松之山郵便局前より西にそびえる杉木立ちの奥にある大棟山美術博物館は、700年に近い歴史を持つ村山家31代の当主、村山政光氏が旧邸と庭園を博物館にしたものである。豪農の館として博物館の見所は、29世・30世が収集した書画陶芸品等の芸術品、二百余年の風雪に耐えた邸宅と広大な庭園、現当主の叔父に当たる文学者坂口安吾の遺品等であるが、特筆したいのは、昭和天皇がご着用した、陸軍大元帥の軍服と、菊の御紋入りの燭台である。この山間僻地の小さな町に夢とロマンを与えてくれた郷土出身者の偉業を称える遺品の数々は、他に類のない展示物として誇れる品物であることを記しておきたい。
出典:『田舎はいつまでも田舎であってほしいから(村山達三著)』
提供元:特定非営利活動法人ほくほく村