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file-27 新潟のおいしいお米 「「おいしい」+「安全・安心」を」



「おいしい」+「安全・安心」を

 消費者の志向は、おいしいかどうかだけでなく、安全・安心であることが重視されるようになりました。新潟のコシヒカリは、そのトップブランドを守るべく「安全・安心」への取り組みにもチャレンジしています。

 一つは農薬。農家ごとの農薬使用量の統計はありませんが、県内の流通量は年々減少しています。一口に農薬といっても、使用目的は殺菌、殺虫、除草のほか、作物の成長促進や抑制などを目的にした薬剤があり、使用する農薬も用途ごとに異なります。新潟県ではコシヒカリBLの導入から特にいもち病防除のための農薬使用量が減少(流通量から推計)し、農薬全体でも農地10アールあたりの散布量が5.5キログラム(2005(平成17)年)から5.2キログラム(2007(平成19)年)に減少しています。

 そして持続性の高い農業生産方式の導入促進に関する法律に基づき知事が認定するエコファーマーの認定者数は2009(平成21)年3月現在で11,751人。これは福島県に次ぐ全国第2の多さです。減農薬の取り組みでは、県内で最も進んでいる長岡市が、農薬を慣行栽培から5割以上低減した栽培を推進し、市内にある作付けされた水田のおよそ3割で実施。同じく3割以上低減した栽培を含めると、同市の水稲作付面積の半分で農薬の使用を低減した取り組みがされています。JA越後ながおかでは農薬や化学肥料を5割以上低減して栽培する作付面積を、2010(平成22)年に3,500ヘクタールにすることを目標に掲げました。長岡市の他にも上越市や佐渡市などでも環境保全型農業の推進を強化しており、新潟米は「おいしい」だけでなく「安全・安心」な米づくりにシフトしています。かつては各農家ごとの取り組みでしかなった農薬の使用を低減し栽培された米ですが、その流通量は着実に増えています。

 
 

 無農薬なんて無理だと思っていた
 
 稲刈の様子  

減農薬減化学肥料で栽培された平石さんのたんぼでは稲刈りの真っ盛り。前日の雨で足元にぬかるみがあると、機械のメンテナンスも大変だ。機械類の清掃や維持管理は、コストダウンのための重要な仕事の一つだという。  

 
 平石博さん  

機械刈りとはいえ「3人くらいの人出はあった方が効率が上がる」と言う。短期間で、しかも1台の稲刈り機で効率よく作業を終えるにも段取りが必要だ。忙しい時期は同時に、若手のスタッフの仕事ぶりにも目配りする時期でもある。  

 
 

 平石博さんは長岡市で米ぬかだけで作る有機JAS認定のコシヒカリと、農薬、化学肥料を地域慣行栽培より5割以上低減した(特別栽培)コシヒカリを栽培する農家。9月半ば、田んぼは稲刈りの真っ最中でした。
 
 「これからは個人で農業をやっても暮らしていけない」と親の後を継いで就農した時に有限会社グリーンを設立し、農業経営に取り組んできた平石さんに、転機が訪れたのは2002年のことでした。
 
 「無農薬のお米は扱ってないですか?って、電話が来たんです。無農薬で米作りしている人がいるのは知っていた。だけどそれは趣味みたいなもので、“業”ではないと思っていましたから、ありませんよと」と平石さん。「木で鼻をくくったように」答えたという。しかし、この問い合わせを忘れることはありませんでした。自分のように従業員を雇用して農業経営をしていても、無農薬栽培に取り組んでいる企業は存在する。それは道楽なのかビジネスなのかと考えた末、「他人にできることが自分にできないと決め込むのはおかしい」と、翌年20アールの水田で農薬をいっさい使わない栽培を始めました。
 
 「来る日も来る日も草取りですよ。いつまでたっても隣の田んぼにたどり着けなかった」と平石さんは最初の年を振り返ります。しかし農薬不使用の米を作ったと告知をすると反響は大きく、しかも買ってくれた人から「こんなにおいしい無農薬米は食べたことがない」と喜ばれ、確信につながっていきました。
 
 「当時無農薬は九州とか、あまり旨い米の採れない地域が取り組んでいたんです。無農薬の新潟産コシヒカリなんてほとんどなかった」と平石さん。普通に作ってもそこそこ高値で売れる米に、わざわざ人一倍の手間をかけるから新潟では「道楽」と見られてもいたのです。しかし平石さんは、取り組んで初めて、道楽ではなくビジネスとして農薬不使用の継続を選択しました。ほどなくしてそれ以外の田んぼを、従来と比べて農薬や化学肥料を5割以上低減した栽培に切り替えました。
 
 農薬を使わないことでやっかいなのは、雑草と害虫、そしていもち病です。雑草は伸びれば稲の生育を妨げ、虫のすみかにも、風通しを悪くしていもち病の温床にもなります。害虫は主にカメムシで、未成熟段階で実を吸われると米が黒く変色し黒米と呼ばれます。この混入割合によっても米の等級が下がるため、農家にとっては収入に直結する問題なのです。
 
 平石さんは、順次この問題を解決していきました。雑草対策には「紙マルチ」という方法。田植えの際に黒い紙を田んぼに敷き詰めることで、雑草の発芽を押さえます。しばらくすると紙は溶けますが、その頃には稲が生長しており、光が遮られ、雑草の成長が抑えられます。「田植えと、水の管理は大変。きれいにびっしり敷き詰めないと隙間から雑草が出てくるし、水が足りなきゃ風で紙がめくれるし、多すぎると浮いてきて苗を潰す。この時期はほとんど忍耐、精神力の勝負」と言いますが、夏場の果てしない草取りに比べるべくもありません。カメムシ対策には、選別機を買い足し「1台で未成熟の実をはねて、1台は黒米(カメムシに吸われた米)をはねるんです。着色米の混入で2等米になっても農協に出荷するわけじゃないから、お客さんに送る前にきちんと取り除けば問題ない」という対処法。そしていもち病は「強い品種(コシヒカリBL)が出たからね」。こうして3つの大問題を、平石さんはクリアしたのです。
 
 現在、有限会社グリーンは農薬不使用のコシヒカリ2.7ヘクタール、特別栽培(地域比で農薬や化学肥料を5割以上低減)のコシヒカリ22ヘクタール、こしいぶき1.2ヘクタールを栽培し、従業員はフルタイム5名、パートタイム2名を雇用しています。売上のほとんどが通信販売で、注文を受けてから精米するため、自身は毎朝4時からの籾すりが一日の始まり。「農協に出荷すればお客さんからの反応はゼロ。社員にはお客さんから届いた声をきっちり聞かせているよ。喜んでもらえるからがんばれる。もちろんクレームだって聞かなきゃならないんだけど」と平石さん。おいしい米をつくるコツを尋ねると「同じ場所なら土、水、太陽は同じ条件だ。変えられるのは、田んぼに通う回数だ」と答えてくれました。  

協力
新潟県農業総合研究所作物センター
新潟県農林水産部農産園芸課
有限会社グリーン
コシヒカリBLについて

 

 

 

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