鏡板径15.1センチメートル、像高5.7センチメートルの菩薩像を表す小形の懸仏で、五十君神社の社殿内に安置されている懸仏です。同社の本地仏と思われます。 本地仏とは、仏教の広まりと、共に発生した神仏習合の思想によるもので、日本固有の神々は、実はインドの仏が日本を済度(さいど:苦しみや困難から救済すること)するために姿を変えて現れた姿であるという考え方です。 本体は線刻の蓮華座に座る虚空蔵菩薩坐像で、木製の岩座の上におかれ、鏡板の上に取り付けられています。宝冠に五ヶ仏が線刻されており、左手には宝珠を持っていますが、右手の持物は失われています。ガラス玉を連ねた瓔珞(ようらく:首に架けられた装具)もよく残っており、本体左右の鏡板上には、花瓶が打ち付けられており、右側の花瓶には、蓮の実をガラス玉で表現した蓮華が付いています。 天蓋部分は基板を除いてほとんど失われてしまっていますが、鏡板には覆輪をめぐらし、釣輪座には獅嚙(しかみ:歯をむき出しにした動物の模様)を具備しています。
本体と蓮華座は一鋳で鍍金が施され、鏡板には鍍金された当時の状態がよく残っています。 やや切れ長の目、小さく結ぶ口元などから、鎌倉時代末期の制作と考えられます。小形ながら、異形的な懸仏で、全体的に保存状態も良好であり、注目すべき遺品です。
出典:
『上越観光ネット』
提供元:上越市観光企画課
画像提供元:
上越市観光企画課