平成29年(2017)10月7日(土)、鉄道のまち・新津を味わい尽くすイベント「にいつまるごと 鉄道フェスタ」が新潟市秋葉区の新津地区で開催されました。このイベントは、JR東日本 新潟支社などが主催する「レールフェスタ in にいつ」、地元実行委員会が主催する「にいつ鉄道まつり」と、新潟市新津鉄道資料館(以下、新津鉄道資料館)の「向谷実(むかいやみのる)の1日館長」を同時に開催する形で平成28年(2016)にスタート。2年目の今年も多くの来場者でにぎわいました。
「レールフェスタ in にいつ」は、JR東日本 新潟支社、(株)総合車両製作所、第一建設工業(株)の3社での共同開催。会場の総合車両製作所新津事業所では工場を公開し、電車の製造工程を見学。運転体験もできるNゲージ鉄道模型やプラレールの展示をはじめ、ミニ電車、軌道自転車といった子どもたちに人気の乗り物もあり、これら全てが無料で楽しめます。食堂の開放や駅弁の販売もあるので、秋の一日を家族で過ごすにはもってこいのイベントです。
「さあ、目当ての場所へ出発!」。東京ドーム3個分もの広さがある総合車両製作所。まずは場内に設置された大きなボードを確認して、お目当ての場所を目指します。普段は見ることができない製作所内が見られ、多くの鉄道ファンが駆けつけていました。
まずは車両の製造工程の見学から。曲げ加工や溶接などの各種作業ロボットや加工機が実際に稼働しているのを見ることができます。同じ工程でも、作業内容によって人間とロボットで分担しているそうです。一つのロボットが、上下左右ミリ単位で動いたり、ロボット同士が連携して作業をしたりしているのには驚きました。
こちらは、「Nゲージ鉄道模型の運転体験」会場。実物の150分の1ほどの大きさの鉄道を、子どもたちがコントローラーを操作して走らせます。車内の明かりもリアルに再現され、その精巧さには感心するばかりです。
他にも高所作業車の試乗体験やJR東日本 E235系車両の見学など、まだまだ楽しみたいところですが、11時からは「にいつ鉄道まつり」の会場の一つ「JR新津運輸区」で「転車台回転の実演」が始まるとのこと。気持ちをにいつ鉄道まつりに切り替えて、いざ、転車台回転のある会場へ!
JR新津運輸区にある転車台は車両を進行方向に向ける設備で、蒸気機関車など車両の片側にしか運転台がない鉄道車両を載せ、回転させて使います。今回は、来春にJR新津駅発着になる「SLばんえつ物語」号を使って行われました。現役のSLイベントに参加できるなんてうれしい限りです。来てよかった。
「ガタッ」「ガタッ」と大きな音をさせながら転車台が回転する姿は迫力満点。
時に汽笛を鳴らしながら、黒い煙をもくもくと上げて転車台に載ったSLが目の前を通り過ぎます。思い描いたSLの光景が広がって場内の興奮は最高潮に。
転車台の回転実演を見た後は、運転室の見学もできます。貴重な体験に期待感が高まるばかり。1組ずつ入室していくので、並んで待つ間は車両をじっくり見学することができます。石炭を燃やし続けているため、車両の周りはけっこうな暖かさ。
待つこと約30分、ようやくあこがれの運転室へ。同乗のスタッフがこちらの質問に丁寧に答えてくれ、じっくり見学することができました。
圧巻なのは、石炭を燃焼させて高温の燃焼ガスを作る火室(かしつ)。蒸気の力で走る、蒸気機関車の心臓部です。石炭をくべるのは機関助士の仕事で、アクセルやブレーキなどの操作をする機関士と同様、列車の運転に欠かせません。
SL見学も終わり、ランチの時間です。ここは、新津名物の駅弁を食べたいところ。再びシャトルバスに乗ってJR新津駅(西口)へ向かいます。改札口に向かう途中の新津駅東西自由通路で佐渡市出身の金工作家・宮田亮平氏の作品をしばし観賞。新津駅には4点が展示されています。
こちらは新津名物の駅弁を販売する「立売(たちうり)」さん。JR新津駅ではSLばんえつ物語号の運行日など、特定の日にホームに立ちます。昔ながらの衣装と口上で懐かしい風景を今に伝えています。
新津には「神尾商事」と「三新軒」という2つの駅弁の老舗があり、「レールフェスタ in にいつ」のほか、「にいつ鉄道まつり」の会場の一つ「新津駅東西自由通路」でも自慢の駅弁を販売していました。
早速購入し、いただきま~す。「みそ粕豚丼」は、新潟地酒の酒粕と越後みそに漬け込まれた新潟県産厚切り豚ロースと付け合せのみそ漬が程よく味付けされて美味。「雪だるま弁当」は、新潟県産コシヒカリのごはんの上に鶏照焼など12種類ものおかずが載り、食べていくうちに次のおかずが楽しみになるお弁当でした。お腹もいっぱいになったので、次は「にいつ鉄道まつり」のメイン会場へ行ってきま~す。
「にいつ鉄道まつり」は鉄道のまち・新津を盛り上げる住民参加型のイベント。今回は、天候の関係でメイン会場をJR新津駅から歩いて約1分の新津地域交流センターに移して開催されました。1階のステージでは、新津鉄道資料館で一日館長も務める元カシオペアのキーボーディスト・向谷実さんのライブや地元のダンススタジオやバトン教室などによるパフォーマンスが行われ、大盛況。会場席から多くの声援が寄せられていました。
3階は「新潟エンドレスクラブ」や「新潟モジュールレイアウトクラブ」による仲よし鉄道模型クラブ合同運転会会場。リニアライナーの展示走行やモジュールレイアウトによるNゲージ鉄道模型が展示され、実際に運転して楽しめます。ジオラマ、本当に良くできていました。
次の会場に向けて同センター東側の出入口を出ると、「御菓子司 羽入」の看板が目の前に。せっかくなので立ち寄ってみましょう。
看板商品の「越後新津名物三色だんご」は、列車の中でも食べやすく持ち運びしやすいように駅弁同様「折り」に入れたのが始まりだそうです。
新津の商店街では、新津鉄道資料館などと連携し「鉄道のまち」を盛り上げるさまざまな取り組みを行っているそうです。資料館の入館券を提示すると割引やサービスが受けられる「切符のいいまち」もその一つ。まちなかでは、サービスを利用してショッピングを楽しむ観光客の姿も見受けられました。
最後は、にいつまるごと鉄道フェスタの3番目の会場「新津鉄道資料館」へ出発!
新津鉄道資料館は、新潟県内でも珍しい産業博物館です。昭和58年(1983)に開館した後、平成10年(1998)には現在地へ移転。平成26年(2014)にリニューアルしました。リニューアルオープン後は、実物車両を展示に加え、現在は6車両が屋外展示され、月替りで車内の公開を行っています。
今回のにいつまるごと鉄道フェスタには、熱狂的な鉄道ファンとして知られ、世界初の実写版鉄道シミュレーションゲームを開発した向谷実氏が1日館長として参加。新津鉄道資料館では「鉄道模型パノラマShow」「鉄道お宝トーク」「ミニSLミニ乗車」などのミニイベントを開催し、多くの鉄道ファンを喜ばせていました。
「鉄道のまち新津」「鉄道の技術と新潟・新津」「新潟・新津の人々と鉄道」「コレクション展示」の4ゾーンで構成された常設展示には、新潟・新津をクローズアップし、ラッセル車(除雪車)を取り上げるなど地域色を出し、鉄道マニアはもちろん一般の来館者からも高い評価を得ているそうです。実際、リニューアルを機に、入館者が5倍近くに増加したとか。
「鉄道の技術と新潟・新津」ゾーンにある「電車運転シミュレータ」は人気のコーナー。画面はもちろん踏切警報機など運転時のリアルな音も楽しめるとあって、これを目当てに子どもから大人まで全国から多くの人々が来館するそうです。これほど精巧なシミュレータに出会うチャンスはなかなかないので、来館の際にはぜひチャレンジすることをおすすめします。
新津鉄道資料館の魅力の一つに、地元商店街と一緒に企画・商品化したさまざまなミュージアムグッズがあります。同館で展示されている車両のイラストが描かれたクリアファイルや、鉄道のまち・新津のPRキャラクター「きてきち」の焼き菓子などオリジナル商品を多数販売。鉄道のまちを盛り上げたいという地元商店主さんたちの熱意が伝わってくるものばかりです。
JR新津駅を中心に半径2kmの中で繰り広げられた鉄道の祭典「にいつまるごと鉄道フェスタ」。SLの発着駅になる来年は、さらなる盛り上がりを見せてくれるはず。ここでしか体験できない楽しさにきっと出会えますよ。
関連リンク
新潟市新津鉄道資料館
新潟市秋葉区新津東町2丁目5番6号(新津地域学園内)
電話:0250-24-5700
にいつ鉄道商店街
※にいつ鉄道商店街は、新津商店街協同組合連合会や新潟市などが連携して進める「鉄道を活かしたまちづくり」の総称です。