file-162 新潟の海岸線と海水浴場~変化に富んだ多様な海岸線を眺める~(後編)
前編では新潟の海の成り立ちと、特徴のある海岸を見てきましたが、後編では海水浴場の歴史を見ていきましょう。新潟の海には日本の海水浴場の歴史を語る上で重要な場所がありました。
日本海側で初めて海水浴が行われた「柏崎の海水浴場」
柏崎市には現在42㎞の長い海岸線に15か所の海水浴場があります。今では夏の行楽の代名詞となっている海水浴ですが、日本海側で最初に海水浴が始まったのは柏崎の海水浴場と言われています。明治21年(1888)5月、陸軍の軍医総監だった松本順が柏崎の病院に滞在中、海水浴の医学的効能を説いたことが始まりとされています。ちなみに、松本軍医総監は、明治18年(1885)に日本で最初の海水浴場となる大磯海水浴場(神奈川県大磯町)を開設したことでも知られています。そしてこれまで海水浴を知らなかった人々が、夏の暑い日に海へ入って泳いでいたところ、冬に風邪を引かなくなったなどの話が広がり、塩湯治と称して海水浴をする人が急増したといいます。
さらに、明治31年(1898)に北越鉄道が開通すると、遠く県外からも海水浴に訪れる人が増えていき、新潟を代表する海水浴場へと発展していきます。特に石地海水浴場は遠浅の地形が特徴的で、家族連れなど多くの人が海水浴を楽しんでいます。令和2年(2020)に市が計測したところ、海岸から35mの沖合で水深50㎝、50mの沖合でも水深わずか70㎝でした。
鯨波海水浴場(柏崎市)
石地海水浴場(柏崎市) 写真提供/柏崎市役所
明治時代後半に海水浴客で賑わう鯨波海水浴場(柏崎市) 写真提供/柏崎市立博物館
日本屈指の透明度を誇る「笹川海水浴場」
国の名勝及び天然記念物に指定されている「笹川流(ながれ)」のほぼ中央、その名の由来となっている集落にあるのが笹川海水浴場です。源義経の伝説が残る「君戻し岩」や「舞子岩」など、荒波の浸蝕でできた奇岩に囲まれた横幅100mほどの砂浜には、県外からも多くの海水浴客が訪れます。海水浴はもちろんのこと、すぐ近くの桑川漁港では「笹川流れ観光汽船」が遊覧船を運航しており、日本屈指の透明度を誇る笹川流れを遊覧しながら、悠久の時を経て自然が造り出した奇岩、絶壁、洞穴など、雄大な造形美を間近で見ることができます。
笹川流海水浴場(村上市)
ヒスイも流れ着く砂利浜「糸魚川海水浴場」
新潟県の最西端に位置する糸魚川市には、海岸にたくさんの石が転がる糸魚川海水浴場があります。糸魚川‐静岡構造線を境に東西で大きく地質が異なる糸魚川は、多様な種類の岩石からなる山々が海岸に広がる様々な種類の石の起源になっています。小滝川ヒスイ峡、青海川ヒスイ峡から運ばれ流れ着いたヒスイの欠片を海岸でも探すことができるため、通称「ヒスイ海岸」の愛称でも親しまれています。
糸魚川海水浴場(糸魚川市)
今年の夏も水質が良好な新潟の海へ出かけよう
令和5年(2023)6月、新潟県が主な海水浴場の水質調査結果を発表しました。今回調査を実施した県内51か所の海水浴場において、全てが海水浴に適する良好な水質判定でした。県内で最も良好な水質判定だったのは柏崎市の鯨波、佐渡市の二ツ亀、聖籠町の網代浜など32か所の海水浴場で、改めて新潟県の海水浴場の水質の良さが証明されました。今年の夏は綺麗な新潟の海を訪れてみてはいかがでしょうか。
掲載日:2023/8/15
【取材協力】
柏崎市産業振興部商業観光課
柏崎市総合企画部元気発信課
柏崎市立博物館
糸魚川市商工観光課ジオパーク推進室
フォッサマグナミュージアム
村上市山北支所産業建設課産業観光室
【参考】
file-87 ヒスイと世界ジオパーク
file-26 file-113 大地の恵み~ジオパークと糸魚川の温泉~(前編)
file-28 file-113 大地の恵み~ジオパークと糸魚川の温泉~(後編)