file-58 文化ホールに行こう!:後編~ 参加しよう!
創り上げよう!参加型の文化ホールイベント

参加しよう! 創り上げよう! 参加型の文化ホールイベント

みんなが参加できる! 文化ホールの企画

 演奏会や演劇を、座席に座って鑑賞する場所。文化ホールをそれだけのところと考えているとしたら、それはものすごく勿体ないことだ。ホールでは、みんなが参加できる催しが頻繁に用意されている。例えば「ワークショップ」。創作の過程を体験する場が、公演に合わせて用意されていることがある。また「プレトーク」や「アフタートーク」も知識を深めるのに役に立つ。例えば今年3月、柏崎産業文化会館で行われた「Noism2」の公演では、開演前にNoism芸術監督の金森穣氏によるホールとアーティストの関係などについてのプレトークが行われた。「Noism」の公演では「アフタートーク」を毎回おこなっており、作品についてのお話や、観客からの質問にも答えてくれる。

 参加型といえば、今年はビッグスケールの参加型イベントが用意されている。アオーレ長岡を舞台にした、「みんなで歌おう 千人の第九」。子供も大人も、経験者も初心者も問わない市民1,000人による第九(ベートーヴェン交響曲第九番第4楽章)の合唱。応募はすでに締め切られているが、こんな楽しい参加型企画がホールではしばしば用意されている。
 

Noism1&2合同公演 劇的舞踊『ホフマン物語』(改訂版再演) アフタートーク

 Noism1&2合同公演 劇的舞踊『ホフマン物語』(改訂版再演) アフタートークより。
 公演についてより知識を深める場として、アフタートークは魅力的。

地元の魅力を創造する、ホールの自主企画

 参加型というより、もっとスケールの大きなお祭り型(?)イベントというのも最近は多数見受けられる。今年、新潟では3回目となった「ラ・フォル・ジュルネ」は、市民・学生アンサンブルを加えた出演者数2,474人、来場者76,970人を数えた。新潟市・北区文化会館では昨年から「北区ジャズ祭り」が開催され、定番化する勢い。また見附市文化ホールでは20回目を迎える「アルカディア音楽祭」が開催される。記念の今回は大阪フィルハーモニー交響楽団を招き、第九が披露されるという。

 市民自らが演じ手となる市民ミュージカルにも意欲的なものが登場する。新潟市北区文化会館で11月に行われる市民ミュージカル「春のホタル」。地元・福島潟を舞台に、余命少ない小学校の教師が、地域にホタルの舞う風景を復活させようと教え子とともに奮闘する物語だ。大小さまざまな企画で、ホールは市民の芸術活動のすそ野を広げているのである。
 

file-58 文化ホールに行こう!:後編~文化ホールが育てるもの、つなぐもの

文化ホールが育てるもの、つなぐもの

文化ホールが育てる若手芸術家たち

石丸由佳さん

新潟市出身のオルガニスト、石丸由佳さん。「りゅーとぴあ」のオルガン研修講座を2代目専属オルガニスト和田純子さんの下で修了。国内・国外で数々の賞を受賞し、現在はヨーロッパを中心に精力的に演奏活動を行っている。

 次世代の芸術家や観覧者(鑑賞者)を育てるのも、文化ホールの大きな役割だ。そのなかでも、充実した専門設備を持つ「りゅーとぴあ」は特に意欲的な活動を行っている。前編(10月15日掲載)で紹介した演劇スタジオキッズコース「APRICOT」は昨年10周年を迎え、女優やタレント、テレビアナウンサーとして巣立って行った卒業生もいる。

 「新潟市ジュニア音楽教室」からはプロの奏者や指導者を輩出。「オルガン研修講座」を修了した石丸由佳さんは2010年に第22回シャルトル国際オルガンコンクールで優勝。現在はヨーロッパを中心に演奏活動を続けている。

 観覧者を育てるという意味では、「バックステージツアー」が興味深い。年2回行われるこのツアーでは、普段見ることのできない楽屋や舞台裏、さまざまなホールの機能などが体験できる。「劇場ってどんなとこ?」という素朴な疑問に応え、知識と興味を高めるのに役に立つ。

 同館では他に「わくわくキッズコンサート」を開催。これは新潟市の全ての小学5年生に、ホールで東京交響楽団の演奏を聴いてもらおうというもので、「最高の環境で一流の音楽を生で体験してもらうことによって、芸術の素晴らしさ、音楽の楽しさを知ってもらう」という思いが込められている。
 

県民参加型オペラ「てかがみ」が残したもの

 新潟県文化振興財団が21世紀に向けて企画した新潟センチュリーオペラ「てかがみ」という作品がある。題材となる新潟の人・物・事を全国から公募し、松代に伝わる「松山鏡」や長岡空襲などをストーリーに盛り込んだこのオペラは、県ゆかりの声楽家を中心に市民の合唱団を交え県内各地で上演され、2012年にも再演されている。このオペラを経験した人たちの中から、独自の動きが立ちあがった。南魚沼市を拠点にするオペラ合唱団「うおぬまLirica」、上越の「上越市民オペラ」、新潟市の「新潟オペラ合唱団」。たった1つのオペラが種をまき、それが各地で芽を吹いた。いつしか新潟は「オペラの町」と言われるときが来るかもしれない。

オペラ「てかがみ」2012年新潟公演の様子

「てかがみ」は語り継いでいくことの大切さや、人と人のつながりの重さを描いた作品。
初演から10年が経った今でも色あせることのない大切なメッセージを伝えてくれる。
オペラ「てかがみ」2012年新潟公演/photo:Arnold Groeschel

文化ホールが歴史をつなぐ

 今年の10月にオープンした新潟市江南区文化会館では、オープニングイベントとして歌舞劇「亀田郷龍神伝」が披露された。亀田郷開拓の歴史を、川の氾濫を引き起こす竜の神を村人たちが退治するというストーリーにのせた舞台には、郷土の歴史を後世に残したいという市民の願いが込められている。

 また、魚沼市小出郷文化会館ではかつて盛んだった地芝居(農村歌舞伎)を、市民とともに50年ぶりに復活。「越後魚沼干溝歌舞伎」として、今年の12月には10周年記念公演が開催される。

 そのほか、失われかけた越後瞽女(ごぜ)文化を残そうという市民の取り組みにも、地元の文化ホールは積極的に関わっている。長岡瞽女ゆかりの地にある長岡リリックホールでは、市民企画公募事業として、「越後長岡語りの世界」と題し、瞽女の「唄語り」に光を当てたイベントを実施した。また、高田瞽女ゆかりの上越市では、瞽女の来訪を心待ちにする山里の様子を、方言を交えて描いた市民創作劇「高田瞽女唄芝居-瞽女待つ山里-」が上越文化会館で上演され、地域の文化の再発見と伝承に役割を果たしている。

 文化ホールは単なる「劇場」ではない。歴史をつなぎ、未来へと継いでいく場でもある。そんな見方で足を運べば、きっと新しい「宝もの」が発見できるに違いない。
 
 

参考文献およびホームページ

 ラ・フォル・ジュルネ新潟「熱狂の日」音楽祭2012公式ウェブサイト
 
 新潟オペラ合唱団《かんてぃあ~も》公式サイト
 
 上越市民オペラ
 
 オペラ合唱団“うおぬまLirica”OFFICIAL SITE
 
 新潟文化祭
 
 越後魚沼干溝歌舞伎
 
 ▷ 新潟市報道資料(平成24年10月16日付)
 

 

file-58 文化ホールに行こう!:後編 県立図書館おすすめ関連書籍

県立図書館おすすめ関連書籍

「もっと詳しく知りたい!」、「じっくり読みたい!」という方、こちらの関連書籍はいかがでしょうか。以下で紹介しました書籍は、新潟県立図書館で読むことができます。貸し出しも可能です。ぜひ、県立図書館へ足をお運び下さい。

▷『舞台を観る眼』

(渡辺保著/角川学芸出版/2008年)請求記号:770/W46
 本書はまず、「白洲正子の思い出」と題し、白洲正子と能、一緒に旅をしてわかったその生き方などがつづられています。また、三島由紀夫の戯曲、折口信夫の芸能研究、著者が観賞した数々の演劇について書かれています。
 演劇評論家として著者が語る舞台のジャンルは幅広く、古典芸能、現代劇、ミュージカルなど様々です。本書を読むと舞台の奥深さを感じるとともに、劇場に足を運んで、現場の空気を感じながら作品を観てみたくなるのではないでしょうか。
     

▷『舞台の神に愛される男たち』

(関容子著/講談社/2012年)請求記号:772/Se24
 柄本明、笹野高史、すまけい、平幹二朗、山崎努、加藤武、笈田ヨシ、加藤健一、坂東三津五郎、白井晃、奥田瑛二、山田太一、横内謙介の13人へのインタビューがつづられています。
 「語り手は一流揃いの俳優、劇作家。じつに活き活きと再現してくださって、これも本当にぜいたくなことでした。」(あとがきより)と著者が言うとおり、それぞれが、自らの語り口で振り返る過去、仲間や先輩、演劇論などからは十人十色の個性が伝わってきます。
     

▷『名作バレエ50鑑賞入門』

(渡辺真弓著/世界文化社/2012年)請求記号:くらし769/W46

▷『知識ゼロからのミュ-ジカル入門』

(塩田明弘著/幻冬舎/2009年)請求記号:くらし775/Sh72

▷『双葉社ス-パ-ムック 歌舞伎がわかる本』

(双葉社/2012年)請求記号:くらし774/Ka11
 「舞台」と一言で言っても、そこで演じられるものは様々です。こちらの4冊はいずれも、代表作のあらすじや解説がイラスト・写真とともに紹介されており、入門書としておすすめです。また、基本的な知識も載っていますので、舞台を観る前に知っているとより一層楽しめるのではないでしょうか。

ご不明の点がありましたら、こちらへお問い合わせください。
(025)284-6001(代表)
(025)284-6824(貸出延長・調査相談)
新潟県立図書館 http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/

 

前の記事
一覧へ戻る
次の記事