
file-136 新潟の太鼓集団~佐渡・新潟・長岡・上越・胎内・柏崎~(後編)
地元愛が太鼓パフォーマンスを生む
「五穀豊穣、大漁満足」を祈り、地域ならではの太鼓演奏を模索して、作り上げ、次代に伝えていこうと活動をしている人々がいます。オリジナリティ豊かな演奏を行っている太鼓集団を、新潟・長岡・上越・胎内・柏崎に訪ねました。
太鼓で祭りを盛り上げる「万代太鼓」「悠久太鼓」

大小の和太鼓の勇壮な演奏に、新潟まつりの祭笛が組み合わされて華やか。/万代太鼓

「太鼓の合奏は指揮者がいないので、演奏者全員が集中して心を合わせます。練習でもそれを徹底します」/東さん
新潟万代太鼓振興会事務局長であり、新潟万代太鼓 神龍会代表である東由喜男(あずまゆきお)さんは、万代太鼓の活動を次のように語ります。「発足時から後進の育成を積極的に行い、特に市内の小学校と連携を図ってきたので、打ち手のすそ野は広いですよ。振興会には、幼稚園から大学、企業、一般まで22団体が加盟。国内外で年間350を超える公演を行うなど、新潟のPRも担って活動しています」

長岡まつりの平和祭では、悠久太鼓連合会のメンバー100人が一緒に太鼓を打つ「100人太鼓」を披露。/悠久太鼓

連合会加盟12団体が一堂に会する合同演奏会。子どもに大舞台での演奏を体験してほしいと毎年開催している。/悠久太鼓
伝統の太鼓を復活させた「保倉川太鼓」「板額太鼓」

平成20年(2008)から「浦川原和太鼓祭」を毎年自主開催するなど、「自ら仕掛ける」が信条。/保倉川太鼓

斜め台に長胴太鼓を据えた斜め打ちが基本。短い曲をつなげたメドレー形式の演奏を得意としている。/保倉川太鼓
東頸城郡浦川原村(現・上越市浦川原区)では、昭和53年(1978)に結成された太鼓愛好会が祝いの席やイベントで演奏していました。平成に入り、会は保倉川太鼓と名乗り、活発な活動を展開していきます。しかし、打ち手の高齢化も進み、活動の継続が困難に。そこで平成13年(2001)に立ち上がったのは、五井野利一さん。現団体の副会長です。「母や先人達が叩いていた太鼓の伝統を守らねばならない」と、仲間に声をかけ再始動。東京の有名な太鼓集団に指導を仰いだり、かろうじて残っていた譜面からオリジナルの伝統曲を読み解き、形を整えたりして、アグレッシブで五感に訴えかける演奏スタイルを確立しました。即興を交えることも保倉川太鼓の特徴です。
平成20年(2008)には「浦川原和太鼓祭」を初開催。平成25年(2013)には和太鼓集団として県内で初めて法人格を取得し、NPO法人としてスタートを切りました。「課題は、次の世代をどう育てるか。小学校の和太鼓クラブで教え、年間60本ほどイベントに出演して持ち味の粋な和太鼓を披露し、知名度アップを狙っています」

胎内市のイベントでは、演奏の後、一般の人に太鼓を叩いてもらう触れ合いの時間を設けて普及を進める。/板額太鼓

創設当初から斜め打ちと立て打ちでステージを盛り上げる。/板額太鼓
新しい郷土芸能として誕生「日本海太鼓」

演奏者が鬼の面をつけ、それぞれの役を演じながら物語性豊かな舞台を作り上げる。楽曲「冬の部」/日本海太鼓

メンバーは10代から60代までの21名。春・夏・秋・冬の4部作を中心レパートリーとして、練習に励む。/日本海太鼓
和太鼓の持つ伝統的な形式美に、新鮮なリズムを取り入れた創作太鼓は、親しみやすく、またドラマチック。全員が面をつけて演奏します。現会長の遠山宏さんは、イベントで演奏を見て「かっこいい」と引きつけられて入会しました。「実際は、鬼の面をつけるので視野は狭く、一方、振りは複雑で表現力も必要なので難しいです。叩くというより、演じるという感じですね」。5年ごとの記念公演、毎年行う新春公演のほか、海の大花火大会やマラソン大会、成人式などで演奏し、今では柏崎になくてはならない郷土芸能となっています。
■ 取材協力
東由喜男さん/新潟万代太鼓 神龍会 代表
三条正道さん/長岡悠久太鼓連合会 会長
五井野利一さん/保倉川太鼓 副会長
小華和靖さん/板額太鼓保存会 代表
遠山宏さん/日本海太鼓 会長