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file-87 ヒスイと世界ジオパーク~奴奈川姫伝説と地球の営み~

  

ヒスイ文化を生み出した糸魚川のジオパーク

地球と人の営みを体感する世界ジオパーク

糸魚川市交流観光課 ジオパーク推進室の鳥越寛子さん

糸魚川市交流観光課 ジオパーク推進室の鳥越寛子さん。滋賀県出身ながら、「糸魚川の自然や文化に魅せられて」完全移住。登山やスキーを本格的に楽しむアウトドア派だ。


小滝川ヒスイ峡

糸魚川に豊かなヒスイをもたらした「小滝川ヒスイ峡」。ヒスイの大岩が流域に点在する。


塩の道

「糸魚川- 静岡構造線」に重なるようにして続く「塩の道」。かつて塩を信州へと運んだ歴史の道だ。


糸魚川- 静岡構造線

日本列島の東西の分かれ目・フォッサマグナの西端にあたる「糸魚川- 静岡構造線」。



名産のアンコウ

名産のアンコウ。糸魚川周辺の海域の地形が、アンコウやゲンギョ、タチウオなどの深海魚をもたらす


ジオ丼

市内の飲食店で味わえる「ジオ丼」。豊かな地物を生かし、各店がオリジナルメニューを提供。


 世界ジオパーク・糸魚川。主要な地溝帯であるフォッサマグナに代表される地質や雄大な景観、特有の生物、育まれた歴史など、地域の風土が評価され、2009 年にユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の支援により発足した「世界ジオパークネットワーク」の審査を通り、日本で最初の「世界ジオパーク」のひとつに認定されました。
 特集の後半では、糸魚川ジオパークの特徴と文化に与えた影響、その見どころをご紹介します。

 糸魚川のジオパークは24 のジオサイトから構成されています。そのポイントを糸魚川市産業部交流観光課・ジオパーク推進室の鳥越さんにお聞きしました。
 「24 のジオサイトはそれぞれ特徴的ですが、地質学的、文化的におすすめなのは、ヒスイ関連のスポットとフォッサマグナ地層関連のスポットです」とのこと。糸魚川の文化にも深く関係しているヒスイは、小滝川のヒスイ峡などから生み出されています。地殻の深い場所で生成されるヒスイなどの鉱物はプレートの動きや火山活動によって運ばれ、隆起した山やその渓谷から姿を見せます。長い年月をかけた地球の営みがヒスイを生み、高志の国のヒスイ文化を育んだと考えると、大地と人との密接な関係が分かります。
 「ヒスイとその加工の歴史を学ぶなら、リニューアルされた『フォッサマグナミュージアム』や、大規模な遺跡を有する『長者ケ原遺跡』や『考古館』を訪れてみてはいかがでしょう。また、プレートの境界を直接観察できる糸魚川-静岡構造線や、海底火山の痕跡である枕状溶岩の見学(フォッサマグナパーク)も面白いと思います」(鳥越さん)。

 浜徳合の地層(能生地区)では、しましま模様の地層からクジラや貝の化石などが見つかることから、ここがかつて海底にあったことを感じさせてくれます。雄大な景色を望む『高浪の池』もみどころです。巨大魚(浪太郎)が目撃されている湖から望む明星山は、約1 億年かけて熱帯付近の海から運ばれたサンゴ礁でできた山。明星山には左巻きのカタツムリなど、固有種も生息しているそうです。

 特徴的な地形が人々の文化に与えた影響が分かるスポットが他にもあるのでしょうか。
 「上杉謙信が武田信玄と争った戦国時代の有名な古事『敵に塩を送る』際に使われた『塩の道』は、実は糸魚川- 静岡構造線にほぼ重なるようにしてあります」(鳥越さん)。
 深い山に囲まれた糸魚川は、周辺諸国へと向かう道が限られていました。構造線上は窪地になりやすいことから、塩を運ぶ人が道として利用したのではないかと考えられています。信州(現在の長野県)の人々に貴重な塩を届ける道も、地球の営みの一部と考えると、なんともロマンがあります。
  また、断崖絶壁の親不知が海辺に続き、日本の屋根ともいわれる険しい山々が連なる糸魚川は、通れる道が少ないことからも交通の要衝として古くから栄えました。鳥越さんは、「地形的にみて人や物の交流点であり、古くから東西文化が集中しやすかったのでしょう」と話します。深い山々の間にある多くの谷も、古い文化が残りやすい要因です。以前の特集(file-86「受け継がれる伝統芸能(後編)」)でご紹介した能生・白山神社の舞楽(大阪四天王寺の舞楽がルーツ)など、祭りにもその影響は見られます。
  世界ジオパークにある奴奈川姫関連のスポットでは、『奴奈川姫の産所』・『天津神社』・『神堂山・石段』などがあります。歴史を感じながら巡ってみてはいかがでしょう。

 また、糸魚川から富山県にかけて、陸から近いところに富山トラフという深い海底谷があることから、一般的な魚からゲンギョやアンコウなどの深海魚、ベニズワイガニなど、魚介類も豊富な糸魚川周辺。例えばゲンギョやタチウオを日常的に食べる文化は、お隣の富山県と同様です。市内の飲食店では、鮮魚などを生かした「ジオ丼」のほか、「カニ丼」・「アンコウ鍋(冬季)」などを味わえます。フォッサマグナ特有の地形が食文化にも生きています。

世界ジオパークに新たな観光スポットが登場

ジオパーク情報コーナー

ミュージアムのエントランス脇にある「ジオパーク情報コーナー」は、誰でも無料で利用できる。


館内に再現された「ヒスイ峡」

展示室へのエピローグは、館内に再現された「ヒスイ峡」。ヒスイの大岩と光の演出が神秘的だ。


第1展示室

含まれる鉱物によってさまざまな色になるヒスイ原石。大小の多彩な原石が並ぶ「第1展示室」。


第3展示室

そのビジュアルに圧倒される「第3展示室」。目と耳で地球の営みを体感できると好評だ。


フォッサマグナミュージアム 業務課の杉野尚さん

フォッサマグナミュージアム 業務係の杉野尚さん。
「北陸新幹線開通やリニューアルされた展示、高校生以下が入館無料の相乗効果で、リニューアルオープンから来館者が倍になりました」と笑顔。


 糸魚川ジオパークの見どころとして最後にご紹介するのが、平成27 年(2015)にリニューアルオープンした『フォッサマグナミュージアム』です。これまでの展示に加えて、『ジオパーク』や『フォッサマグナ』関連の展示などが大幅に追加されました。
 「糸魚川にある各ジオサイトの情報をはじめ、フォッサマグナをはじめとする地質やヒスイなどの鉱物を楽しみながら知ることができます」と語るのは、同館の杉野さん。こちらでは、ヒスイ・石灰岩・フォッサマグナ・焼山など、約5 億年にもおよぶ糸魚川の大地の物語を紹介しています。
 今回のリニューアルの大きな目玉は、大スクリーンで糸魚川のフォッサマグナを紹介する第3 展示室です。正面にあるスクリーンは200 インチ、床にも16 の大型モニターが配置されており、大音量の効果音とともに迫力あるヴィジュアルが展開されます。このほか、糸魚川の川や海で発見された美しいヒスイの原石が並ぶ第1 展示室『魅惑のヒスイ』、地震や火山を紹介する第4 展示室『変わりゆく大地』、国内や世界の鉱物が並ぶ第6展示室『魅惑の鉱物』など、見どころが多彩です。
 「ジオパーク情報コーナーや第3 展示室などをご覧になってから、糸魚川- 静岡構造線などの現地を訪れる方も多いです。世界ジオパーク・糸魚川ならではの楽しみですね」(杉野さん)。リニューアルを機に、高校生以下は通年入場料が無料になったのもポイントです。ミュージアムの隣には『長者ケ原考古館』もあり、共通入場券も販売されています。
 
 奴奈川姫の伝承が息づく風土、東西の文化が融合した深い歴史、世界ジオパークの興味深い地質や自然。さまざまな糸魚川の魅力を、ぜひ感じてみてください。  

    

■ 関連サイト
糸魚川世界ジオパーク http://www.geo-itoigawa.com/
フォッサマグナミュージアム http://www.city.itoigawa.lg.jp/dd.aspx?menuid=4586/  
長者ケ原考古館 http://www.city.itoigawa.lg.jp/dd.aspx?menuid=3808
天津神社  http://www.fsinet.or.jp/~amatsu/


■ 取材協力・資料提供
糸魚川市教育委員会 文化振興課 木島勉さん
ヒスイ文化研究所運営委員会・郷土史家 土田孝雄さん
糸魚川市産業部交流観光課 ジオパーク推進室 鳥越寛子さん
フォッサマグナミュージアム 杉野尚さん


■ 参考資料
土田孝雄(2008)『奴奈川姫 賛歌』(株)アド・クリーク
梅原猛(2012)『古事記 増補新版』学研M 文庫
宮澤豊穂(2014)『日本書紀 全訳』ほおずき書籍

 

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