file-43 音楽があふれる夏 ~新潟で楽しむ夏の音楽イベント~
佐渡からの発信「アース・セレブレーション」の成り立ち

  

佐渡からの発信「アース・セレブレーション」の成り立ち

「COMMUNITY(共同体)」の重要性

鼓童演奏風景

太鼓芸能集団である鼓童。「たたく」という表現方法を中心にアース・セレブレーションのホスト役をダイナミックに演じる。

 1988年に第1回目が開催されたアース・セレブレーション。鼓童の本拠地・鼓童村のある佐渡の小木半島でこの「祝祭」は産声をあげた。祝祭のホスト役である鼓童は、1年の1/3を海外、1/3を国内、1/3を佐渡で過ごす。世界を又にかけて活躍する太鼓中心の音楽芸能集団である。

 拠点となる佐渡から出かけていくだけでなく、島外や国外で出会ったアーティスト達を佐渡に招き、佐渡の人たちにもより多くの人々や文化に触れてもらいたい、という想いと、鼓童村を“ムラ”の語源でもある「人の“群れ”る場所」にしていきたい、という願いから、アース・セレブレーションは開催されることとなった。

 人との交流やつながりが希薄であることが懸念される昨今、アース・セレブレーションをきっかけとして、多くの交流(COMMUNICATION)と新たな繋がり(UNITY)が生み出されている。アース・セレブレーション自体が、一つの共同体(COMMUNITY)の役割を果たしているともいえよう。

クルド族の4人家族、ラアナーイー・ファミリー

今年の海外ゲストであるイラン・クルド族の4人家族、ラアナーイー・ファミリー。クルドのタンブール音楽やペルシア古典音楽を奏で、多くの人に感動を与えている。

男性舞踊家ユニット「弧の会

男性舞踊家たちによるユニット「弧の会」。今年のゲスト出演により鼓童との初共演が実現する。

自然豊かな野外空間での祝祭

 アース・セレブレーションのメインイベントである城山コンサートは、鼓童を中心として、毎年国内外からさまざまなアーティストを迎え、城山公園という自然豊かな野外空間で行われている。しかし「祭典」という意味の「フェスティバル」ではなく、「祝福」という意味の「セレブレーション」という言葉が用いられているのは「地球や自然の恵みに感謝し、祝福する」という気持ちが込められているからだ。

 E=ENVIRONMENT(環境)とH=HUMAN(人間)をART(人の技)が結ぶという「EARTH(地球)」に込められたメッセージを道しるべとして、自然の恵みによって生み出された芸能や文化に触れ合い、自然と音楽の調和を楽しむことのできるアース・セレブレーション。雄大な自然が残り、独特の文化や芸能の息づく佐渡島だからこそ、多くの人を魅了し、アース・セレブレーション全体を「地球の祝祭」にふさわしい空間に仕立てている。

アース・セレブレーションのメインイベント

3日間に渡って開催される「城山コンサート」。
佐渡の豊かな大自然を満喫できる、アース・セレブレーションのメインイベント。

file-43 音楽があふれる夏 ~「アース・セレブレーション」に込められたメッセージ

  

「アース・セレブレーション」に込められたメッセージ

「祝祭空間」という名の“非日常”へ

 太鼓芸能集団である「鼓童」が核となり、企画・運営しているアース・セレブレーション。離島である佐渡を拠点にしていることから、訪れる人も日常から切り離された「祝祭空間」という名の“非日常”を存分に味わうことができる。それは、佐渡出身で10年以上前からボランティアスタッフとして活動している本間良恵さんにとっても同様である。「イベントでしか会えない知人に会ったり、会場の雰囲気を感じたりするのが楽しい」。通常の佐渡では感じることのできない“非日常”を感じることが、イベントの醍醐味の一つでもある。

 佐渡には、その高揚感をしっかりと受け止めるだけの自然、文化といった風土が備わっている。会場となる城山公園の、恵まれた自然の中でのコンサートは、演奏する鼓童にとっても数少ない野外イベントの機会であり、それがまた観客を魅了しているポイントになっている。

アース・セレブレーション、コンサートの様子

豊かな自然の中でのコンサート。ダイナミックな演奏はより迫力を増す。

ハーバーマーケット

小木みなと公園に100以上のお店が集まるハーバーマーケット。資源のリサイクル活動にも熱心に取り組んでいる。

春日鬼太鼓

毎年好評の「春日鬼太鼓」ワークショップの様子。参加者で小木の町を練り歩く。

菅野敦司さん

 人々を惹きつけるのは、コンサートだけではない。無料で楽しめるフリンジや、小木みなと公園で催されるハーバーマーケット、小木半島の街歩きが楽しめる小木町散策、周遊バスツアーなどイベントが目白押し。訪れた一人ひとりが、自分流にアース・セレブレーションを創り上げていくことができる。またワークショップでは、太鼓や、踊り、ものづくりといった参加型のプログラムを用意している。訪れる人も受け身の観賞者ではなく、参加者であり、そしてフェスティバルをともに作り上げていく“作り手”になることができる。
 
 当日は、県外や国外からも多くの人が訪れる。島内の人にとっても島外の人にとっても、佐渡島を拠点にした交流は、楽しみの一つとなっている。アース・セレブレーション総合プロデューサーである菅野敦司さんは、「地元のおじいちゃん、おばあちゃんが、片言の外国語や身振り手振りで、外国人と触れ合っている場面を見た時や、島外から来た人が佐渡を好きになって、違う季節でも訪れてくれるようになったり、佐渡に住むようになったりするのを見ると、(アース・セレブレーションを)やっていてよかったと思う」と語っている。
 
 アース・セレブレーションという一つのコミュニティに集まり、「祝祭空間」でそれぞれの時間や想いを共有する。「お祭りは“非日常”だが、それを“日常”に持ち帰ってほしい。」と語る菅野さん。今後は、佐渡の魅力をより伝えられるようなワークショップや、これからの日本や地球のことを、共に考えていける企画をしたいと語る。“非日常”で得た価値観や人との交流を日常にもつなげていってほしい― アース・セレブレーションに込められたメッセージを胸に、今年の「祝祭空間」も夏本番を迎える。
 


●参考URL:今年の夏も是非佐渡へ ~地球の祝祭 ~アース・セレブレーション2011
●写真・取材協力:財団法人 鼓童文化財団・株式会社 北前船

file-43 音楽があふれる夏 県立図書館おすすめ関連書籍

  

県立図書館おすすめ関連書籍

「もっと詳しく知りたい!」、「じっくり読みたい!」という方、こちらの関連書籍はいかがでしょうか。以下で紹介しました書籍は、新潟県立図書館で読むことができます。貸し出しも可能です。ぜひ、県立図書館へ足をお運び下さい。

▷『サイトウ・キネンのこころ 音楽祭の「ステージと舞台裏」10年』

(サイトウ・キネン・フェスティバル松本実行委員会/編 信濃毎日新聞社 2001年発行 請求記号:書庫760/Sa25)
 毎年、夏に長野県松本市で開催される「サイトウ・キネン・フェスティバル」は新潟とも関係がとても深いフェスティバルです。20回目の今年は、バレエ・オペラをりゅーとぴあ舞踊部門芸術監督金森穣氏が演出・振り付けし、Noismが出演します。亡き師・齋藤秀雄氏に捧げるため、小澤征爾氏を総監督に1992年から始まり、10年目の記念の年に発行されたのがこの本です。出演者たちの音楽への思いがあふれている記録集です。
 

▷『野外フェスのつくり方』

(MASSAGE編集部/編 フィルムアート社 2010年発行 請求記号:くらし764/O42)
 夏の音楽イベントといえば、夏フェスではないでしょうか。自然に囲まれ、日差しを浴びながら、あるいは木々のざわめきを聞きながら、音と熱気にあふれる野外フェスティバルはどのようにして日本で行われるようになったのか。また、場所さがしや運営など、舞台の裏事情や様々な人々との関わりなど、夏の音楽を少し違った視点で楽しめる1冊です。

▷『絶対行きたい 世界の音楽祭』

(田中良幸/著 ヤマヤミュージックメディア 2010年発行 請求記号:くらし760/Ta84)
 オペラやオーケストラなど、いわゆるクラッシック音楽の音楽祭にはいったいどんなものがあるのでしょうか。ヨーロッパ最大の野外オペラフェスティバルであるイタリアの「ヴェローナ・オペラ・フェスティバル」をはじめ、世界中で開催されている音楽祭が紹介されているのがこの本です。海外旅行を予定されている方、ぜひ各地の音楽祭ツアーを計画してみてはいかがでしょうか。

▷『レディー・ガガ』

(ブランドン・ハースト/著 長沢あかね/訳 中村有以/訳 マーブルトロン 請求記号:くらし767/L12)
 日本にも来日し、世界に旋風を巻き起こしているレディー・ガガですが、どんな人物なのかよく知らないという人が多いのではないでしょうか。奇抜な衣装とパフォーマンスで酷評されることもある彼女ですが、この本では各誌へ掲載されたインタビューを中心に、アーティストとしての駆け上がっていく彼女の歴史を知ることができます。


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