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file-86 受け継がれる伝統芸能(後編)

  

糸魚川に息づく重要無形民俗文化財

天津神社の舞楽

天津神社の舞楽の陵王
天津神社の舞楽は毎年4月10日・11日に開催されるので、タイミングが良ければ桜が舞に花を添えることも。フィナーレを飾る「陵王」は、衣裳や振りなど能生との違いが興味深い。

 白山神社の丁度2週間前に奉納されるのが、糸魚川市一の宮の天津(あまつ)神社の舞楽。白山神社と同じ大阪四天王寺の流れを汲み、さかのぼること300年前にはその存在が確認されています。天明年間(1781-1789)の紀行文「東遊記」という橘南谿(たちばななんけい)の作品に記述が残されているのです。毎年4月10日に新衣裳、11日に旧衣裳で12曲の舞が奉納され、能生の舞楽と共に1980(昭和55)年1月に国の重要無形民俗文化財の指定を受けました。能や風流踊(初期の歌舞伎踊)よりも前に創作された日本の舞ではないかと言われており、こちらも稚児舞が多いのが特徴です。

 天津神社の春大祭は、別名「けんか祭り」とも呼ばれ、4月10日の正午近くに2基の神輿が10回前後もぶつかりもみ合うけんかを奉納することが見どころの一つ。かけ声も飛び交うほどの大きな盛り上がりを見せ、その後一転して舞楽による雅な世界へと変わります。祭りのフィナーレは白山神社と同じく陵王の舞が飾りますが、その衣裳は柄も入っており華やか。近い地域でも異なる文化の差異が確認できます。

 「私たちが子どもの頃から『天津神社の祭りが雨になれば白山神社の祭りは晴れになり、また逆も然り』と言われています」(五十嵐総代)とのことで、昨年は実際に言い伝え通りになったそうです。

根知山寺の延年(おててこ舞)

 
 
「おててこ舞」
 

延年において一番有名な舞「おててこ舞」
 大人・稚児各4人が扇を持ち、「露の踊」「若衆踊(わかしゅうおどり)」「扇車(おうぎぐるま)」「四節踊(しせつおどり)」「三国踊(みくにおどり)」「百六(ひゃくろく)」の6つの舞を踊ります。  

 糸魚川の秋の「舞楽」と言えば、根知山寺(ねちやまでら)の延年(えんねん)です。「延年」とは芸能によって心を和らげ、寿命を延ばそうと法会(ほうえ)の後の余興として演じられてきたもので、新潟県内では唯一の延年芸能になります。根知谷(ねちだに)の山寺集落にある日吉神社で毎年9月1日に奉納され、神社は「山王さん」と古くから親しまれ、また延年も代表的な舞の一つである「おててこ舞」の名前で親しまれています。舞の由来や起源は不明ですが、踊りが単純で同じ振りを何度も繰り返すことから相当に古くから伝わるものだと考えられています。歌詞の中には室町小歌に見られるような言葉などがあり、400~500年前から伝わるものではないかとも言われています。
 
 奉納される舞楽は前日8月31日の宵(よい)祭りで9曲、1日の本祭りで10曲。代名詞になっている「おててこ舞」では稚児が大きな「のし」を背中につけて踊るのが特徴的です。また最後に華と呼ばれるスイカやおもちゃが投げ入れられる「鏡の舞」や、根知山寺の延年の独創であると思われる獅子と才蔵(滑稽な仕草をする人)がからみあう「獅子舞」など、多彩な作品がずらり。華やかさ、かわいらしさ、面白さ…様々な見どころに溢れた内容に、舞台から目が離せません。今年はNHKホールで開かれた、全国に伝わる伝統・古典芸能が一堂に会する「地域伝統芸能まつり」に出演。地域を代表する芸能の一つとして、全国に紹介されました。
 

青海の竹のからかい

竹のからかいの様子

竹のからかいの様子
民間信仰から生まれた、五穀豊穣・除災招福・家内安全を願った行事と言われています。昼過ぎから若い衆によるからかいが3回行われ、その間に実施される子どもたちの竹のからかいや、紅白の餅が撒かれる「福もちまき」も訪れる人を楽しませます。

 江戸時代から続いていると言われる小正月行事・青海の竹のからかいは、2つの町がぶつかり合う勇壮なもの。東町と西町に分かれた若い衆が顔に隈取りをし、その年の豊漁・豊作を占うために2本の青竹を組み合わせ引き合います。激しい引き合いは迫力満点で、竹が折れたり割れたり多く引かれてしまった方の負け。からかいの後は浜で町内中の正月飾りと先ほどの竹を一緒に高く積み、火をつけ、若い衆が唄いながらその周りを回り、観衆は餅などを焼いて厄を払う「さいの神焼き」へ。全国的にも非常に珍しい行事とされ、当日は警察官も隈取りをする程、町は竹のからかい一色になります。毎年1月15日に開催されますが、その準備は慣習に則り1月の7日から子どもたちも参加して進められます。若い衆のからかいの間には小・中学生によるからかいも2回行い、準備から本番まで子どもたちも関わることで、この古くから伝わる伝統を次世代へと引き継いでいます。

 「3月14日からは北陸新幹線が開通します。それを機にグループで来るという話もありますし、新しい流れも期待したいですね」という五十嵐総代の言葉にもあるように、大きな転機を迎える糸魚川。伝統を守り、新しい環境を受け入れる。地域の個性を世の中に伝える。そして世代や地域を越えたコミュニケーションを育む。糸魚川の各地域が独自の文化を大切にしてきたからこそ宿る、成熟した伝統芸能の力がそこにはあります。訪れてみれば、きっと感性の琴線に触れる体験が待っていることでしょう。

     
    

■ 取材協力・資料提供
能生白山神社総代 五十嵐紀夫さん
能生白山神社楽人会楽長 五十嵐保さん


■ 参考資料
「能生祭り 舞楽の世界」伊野義博

 

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