日本最初の鮭の博物館「イヨボヤ会館」では、毎年11月中旬から12月にかけて塩引き鮭作りの体験講習会を開催。これに挑戦しようと、全国各地から多くの人が来館します。
イヨボヤ会館では、鮭の生態や三面川の鮭漁、そして村上の鮭文化などを紹介。産卵から遡上まで、鮭の一生を楽しく学べます。
塩引き道場が開催される秋には、全長50メートル・幅8メートルの地下の大空間で、三面川の分流「種川」に遡上する鮭の様子をガラス越しに間近で見ることができます。
塩引き道場へは、イヨボヤ会館左手を道沿いに進みます。
塩引き道場は「越後村上三ノ丸流鮭塩引き道場」と言い、平成元年に村上市の職員によって始められました。村上の家庭では元来、一家一流のこだわりをもって塩引き鮭が作られてきました。その良い部分を上手に取り込んだのが「三ノ丸流」の塩引き鮭です。
塩引き道場の道場主は、村上市長。講師は師範と呼ばれています。本日の師範は、石川力雄さん、五十嵐盛輝(いがらしせいき)さんです。
早速、作業に取り掛かります。オス(村上では「カナ」)で塩引きを作ります。メス(「メナ」)は、おなかのイクラ(村上では「ハラコ」)に栄養が取られ、一番おいしい腹の部分が薄くなるため、身の厚いオス(カナ)を使います。
最初に頭を右にして、頭のヌメリを取ります。ヒレや魚体のヌメリは菜切包丁で取りますが、頭の部分は包丁を使用すると傷がついてしまうので、布スポンジを使用します。
ヒレと魚体のヌメリは、包丁を直角に立ててすくうように取っていきます。
口の中の上下の骨「アギ」を切り離し、エラの周りを切ってエラをはずします。乾燥すると目の部分が引っ込んで見た目が骸骨のようになるので、目の裏側にある筋を切ってこれを防ぎます。
次におなかの処理を行います。糞門から胸ビレの先まで中の肉を切らないように注意を払いながら切っていきます。途中、腹ビレあたりで止め、1.5㎝ほどを残して、再び切っていきます。こうすることで、村上ならではのスッキリとしたシルエットの塩引き鮭に仕上がるそうです。「形がいい塩引きは、味もいいし価格もいい」と五十嵐さん。
内臓を取り出して背ワタの両側に軽く切り込みを入れ、背ワタをスプーンで完全に取り除きます。さらに背骨に一刀入れて血管を切り、また、尻ビレの骨に切り込みを入れ血液を取ります。
下処理が完了したら、全体を流水で洗います。背わたの部分と目の周りは、特に入念に洗います。
まな板の水分を拭き取り、持参したタオルを1枚敷いて頭を左に向け鮭を置いて、赤ちゃんをバスタオルで拭くようにもう1枚のタオルで魚体の水分を丁寧に拭き取ります。
塩を鮭にすり込みます。塩の量は、鮭の重量の7~10%くらいが目安。暖冬気味の年は、10%が妥当だそうです。5㎏の鮭なら、500gの塩を使います。「最初に目の部分を塞ぎます」と五十嵐さん。目玉を飛び出させて塩をまぶし元に戻します。
ヒレやウロコ、おなかの中にも塩をすり込みます。
道場での塩引き鮭作りはここまでで、参加者は用意された発泡スチロールの魚箱に「仕込んだ鮭」を入れて持ち帰ります。帰宅後、気温の低い場所に箱に入れたまま置き、3日後くらいに魚体をひっくり返してさらに3~4日置いた後、たっぷりの水の中に入れ流水で8~10時間かけて塩抜きを行います。目安は、魚体が生の時の軟らかさに戻ったくらいです。そして魚体を水で洗ってヌメリを取り、尾ビレの付け根を縄等で縛って、北側の日陰で風通しのよい場所に頭を下にして干し上げます。
食べごろは、寒風が吹き付ける戸外に吊るしてから15~20日後。村上では、日本海から来る湿った風と塩でうま味が醸成され、おいしい塩引き鮭に仕上がります。切身にしてラップで冷凍保存をしておけば、いつでもおいしい塩引き鮭が食べられるそうです。
関連リンク
イヨボヤ会館
村上市塩町13-34
電話0254-52-7117
村上市観光協会
電話0254-53-2258