file-57 文化ホールに行こう!:前編~震災復興と文化

震災復興と文化

新潟県民会館の記念塔フェニックス

新潟県民会館の記念塔フェニックスは、新潟地震からの復興と躍進する新潟を表現した銅製のモニュメント。金箔を施されている。

 新潟を代表するホール、新潟県民会館。ここの正面入り口のポールの上には、フェニックスが輝いている。フェニックスと言えば不死鳥。火の中をくぐり抜け、何度でも再生を果たすという言い伝えに「復興」の思いを合わせる人は多い。実は新潟県民会館は復興のシンボルでもある。昭和39年(1964年)6月16日に起きたマグニチュード7.5の大地震(新潟地震)。新潟市や佐渡市、村上市などで震度5を記録し、津波や火災、液状化などで多くの人命や建造物が失われた。この災害を受け、全国から多数の義援金が寄せられた。そこで県は震災記念館として県民の大集会場の建設を計画。総工費約8億円のうち3億円を義援金(地災給付金)から拠出し、新潟県民会館は昭和42年(1967年)に落成した。11月21日からのオープニング公演では市民による合唱や演劇の公演、綾子舞などの県内各地の郷土芸能、NHK交響楽団による演奏会などが催され、復興へ向けて文化を通じ、人々の気持ちを一つにした。

 後の阪神淡路大震災や中越大震災、東日本大震災に際して、県民会館では復興支援のための「フェニックス コンサート」を実施している。かつての支援に対する感謝の想い。被災地の方々が次の一歩を踏み出す一助になれば。地域と時代の枠を超え、ホールが人々の心を結び付ける。
   

鑑賞や表現の場としてのホールの機能

 もちろん、文化ホールの本来の役割は地域住民を結び、地域文化を向上させることにある。そのための「機能的」側面も劇場ごとに工夫がされている。例えば1,730席の規模を持つ新潟県民会館の大ホールは伝統的なシューボックス型(長方形の箱型で客席前方にステージがある)で、あらゆるジャンルの舞台演出に対応する。隣接する「りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館」のコンサートホールはアリーナ形式(舞台を取り巻くように客席が配置されている)を採用。残響音が長く、オーケストラ楽器の生の音を響かせるホールを実現した。また、新潟市音楽文化会館は遮音性に優れた13の練習室を持ち、ホールは市民の発表の場としても活用されている。鑑賞や表現の場として、文化ホールはそれぞれに個性的な特徴を持ち合わせている。

「りゅーとぴあ」コンサートホール

「りゅーとぴあ」コンサートホール。
音響的にも視覚的にも、ステージとの一体感、臨場感が楽しめるよう設計されている。
正面には県内のホールでは唯一のパイプオルガンが設置されている。

file-57 文化ホールに行こう!:前編~文化ホール新時代

文化ホール新時代

 今年4月にオープンした「アオーレ長岡」は、全国から7,000人もの視察者・見学者が訪れたという注目の多目的施設だ。コンセプトは「まちの“中土間(ナカドマ)”」。長岡駅前に立地し、市役所機能も盛り込むことで「アオーレ長岡」の存在自体が中心市街地の活性化を促す。屋根付き広場(「ナカドマ」)は大きく開かれ、道行く人の憩いの場になると同時に、イベントの場にもなる。人々が相互に活動しながら、そこからさらに新しい活動を生み出すこと。それが「アオーレ長岡」の狙いだ。民間の任意団体「市民交流ネットワーク『アオーレ』」(愛称:CINAシーナ)がその動きをサポートする。CINAは市民団体などの代表を中心に構成され、「ナカドマ」の運用ルールからイベント企画まで幅広く行う。市民目線の自由度を大切に、固定概念に捉われないイベントで、コンセプトである「市民協働」を具体化する。6月にはナカドマで人前結婚式が行われるなど、早くもユニークな試みが実現されている。

 県内には他にも7月に「柏崎市文化会館 アルフォーレ」がオープンした。こちらは中越沖地震からの復興のシンボルとして、文化施設としてはもちろん、災害時には避難所としての活用も想定されている。ホールはより密接に人々の暮らしとの関わり合いを持ち始めているのだ。

アオーレ長岡

日本建築の「土間(どま)」をヒントに作られたアオーレ長岡の屋根付き広場「ナカドマ」。
「ハレの場」として使ってもらえるよう、雨や雪でもイベントが可能な全天候型の巨大空間になっている。
写真は今年4月1日の落成イベントの様子。

「貸館」から「発信」へ

 一方で、文化ホール自体に対する世の中の要求も変わりつつある。演劇や音楽公演の舞台としてホールを貸し出す、いわゆる「貸館事業」だけでなく、自主事業を増やし芸術水準の向上をはかり、人材育成の拠点にすべきというものだ。要は、劇場側の発信力を高めることと考えてもいい。実はこの動きに早くから取り組んできたのが「りゅーとぴあ」だ。2004年に設立された「Noism(ノイズム)」は日本初、そして唯一の劇場専属ダンス・カンパニーとして活動を続け、海外の劇場からも招へいされ公演を行っている。演劇スタジオキッズコース「APRICOT(アプリコット)」では小学4年生から高校3年生までの子供が演劇を学び、そのなかで自己表現やコミュニケーションの取り方まで身につける。

 何かを発信するには、育てるところから始めなくてはならない。短期間では難しい命題だが、そこをクリアしたときホールの社会的意義はより高いものになる。人を育み文化を育てる。そんな文化ホールの姿を次回も引き続き追ってみたい。
 

『アプリコット』公演2011年8月『スーホの白い馬』より

 『アプリコット』公演2011年8月『スーホの白い馬』より。

file-57 文化ホールに行こう!:前編 県立図書館おすすめ関連書籍

県立図書館おすすめ関連書籍

「もっと詳しく知りたい!」、「じっくり読みたい!」という方、こちらの関連書籍はいかがでしょうか。以下で紹介しました書籍は、新潟県立図書館で読むことができます。貸し出しも可能です。ぜひ、県立図書館へ足をお運び下さい。

▷『舞台を観る眼』

(渡辺保著/角川学芸出版/2008年)請求記号:770/W46
 本書はまず、「白洲正子の思い出」と題し、白洲正子と能、一緒に旅をしてわかったその生き方などがつづられています。また、三島由紀夫の戯曲、折口信夫の芸能研究、著者が観賞した数々の演劇について書かれています。
 演劇評論家として著者が語る舞台のジャンルは幅広く、古典芸能、現代劇、ミュージカルなど様々です。本書を読むと舞台の奥深さを感じるとともに、劇場に足を運んで、現場の空気を感じながら作品を観てみたくなるのではないでしょうか。
     

▷『舞台の神に愛される男たち』

(関容子著/講談社/2012年)請求記号:772/Se24
 柄本明、笹野高史、すまけい、平幹二朗、山崎努、加藤武、笈田ヨシ、加藤健一、坂東三津五郎、白井晃、奥田瑛二、山田太一、横内謙介の13人へのインタビューがつづられています。
 「語り手は一流揃いの俳優、劇作家。じつに活き活きと再現してくださって、これも本当にぜいたくなことでした。」(あとがきより)と著者が言うとおり、それぞれが、自らの語り口で振り返る過去、仲間や先輩、演劇論などからは十人十色の個性が伝わってきます。
     

▷『名作バレエ50鑑賞入門』

(渡辺真弓著/世界文化社/2012年)請求記号:くらし769/W46

▷『知識ゼロからのミュ-ジカル入門』

(塩田明弘著/幻冬舎/2009年)請求記号:くらし775/Sh72

▷『双葉社ス-パ-ムック 歌舞伎がわかる本』

(双葉社/2012年)請求記号:くらし774/Ka11
「舞台」と一言で言っても、そこで演じられるものは様々です。こちらの4冊はいずれも、代表作のあらすじや解説がイラスト・写真とともに紹介されており、入門書としておすすめです。また、基本的な知識も載っていますので、舞台を観る前に知っているとより一層楽しめるのではないでしょうか。

ご不明の点がありましたら、こちらへお問い合わせください。
(025)284-6001(代表)
(025)284-6824(貸出延長・調査相談)
新潟県立図書館 http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/

 

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