
file-112 子どもも大人も大好き、新潟の絵本(前編)
子どもにとっての宝物
「むかーしむかし」で始まる昔話、王子様の冒険、見たこともない動物が躍動する物語など、絵本は、子どもが最初に出会う本。家族や先生に読んでもらって、本の世界への第一歩を踏み出します。ここでは、子どもと絵本の関わりに注目し、新潟県内の読み聞かせの取組や、幼児教育の中から生まれた絵本を紹介します。
出会いに満ちた絵本の世界
図書館で「ワクワク」に出会う

金曜日午前10時30分からは、絵本の読み聞かせと、絵本の内容にちなんだ工作のイベントを開催。金曜日午後3時30分からは、絵本(0・1・2歳向け)の読み聞かせとわらべうた、手遊び等を楽しむイベントを開催/新潟県立図書館
児童部門を担当する有本教子さんに、人気のある絵本の特徴を伺いました。新作が次々と出版される中、実は、時代を超えて支持される作品があるといいます。「ピーターラビット」や「やぎのがらがらどん」「ぐりとぐら」など、今の子どもたちの親世代、祖父母世代が親しんだ作品が今も支持を集めているのだそうです。

「パパやママが読んでいると、子どもも本に興味を示します。ぜひ一緒においでください」有本さん(右)/新潟県立図書館
有本さんのおすすめは、主人公と一緒に成功体験を味わえるような絵本。「本の中で主人公と一緒にいろいろな行動をして、びっくりしたりワクワクしたりと、思いっきり楽しんでほしいと思います」

「家族で同じ本を読んで、感想を共有する『家読(うちどく)』プロジェクトに取り組んでいます」川崎さん(右)/新潟市立中央図書館
また、同図書館は新潟市内の各地域で、絵本や紙芝居、わらべうたが楽しめる「おはなしのじかん」を開催。その他、「赤ちゃんタイム」という、赤ちゃんや小さい子どもが気軽に参加できる日時も設定するなど、幼い時に絵本に親しむきっかけ作りに取り組んでいます。
「読み聞かせは、子どもと読み手が同じ世界を共有できる、貴重な時間。子どもが字を読めるようになっても、やめることはありませんよ。一人で読むのとは違う経験や楽しみがあるから」と、川崎さん。
そして、取り上げる絵本については、「あまり難しく考えず、子どもが手を伸ばすものを読んであげたらいいと思います。図書館では、年齢や発達に合わせたブックリストも用意していますが、活字が苦手な子どももいるので、まずはその子のタイミングで。読み手も一緒に楽しんでください」
子どもとの関わりの中から

題名に使われている「めごや」は「可愛い、愛しい」という意味の三川地方の方言。「祖母の口癖だったんですよ」/横山さん
めごや めごやの おばあちゃん/横山一枝/喜怒哀楽書房
※画像は喜怒哀楽書房ホームページより
保育士として働きながら、絵や絵本づくりを習った横山さんは、三川村(現・阿賀町)で育った子ども時代の思い出などを題材に絵本を描いています。手作り絵本では、平成16年(2004)の「ズミとロンとポポ さんしょううおをたすけに」を皮切りに、コンクールに次々と入選。その後は、絵本出版や、福島県飯舘村で震災後の村の奮闘をまとめた絵本づくりの監修など、活躍の場を広げています。作品も25作になりました。「私の創作の原動力は、新潟の田舎の風景や、子どもたちとの出会いです。これからも子どもたちが、笑顔を輝かせてくれるような絵本を創っていきたいと思います」

すべてのページに明るい笑顔が描かれた、ハッピーな物語。原さんの第4作目「じまんのおばあちゃん」
じまんのおばあちゃん/原 婦美子/考古堂出版
※画像は考古堂出版ホームページより

出版記念パーティーで新作を朗読する原さん。この日のワンピースも、絵本で使用したテキスタイルも原さんが織ったもの
最新作の出版記念パーティーでは、原さんによる朗読が行われました。温かな声とおおらかで明るいストーリーに、集まった人たちは笑顔で聞き入っていました。
後編では、イラストレーターやグラフィックデザイナー出身の絵本作家の活躍をたどります。
■ 取材協力
有本教子さん/新潟県立図書館
川崎恵さん/新潟市立中央図書館
横山一枝さん/絵本作家
原婦美子さん/絵本作家