所蔵はそのうちの1体です。

 昭和36年(1961)に新潟県五泉市で射殺された状態で発見され、当時の新聞記事には「“トキ”五泉でナゾの死」の見出しで取り上げられました。既に国内の生息数が佐渡と能登半島であわせて10羽ほどが確認されているだけになっていたことから、どこからきたのか、知られていない生息地があるのかなど憶測を呼びました。また撃った人は狩猟法・文化財保護法違反に問われるとのことで、この剥製は証拠物件として裁判所で保管され、その後事件性が無いと判断され、新潟大学に移管されました。平成13年(2001)の当館開館当時から常設展示され、館のシンボル的な存在でもあります。

Q.その「お宝」を見る方法は?

A.常設展示なので、いつでも見ることができます。

○新潟大学旭町学術資料展示館
新潟市中央区旭町通2番町746
https://www.lib.niigata-u.ac.jp/tenjikan/

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