
file-113 大地の恵み~ジオパークと糸魚川の温泉~(前編)
多様性に満ちた糸魚川ジオパーク
温泉は、地層の成分を含んで湧き出してきます。そのため、地域によって泉質が異なりますが、ここ糸魚川では、硫黄泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉に加え、化石深層海水など、実に多彩な湯が楽しめます。それは、糸魚川ジオパークの地質の多様性の証明。まず、目に見えない地質の謎に潜入します。

フォッサマグナミュージアム展示コーナーの、フォッサマグナと糸魚川ー静岡構造線を示したパネル。パネル内の数字は日本国内の石灰岩がある場所で、番号に対応した石灰岩の標本がパネルの下に展示してある。

5億年に渡る大地の物語
フォッサマグナは巨大な溝

2015年3月、リニューアル。巨大スクリーンとモニターを駆使するフォッサマグナシアターは圧巻/フォッサマグナ ミュージアム
構造線を挟んで、古生代・中生代(5億5000年前~6500万年前)と、新生代(2500万年前以降)の、新旧ふたつの地層が存在しています。糸魚川の地層は、複雑な日本列島誕生の歴史を反映しているため、複雑になっています。

「糸魚川ほど地質が複雑でバラエティに富んでいる場所はなかなかありません。探究心が刺激されます」/小河原さん

大きさや色の異なる、多種多彩なヒスイが集められた展示室。展示ヒスイの中には市民が発見して提供したものも。
糸魚川ジオパークには、24ヶ所の拠点、ジオサイトがあり、地質や文化、歴史を実感することができます。「糸魚川というテーマパークに、24のアトラクションがあると思ってください。いろいろ回って、糸魚川の大地の恵みを体感していただきたいです」と、小河原さん。
そしてもう一つ、伝えたい糸魚川の魅力があるそうです。それは日本酒。「糸魚川は硬水が多く、水質もいいので、しっかりとした飲み口のお酒ができます。それも大地のおかげなのです」温泉プラスαの楽しみも糸魚川の魅力として、五感に染み渡ります。
姫川沿いにさかのぼる

高く吹き上がる噴泉は同館のシンボル。温度を下げ、ガスや匂いを抜くための手段でもある/糸魚川温泉 ホテル國富アネックス
なめるとしょっぱい塩化物泉は、海に囲まれた日本では珍しくはありません。しかし、「姫川渓谷(大糸線)ジオサイト」の糸魚川温泉「ホテル國富アネックス」の温泉のしょっぱさは、時空を超えた特別の味です。「太古の地層にたまった化石海水から、温泉が湧き出ているんです。源泉は姫川沿いにあり、地下約1,300mから約97度の高温の湯が湧くので、敷地内の噴泉でいったん空気に触れさせて冷まし、また、ガスや匂いも抜いてから、浴室へ引いています。泉質は、ナトリウム・カルシウム塩化物泉。保湿力が高く、湯冷めしにくいのが特徴です」と、木島健太郎さん。かつて、温泉から塩を作っていたというほどの塩辛さなのです。「ゆくゆくはこの塩作りを復活させ、戦国時代に上杉謙信が武田信玄に塩を送ったという『塩の道』と関連させて、観光資源の一つにできたら」と、観光との連携を視野に、温泉の活用を進めています。

露天風呂の巨石はすべて姫川産。まるで山間の岩場にいるような雰囲気を丹念に再現している/姫川温泉 ホテル國富翠泉閣


4つの露天風呂はそれぞれ5~10分程度の距離にあり、ハイキング気分で湯巡りもできる/蓮華温泉 白馬岳蓮華温泉ロッジ
後編では、糸魚川―静岡構造線の東側の温泉地を巡ります。