file-45 新潟の美味しい秋の味覚(後編) ~福島潟を舞台に~自然と人間の共存の場で

福島潟を舞台に~自然と人間の共存の場で

 
福島潟の日の出

福島潟の日の出の様子。新潟市内にあるこれだけの大自然は貴重。

かたごはん目印のぼり

かたごはんの目印であるのぼり。

かたごはんメニュー例

地元で採れた季節の食材を使ったごはん。メニューは毎月変わる。

福島潟・朝の散策の様子

朝の散策の様子。晴れている日は特に気持ちがいい。

 220種類以上もの野鳥が訪れ、希少種をはじめとした450種類もの植物が生息する福島潟。「潟」と名のつく湖では、県内最大の面積を誇っている。訪れる季節によって、時間によって、さまざまな表情を見せ、自然と人間の営みを今に伝える大自然を有している。以前NPO法人ねっとわーく福島潟の理事を務めていた本間莉恵さんは、そんな福島潟の魅力をもっと多くの人に、身近に知ってもらいたいという想いから、「かたごはんの会」をはじめた。国の天然記念物の渡り鳥であるオオヒシクイの調査や、自然観察会などが行われていたが、どれも専門的で馴染みにくい。自然そのものも確かに価値はあるけれど、新潟市街からアクセスのよい場所に大自然があるということを体感し、人が自然と暮らしてきた昔ながらの生活感を肌で感じてもらいたい、という想いが強かったという。

 郷土食の会があったり、葦で和紙を作る人たちがいたり、バードカービング教室が開催されたり、さまざまな団体が福島潟を訪れている。かたごはんの会は、福島潟をその人にあったそれぞれの方法で使ってほしい、という理念を持っている。福島潟に出会い、福島潟を舞台に、訪れた人が何かを展開していけるような入口にしてほしい、という想いが込められている。

 福島潟の自然を満喫する朝の散策と、地元で採れた米や野菜を使った手作りごはんを食べるというシンプルなプログラム。より多くの人に、福島潟の魅力を知ってもらいたいと、気軽に参加してもらえるイベントを考えた結果である。ごはんを作るスタッフに特にメニューにこだわりがあるわけではないが、作りたいものを作った結果、地元の食材と季節のものを自然と使ったごはんになっているという。

 だが、ごはんを食べるということだけを目的としているわけではない。あくまでも福島潟を訪れるきっかけとして、朝の散策とごはんを食べるというプログラムを提供している。だからこそ、大人も子どもも気軽に参加でき、リピーターをも魅了し続ける会となっていると言える。

file-45 新潟の美味しい秋の味覚(後編) ~それぞれの楽しみ方で~
スタッフと参加者と地域の取組~

「それぞれの楽しみ方で~スタッフと参加者と地域の取組~

佐藤徳次郎さん

ヒシの実について説明する佐藤徳次郎さん。

松井さん

設立当初から運営スタッフとして関わっている松井さん。

散歩の後の食事の様子

散歩の後は、同じ食卓を囲んでの食事。参加者同士の情報交換の場でもある。

潟の遊び方

大きな葉を持ってはしゃぐ。子どもには子どもの楽しみ方がある。

 運営スタッフの本間さんが、特に伝えたいのは、福島潟には自然と人が共に生活してきた経緯があり、その昔ながらの生活感が今も残されているということ。自然もさることながら、福島潟の自然と共に生活してきた人々の、ひとつひとつの想いが素晴らしいのだと語る。

 「歩く福島潟」との異名を持つ佐藤徳次郎さんは、毎回かたごはんの会に参加し、水辺に自生している植物を手に取り、解説をしたり、さまざまな遊びなどを通して、福島潟の自然の魅力を参加者に伝えている。福島潟と共に生き、共に歩んできた人々の生活や営みの一端を、四季の移り変わりと共に感じ取ることができる。

 会の設立当初から、本間さんと一緒に運営しているスタッフの松井さんも、自身が学校の先生であった経験などを生かし、参加している子どもたちに読み聞かせなどを行っている。また、設立当初は高齢の参加者が主だったが、数年前から自然育児のネットワークを持つスタッフが参加してから、子どもを連れた若い夫婦の参加者が増えた。スタッフや参加者が、思い思いのやり方で取り組む。それこそが、かたごはんの会の魅力である。

 参加者の楽しみ方も人それぞれ。新潟市や地元の豊栄、新発田などからの参加者が多く、野鳥を見に来る人、散歩をのんびり楽しむ人、季節の植物や昆虫を探す人、毎月変わるメニューを楽しみに来る人など、さまざまである。楽しみ方は人それぞれだが、時間と場所を共有し、テーブルを囲んで同じメニューをいただく。これが会の醍醐味。リピーターも多く、顔なじみも多い。子ども連れの家族が多く、近況報告や情報交換の場ともなっている。

 3~4年通っている参加者もいる。「最近は、自分より子どもが特にはまっている。自分が教えられないことでも、地域や自然が子どもに教えてくれることがある。毎回通うたびに季節の移り変わりを感じ、毎年通っていると同じ季節でも前の年との違いを実感できる」と、継続して参加するからこその楽しみ方を話してくれた。

 「あんまり肩肘張らずに、力を入れずに継続していくことで、参加者に伝わることがある。何回も来るからこそ、一人一人にじんわりとその経験が沁みていくことがある」とスタッフの本間さん自身も感じている。主催者側としても、参加者にその人なりの福島潟での楽しみ方を発見してもらうことを期待している。気軽に参加できるかたごはんの会に、自分なりの「楽しみ」を見つけに、足を延ばしてみるのはいかがだろうか。


●参考URL:http://katagohan2.blog113.fc2.com/
●写真・取材協力:かたごはんの会

file-45 新潟の美味しい秋の味覚(後編)

  

県立図書館おすすめ関連書籍

「もっと詳しく知りたい!」、「じっくり読みたい!」という方、こちらの関連書籍はいかがでしょうか。以下で紹介しました書籍は、新潟県立図書館で読むことができます。貸し出しも可能です。ぜひ、県立図書館へ足をお運び下さい。

▷『南蛮エビ柳カレイレシピ集』』

(南蛮エビブランド化推進協議会 2010年発行 請求記号:郷土N596/N48)
 新潟といえば海の幸。中でも庶民派食材として、スーパーの魚売り場でのよく見かける「南蛮エビ」「柳カレイ」は秋から冬が旬の魚です。それらをPRしようとレシピを募集し、料理コンクールを行って入賞した作品をレシピ集として発行したのがこの本です。全ページカラー写真で食欲をそそります。ぜひご家庭で作ってみてはいかがでしょう。

▷『うまいもんレシピ~旬の地場野菜で作ろう』

(新潟市北区農業支援センタ- 2007年発行 請求記号:郷土596/To92)
 新潟市北区の豊栄地区農村地域生活アドバイザー「日女の会」が作成したレシピ集です。秋野菜としては「かきのもと」や「梨」を使った料理などが紹介されています。新潟には菊の花を食べる習慣があり、ピンク色も鮮やかな食用菊「かきのもと」は、中越地方では「おもいのほか」山形地方では「もってのほか」などと呼ばれているようです。

▷『ゴパンの本』

(荻山和也/著 晋遊舎 2011年発行 請求記号:家庭596.6/O25)
 そろそろ、おいしい新米が食卓にのぼる頃ではないでしょうか。新米がすぐ食べられるなんて、米どころ新潟ならではですよね。最近発売され大人気の「GOPAN」というホームベーカリーは、家庭に常備されている白米をそのまま使ってパンを焼くことができ、米粉を購入する必要がないという点が画期的な商品のようです。その「GOPAN」を使って作るパンのレシピ本です。「のり」や「しょうゆ」のゴパンのレシピも紹介されています。

▷『モチモチおいしい米パン GOPAN』

(上田まり子/著 成美堂出版 2011年発行 請求記号:家庭596.6/U32)
 続いても「GOPAN」を使って作るパンのレシピ本です。白米だけではなく、玄米や赤米、黒米などを使ったレシピも紹介されています。図書館でも、家庭でパンを気軽に焼けるホームベーカリーのレシピ本は大変人気です。焼きたてのパンの香ばしい匂いは、家族を幸せな気持ちにさせてくれます。ぜひ米パンで「地産地消」「お米の消費拡大」に貢献しつつ、新米の味を堪能してみてはいかがでしょうか。

ご不明の点がありましたら、こちらへお問い合わせください。
(025)284-6001(代表)
(025)284-6824(貸出延長・調査相談)
新潟県立図書館 http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/

 

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