
file-143 阿賀野川スイーツライン探訪記【阿賀町・五泉市・阿賀野市編】(後編)
地元愛から生まれるスイーツ
水原、安田、笹神、京ヶ瀬地区からなる阿賀野市は、地域ごとに深い歴史と多彩な特産物を作ってきました。そこには、生まれ育ったまちの魅力を発信しようと奮闘する生産者や菓子職人たちの姿がありました。
水原名物、瓢湖の白鳥と三角だるま

『白鳥の卵』は、渡計の看板商品。黄身餡をやさしく包み込み、すり蜜をかけたシンプルな焼き菓子。

四代目の計一さん作の琥珀糖『彩花~さやか~』。日本酒、地ビール、黒イチジクなど地域の特産品を使った7種類がそろう。

『民芸菓子 三角だるま』。包みを開けると、中には同じ形・デザインの最中が。食べると、しその味がほのかに広がる。

糖度が高く、溢れる蜜が特徴の黒イチジク(ビオレソリエス)。程よい酸味と上品で濃厚な味わいがスイーツにピッタリ。
安田の伝統をスイーツで発信!

『生キャラメル大福』は一つ一つが全て手作り。通信販売でも購入できる。

本物の瓦に大きさも色もそっくりの瓦ラスク。「赤いラスクは、修復された鶴ヶ城で使用された安田瓦をイメージしました」/齋藤さん
地域のアイデアマンにして、ヒットメーカーと呼ばれる齋藤康治さんは、「お菓子の龍宝堂」の2代目。『生キャラメル大福』は、生乳100%の『やすだ愛情牛乳』と生クリームを贅沢に使った生キャラメルを、米粉と古代米で作った薄い餅で包んだ人気商品。口の中に入れると生キャラメルと餅がトロリと溶け合い、至福のおいしさが広がります。「笹川流れの塩を加えた『塩生キャラメル大福』、地元産の卵を使った『ちーずぷりん大福』と合わせ、大福3兄弟として販売しています」と齋藤さん。
齋藤さんは最近、焼き瓦の北限の産地といわれる地元の安田瓦を発信しようと、本物の瓦のような大きさの『やすだ瓦ラスク』を作りました。1枚ずつ手作りで、割れないように注意を払いながら、瓦らしいカーブを付けて作ります。「昔は瓦を荒縄で縛って出荷したそうで、『やすだ瓦ラスク』も同じように荒縄で結ぶことでアクセントをつけています」。齋藤さんのお菓子には「安田を離れた人にも故郷を思い出して食べてほしい」という温かい思いが込められていました。

一番のおすすめは、やっぱりミルク。地域の農産物とのコラボで、ここにしかないおいしさが楽しめる。

「出産シーズンには、50頭以上が生まれる牛舎。出荷量は年間約450トン。毎朝タンクローリーで出荷しています」/神田さん

やすだ愛情牛乳は、阿賀野市内の菓子店も素材に採用。平成12年(2000)オープンの「しょこら亭」は、新潟の地酒や和の素材を使ったチョコレートを得意とするチョコレート専門店/『麒麟山利き酒ショコラ(ダブル仕込)』
「卵と同じく価格の優等生といわれる牛乳ですが、どうにかその価値を伝えられないかと考えたときに、体験型施設で現場を見てもらうのが一番だと思い、みるぱすを始めました」と三代目の神田豊広さん。なめらかな口溶けと濃厚ながら後味がさっぱりしたジェラートは、まるで牛乳を飲んでいるよう。生乳100%のミルクをはじめ、チョコレート、紫イモ、玄米茶など常時数種類のフレーバーが用意されています。「牛乳が、命ある生きものから生まれていることを子どもたちにもぜひ知ってほしい」と神田さん。子牛もいる牛舎は見学可能で、地域の小学生たちも食育の一環として訪れます。
神田さんに今後の計画を伺いました。「農家さんと一緒に季節のフルーツやベジタブルを活かしたジェラートを作り、それを農家さんのブランドとして発信していきたい。地元企業さんとのコラボレーションも積極的に取り組むつもりです」。その言葉から、生まれ育ったまちの魅力を誇りに思い、次世代につなげていこうとする神田さんの心意気が伝わってきました。
■ 取材協力
渡邊洋一さん/御菓子処 渡計 店主
島原宏資さん/御菓子司 最上屋 代表取締役
齋藤康治さん/お菓子の龍宝堂 店主
神田豊広 さん/ 神田酪農 代表
安田興和農事
しょこら亭