file-68 にいがたの美術館・博物館めぐり(後編)

  

芸術の秋をもっと楽しむために。

癒しの庭園で、お茶の魅力を満喫 ~木村茶道美術館~

木村茶道美術館_外観庭園

緑豊かな美しい日本庭園に佇む茶道専門美術館。紅葉のライトアップ、風情ある雪景色と、季節ごとの風景でいつでも訪れる人の心を和ませ、癒してくれる。

木村茶道美術館_作品

色、艶、カタチ、独特の模様など、それぞれの魅力と味わいを持つ茶碗。制作された時代や作家の個性から、お気に入りを選んでお茶を楽しむこともできる。

 約4,000坪の広大な日本庭園「松雲山荘(しょううんさんそう)」内にある、四季の移ろいが美しい美術館。全国的にも珍しい茶道専門の美術館で、収蔵品を実際に手に取って、お茶をいただくことができる体感型の美術館です。古いものは6~7世紀の中国(隋時代)の器から近代的な日本の美術品まで、柏崎の寒香庵・木村重義翁(かんこうあん・きむらしげよしおう)が収集したコレクション、約1,600点を展示。陶器、茶道具、床の間の掛け軸など、日常生活の中に見る身近な美術品の数々が来館者の目を楽しませてくれます。
 茶道美術の魅力は、まず使ってみることが大事。見るだけでなく、手に取ってみて初めて本来の美しさ、奥深さが分かるといいます。お客様をもてなし、楽しませてこその茶道具。使用する用途やシーンを限定することなく、創意工夫を楽しむ姿勢も大切なポイントです。これなら、「茶道は敷居が高そう」と二の足を踏んでいた方にも、自由な発想でお茶を楽しんでもらえそう。
 古き良き日本の伝統が希薄になりつつある現代。優美な庭園で五感をうるおしながら、改めて日本の暮らしの良さ、和の心を実感してみてください。若い世代の方もぜひ訪れていただきたい美術館です。


家族みんなで楽しめる、個性的な企画展&イベント
~新潟市新津美術館~

新津美術館_外観

黄色い外壁が目を引く美術館。「花と遺跡のふるさと公園」内にあり、豊かな自然とともにゆったりと過ごすことができる。

 1997年、新津市美術館として開館し、2005年の新潟市との合併を経て、2006年から新潟市の施設となった「新潟市新津美術館」。1897年(明治30)年の新津駅開業以来、鉄道の要衝(ようしょう)として発展してきた街であることから、正面玄関はラッセル車※注(1)の形状をしています。
 一歩、館内に足を踏み入れると白い大理石でできた階段状のアトリウムが広がり、美術館のロゴマークになるなどシンボルになっています。天井高10mの2つの展示室では、近現代の日本画や洋画、現代美術、写真展、絵本原画、漫画・アニメーションのサブカルチャー展など、絵画だけにとらわれないさまざまな企画展を開催。2010年には、郷土の洋画家・笹岡了一(ささおか・りょういち)などの収蔵品を展示する常設展を開始しました。
 「子育て中の方にも美術館へ足を運んでもらいたい」という思いから、館内にBGMを流して子どもたちが声を出しても気にならない「子どもタイム」を設けるほか、無料の託児サービス(生後6ヶ月~未就学児対象、事前申込み制)も行っています。子どもが喜ぶ企画展はもちろん、文学と音楽を融合した公演「シーズン・アンド・アート」など、あらゆる年代の人が楽しめるイベントを展開中です。2階のカフェでは軽食や小さいサイズのキッズドリンクも提供。隣接する新潟県立植物園や歴史施設などとともに、一日を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 ※注(1)=線路を除雪する車両。
 

アトリウム

白い大理石でできたアトリウムでは、展示やミュージアム・コンサートなども開催している。

古来の暮らしが見えてくる、国宝&重要文化財 ~十日町市博物館~

十日町市_火焔型土器

1999年、国宝に指定された深鉢型土器(通称:火焔型土器、指定番号1)。日本の原始美術を代表する造形美に、海外の展覧会でも高い評価を得ている。

十日町市_復元民家

昭和40年代まで実際に生活していた民家を移築復元したもの。展示の様子は、大正10年頃の暮らしをイメージしている。便利に、快適になった現代の生活と比較することで新しい驚きや発見に出合えそう。

 展示のテーマは「雪と織物と信濃川」。数万年前から続く歴史の深さを感じさせる博物館です。3つの展示室では、国宝の「笹山遺跡出土品」をはじめ、重要有形民俗文化財である「越後縮(えちごちぢみ)の紡織(ぼうしょく)用具」と「十日町の積雪期用具」など、数多くの収蔵品を展示しています。
 笹山遺跡出土の火焔型(かえんがた)土器は、縄文土器として初の国宝に指定されたもの。これは1点のみならず、火焔型土器や王冠型(おうかんがた)土器を含む「深鉢型(ふかばちがた)土器」として57点、そのほか、多数の土偶や石器などを含め、全部で928点が一括して国宝に指定されています。深鉢型土器は、片寄りがないように3つのグループに分けて順番に展示しているので、いつ行っても火焔型土器や王冠型土器を観賞することができます。ただし、どうしても右の写真の火焔型土器(指定番号1)を見たいという方は、事前にお問い合わせを。炎が燃え上がるような力強い造形美や、縄文時代ならではの味わい深い表情をぜひお楽しみください。
 郷土植物園や奈良時代の復元住居などの屋外展示もあり、さまざまな角度からふるさとの歴史や生活を考えることができる貴重な博物館。原始から古代、中世、近世、近・現代へと時代が移り変わっていく様子を間近で体感できるので、地域文化を学ぶためのうってつけのスポットと言えます。

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特色ある展示から、地域文化の魅力を再発見。

味わい深い版画作品に、地元の人々の想いを宿して
~佐渡版画村美術館~

美術館_外観

旧・相川簡易裁判所の建物を利用して設立された。明治以降の佐渡金山、および周辺地域の繁栄の様子を今に残す建造物で、佐渡市の文化財となっている。

美術館_館内

落ち着きある佇まいの館内には、常時300点以上の版画作品が展示されている。浮世絵のように美しい版画作品もあるので、ぜひ一度足を運んでみては。(※12月1日~2月末まで冬期休館)

 趣き深い伝統建築が目を引く「佐渡版画村美術館」。旧相川簡易裁判所の跡地に、版画専門の美術館として、1984年に開館しました。元高校教師であり、版画家だった高橋信一(たかはし・しんいち)氏による版画活動の成果を収め、「佐渡を版画の村に」という高橋氏の想いを今なお地元の会員たちが受け継いで活動しています。明治時代の面影を残す風情ある建物内には、木版画・銅版画・シルクスクリーンなど、多彩な表現方法を用いた数多くの版画作品が展示されています。中には、絵画と見紛うほどのカラフルな版画作品も。絵の具を塗り重ねる絵画と違って、版画は色ごとに何枚もの版が必要になるうえ、彫り方や刷り方で全く表情の異なる作品に仕上がる点が魅力です。
 夏には「相川まるごと版画美術館」という企画で、奉行所などの周辺施設にも版画を飾り、観光客の目を楽しませてくれます。会員が力を合わせて一作品を仕上げる「大版画制作」にも挑戦。毎年、佐渡市相川では「全国高等学校版画選手権大会」が開催され、優秀作品はこちらの美術館で展示・公開されます。
 版画好きの方はもちろん、佐渡を訪れた記念としてもオススメなのが「版画体験」。会員の方が講師としてアドバイスしてくれるので、初心者でも安心して版画制作を楽しめます。興味のある方は、1週間前までに予約を。地元の人々との温かなふれあいも素敵な思い出となりそうです。
 

絵の具・技法・道具…全てにこだわり、雪国を表現
~南魚沼市トミオカホワイト美術館~

美術館_外観

一面の銀世界と真っ白な外観とのコラボレーションが美しい、冬の美術館。富岡氏が追求した究極の「白」は、美術館の内外に広がっている。

美術館_学芸員

平成24年度から始まった、城内中学校の「ジュニア学芸員鑑賞ガイド」。全4タイトルについて、中学校生徒が1タイトルにつき5~6分間の解説を行う日を設けている。
 

 国内外の雪国を巡礼し、「白」の美しさを表現した画家・富岡惣一郎(とみおか・そういちろう)の大作約500点を収蔵する美術館。富岡氏は、黄変(おうへん)や亀裂(きれつ)・剥落(はくらく)が生じない白色の油絵の具「トミオカホワイト」を開発し、殊にアメリカ人は「東洋の白」などと共感しました。その経緯から、つい白色のみに注目してしまいがちですが、実は白と黒のコントラストが重要。富岡氏の作品は、まずキャンバス一面に黒絵の具を塗り、その上に長大なパレットナイフで白絵の具を塗って白の絵の具を引っかく(削る)という技法が知られており、大きな特長のひとつになっています。また、晩年になると雪だけでなく、畦(あぜ)や草原など、色彩豊かな早春の作品も描かれています。
 白一色の外観や、大空間一室構造に設計された天井高の展示ホールも特長的な「トミオカホワイト美術館」。中学生の学芸員がトミオカ作品を紹介する日を設定するほか、小学校の授業の一環として模写のために展示室を開放するなど、先生や学生たちと協力し、積極的な取り組みを行っています。さらに毎月8日、18日、28日を「南魚沼市民無料招待日」に設定し、市民から気兼ねなく来ていただき、音楽イベントも企画しながら地域文化の発展に貢献しています。
     

あらゆる角度から、燕市の歴史を堪能する ~燕市産業史料館~

伊藤コレクション

伊藤豊成(いとう・とよなり)氏の生涯を通して収集した、多種多彩なスプーンコレクション。写真は「プリカジュール」と呼ばれる、精緻なエナメル技法が施されたもの。光を通すと、まるでステンドグラスのような美しい輝きを放つのが特長。

丸山コレクション

燕市生まれの丸山清次郎(まるやま・せいじろう)氏による煙管(きせる)と矢立(やたて)の一大コレクションも楽しめる。写真は「ジャワ更紗(さらさ)腰差したばこ入れ」と「赤銅玉川形羅宇(あかどうたまがわがたらう)きせる」の組物。いずれも明治時代の美しい細工が印象的。

 洋食器をはじめとする金属製品を多数展示する「燕市産業史料館」。新館では、約5,000本の世界のスプーンを一堂に観賞することができ、本館では、和釘(わくぎ)や鑢(やすり)、彫金などの名品を楽しむことができます。他にも矢立煙管(やたてきせる)館・工芸館(生活用具館)・工匠(こうしょう)館と、それぞれ燕市の伝統、昔の生活を知る上で欠かせない貴重な史料が展示されています。
初めての方は、まず新館からの見学がオススメです。家庭の中で見たこと、使ったことのあるスプーンを懐かしむもよし、お気に入りのデザインを探すもよし。個々の楽しみ方ができるのは、さすが“全国の洋食器の約95%を占める”と言われている燕市ならではです。一方、ものづくりに精通する方はぜひ本館から。金属産業の起源から現在に至る、壮大な歴史とともに先人の知恵や苦労を垣間見ることができるでしょう。
目で見て楽しむことはもちろん、新館の体験室では、異なる金属で音を奏でたり、重さを比べてみたりしながら、金属についての知識を深めることができます。ミニスプーンの制作体験は無料です(入場料に含まれています)。年12回、趣向を凝らした企画展を開催しているので、毎月何かしら新しい発見に出合えそう。「違いの分かる大人のための博物館」。燕市の洋食器や金物の美しさ、素晴らしさを改めて実感する一日になると思います。

      

    

<参考ホームページ>

    

▷ ・木村茶道美術館

▷ ・新潟市新津美術館

▷ ・十日町市博物館

▷ ・佐渡版画村美術館

▷ ・南魚沼市トミオカホワイト美術館

▷ ・燕市産業史料館

 

 

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県立図書館おすすめ関連書籍

「もっと詳しく知りたい!」、「じっくり読みたい!」という方、こちらの関連書籍はいかがでしょうか。以下で紹介しました書籍は、新潟県立図書館で読むことができます。貸し出しも可能です。ぜひ、県立図書館へ足をお運び下さい。

▷『新潟・隣県美術館博物館巡り:名作・名品に出会う旅。』

(ニュ-ズ・ライン出版/2007年)請求記号:N /706 /N722
 新潟県内や隣県、東京都の美術館・博物館を紹介した1冊です。各館の特徴や収蔵品について簡潔な文章でまとめられているほか、豊富なカラー写真からは館内の様子も知ることができます。
 このほか、特集記事では現存する「豪農の館」など10軒が紹介されているほか、江戸時代の彫刻師石川雲蝶や良寛などが取り上げられています。県内の美術館・博物館めぐりの行程にぜひ加えたくなる見所が満載です。

▷『知識ゼロからの博物館入門』

(竹内誠監修/幻冬舎/2010年)請求記号:069 /Ta67
 こちらのは「一度は行きたい博物館」、「歴史好きにはたまらない博物館」、「体験したらもっと楽しい博物館」など著者の視点で選ばれた、国内の個性的な博物館およそ100館が掲載されています。各館の特徴や展示品が写真入りで紹介されているほか、アクセス方法や休館日など基本的なデータも掲載されているため、ガイドブックとしても利用できるのではないでしょうか。
 このほか巻末には、「博物館を200%楽しむ基礎知識」として展示方法や展示品の輸送手段など、知っていると博物館をより楽しめるような情報も掲載されています。
      

▷『ぶらりあるき香港・マカオの博物館』

(中村浩著/芙蓉書房出版/2012年)請求記号:069 /N37
 こちらの本は、「ぶらりあるき博物館」シリーズのうちの1冊です。本書では香港の大規模な博物館や、マカオの市街地で巡ることができる館などが掲載されています。
 このシリーズではこれまでにバンコク、マレーシア、パリ、ウィーン、ロンドン、ミュンヘン、オランダについて刊行され、すべて当館で所蔵しています。貸出しもできますので、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。

ご不明の点がありましたら、こちらへお問い合わせください。
(025)284-6001(代表)
(025)284-6824(貸出延長・調査相談)
新潟県立図書館 http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/

 

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