昔から冬の子供の行事である鳥追い、その楽しみの一つとしてかまくらがある。かまくらはどうねんぼと言って積み上げた雪に穴を掘ることだが、昭和20年代後半には危険であるという事で屋根を付ける縦穴の雪穴が指導されたが、現在は伝統を重んじてかまくらが大人の手で作られるようになった。餓鬼大将時代の作りは全て子供達がつくるものであり、大人は手を貸さず、完成した雪穴に子供達を尋ねておやつ等をくれるのが習わしであった。作り方としては気の合う仲間4~5人で行うことが主流で、当時は一週間前位から始めるのが普通で、楽しみの一つだった。学校から家まで急いでも30分程かかる道程を急いで帰り作業に付くのである。カンジキを履き最初は作る位置の踏み固め・次は雪を集めて踏み固めながら積んで行く作業が2日程、予定の高さまで出来上がると次は穴を掘るのである。外観の形作りが出来ると木の枝を一定の長さに何本も作って差し込み、中の穴と壁の厚さを調整する知恵は先輩からの伝承として引継がれていた。今のようなスノーダンプ等はなくて、全て木製のコスキと、貴重な鉄製のシャベルで崩した雪を取り除くのであり、大変な労働ではあったが、楽しめるという目的があり、苦にはならなく楽しかった記憶のほうが残っている。完成間近はいつも14日の入る2時間程前となる。穴が完成すると次は座る場所作り、藁を敷き、ござをひいて出来上がり。真ん中には炭を起こした火鉢が一つと素朴な子供達の砦ではあったが、皆満足してその中で夜を明かすのである。火鉢で焼く餅と餅で作るセンベイ焼き、大人の差し入れのミカン・お菓子等であるが、時間を持て余したという記憶は無い。最大の義務?の鳥追いを夜10時頃と思うが、全員が穴から出て大声で鳥追い歌を歌いながら部落の中を回るのである。終わって戻れば自由時間、木綿針に糸をつけて目的の物に投げ差し、そうっと吊上げ、途中で落ちると交代しなければならない。ミカン釣り、センベイ釣り、そんな素朴な遊びでも真剣に取り組み、順番を待ちきれなかった幼い思い出が今でも懐かしく思われるものである。
出典:『田舎はいつまでも田舎であってほしいから(村山達三著)』
提供元:特定非営利活動法人ほくほく村