
file-108 進化を続ける、新潟のラーメン文化(後編)
新潟5大ラーメンと新たな可能性
スープや麺や味では大きく異なる新潟5大ラーメンですが、共通点がひとつだけあります。それは、マイナスをプラスにするアイデアです。寒さや出前、立地という課題を克服するアイデアをメニュー考案のフックにして、味に活かし、進化してきた新潟のラーメン。後編では、新潟市と長岡市で、地域にしっかりと根付いた雪国ならではのラーメンを紹介します。そして、これまで登場してこなかった上越地区に注目し、5大ラーメンの次の「6」の可能性についても探っていきます。
雪国ならではの発想力
堀と雪と温泉。観光資源から生まれたラーメン

昭和32年(1957)に屋台からスタートした老舗店/三吉屋

丼の底が見える透き通ったスープの上品な味わいが人気/三吉屋

しょうゆだれと豚骨の濃厚スープが特徴/青島食堂

大量のショウガを加えることですっきりした味わいに/青島食堂

割りスープを加えて好みの味に変える食べ方を考案/こまどり

3種類の味噌を合わせ熟生させた味噌だれが決め手/こまどり
「今でこそ割りスープは、つけ麺でおなじみですが、40年前にしていたというのはすごい。味を変えながら楽しむ“Wテイスト”というスタイルがありますが、もしかしたら日本初かもしれません」と片山さん。
まだまだ奥深い、新潟のご当地ラーメン
新潟ラーメンの最新動向について、「月刊新潟WEEK!」編集部によると、平成28年(2016)に誕生したラーメン店は約50店。九州・博多系の濃厚豚骨ラーメンの専門店が多いのが特徴です。その理由として片山さんは、「県内の勢いのある人気店がセカンドブランドとして出店していることが大きな要因としてあげられます。新しい味で勝負しようというチャレンジ精神ですね」と、言います。
この濃厚豚骨ラーメンが、新潟ラーメンの6番目になる可能性について、片山さんは次のように考えています。
この濃厚豚骨ラーメンが、新潟ラーメンの6番目になる可能性について、片山さんは次のように考えています。

豚骨しょうゆとの相性を追求した自家製中太麺も特徴/オーモリラーメン
元祖と言われているのが「オーモリラーメン」です。屋台でスタートし、その後、昭和26年(1951)に製麺を始め、自分の店だけでなく、他店へも、またスーパーマーケットなど小売店でも販売し、地元に浸透していったのです。
「以前『カレーラーメン』を見つけ出したような手応えを感じています。元祖店だけでなく、家庭でも作られ、広く深く地域に定着しているんですよ。これまで上越地区にだけご当地ラーメンがないのはおかしいと思っていました。その観点からも注目しています」
片山さんには、もう一つ広めたいと思っていることがあります。県民の力で、新潟ラーメンの名を全国にとどろかせることです。
「これだけおいしいラーメン店があるんです、他県から人が来たら、自分がおいしいと思うラーメン店に連れて行きましょう。今やラーメンは観光でも有力なコンテンツ。海の幸もいいですが、新潟のラーメン職人渾身の味を実感してもらえば、きっと感動してくれますよ」
地域に根づいて発展してきた新潟5大ラーメン。誕生の背景と歴史に思いを馳せながら、店主の思いが込められた味を楽しんでみませんか。味わいがぐっと深まることでしょう。
■ 取材協力
片山貴宏さん/株式会社ニューズ・ライン「月刊新潟WEEK!」編集長
三吉屋/新潟市
青島食堂/長岡市
こまどり/新潟市
オーモリラーメン/妙高市