3月18日(土)から県立自然科学館で春の特別展「PIECE OF PEACE『レゴ®ブロック』で作った世界遺産展 PART-3」が開催され、連日多くの来場者が県内外から訪れています。世界遺産は、遺跡、景観、自然など人類が過去から大切に引き継いできた、未来に残したい「たからもの」。この特別展の入場料とグッズの売り上げの一部は、日本ユネスコ協会連盟に寄付されます。
会場入口にレゴ®ブロックで再現された「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」(エジプト・アラブ共和国)のヌビア像。歴史的価値のある世界の遺跡や建築物、自然を国際的な組織運営で守っていこうという流れは、1960年にヌビア遺跡がアスワン・ハイダムの建設によって水没の危機にさらされた際、ユネスコが世界各国に協力を呼びかけたことから始まりました。1972年には世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)が成立。本展は2012年世界遺産条約採択40周年を記念して立ち上がった全国巡回展の一環として開催されています。
本展の寄付金は、「アンコールの石造建造物群」(カンボジア王国)の中の一つ、バイヨン寺院のシンハ像とナーガ像の修復作業に充てられます。11~15世紀のクメール王朝の栄華を今に伝え、プノンペンの北西、トンレサップ湖の北に広がる旧都は今、大小700に及ぶ遺跡が荒廃し崩壊の危機に直面しています。
まずは日本のものを見ていきましょう。日本で最初の世界遺産は、1993年の「法隆寺地域の仏教建造物」など4件。翌年に登録されたのが、16社寺と1城で構成された「古都京都の文化財」(京都市、宇治市、大津市)です。その一つで京都を代表する建造物の金閣寺は、世界中から訪れる観光客を魅了しています。
金閣寺の隣には厳島神社(広島県)が展示されています。瀬戸内海に浮かぶ厳島(通称:宮島)にある厳島神社が世界遺産に登録されたのは1996年です。宮島は太古から信仰の対象とされ、平清盛時代に全盛を極めました。島のシンボル「大鳥居」の実物の高さは、16.6m、柱間は10.9m。高さは奈良の大仏様に匹敵するそうです。日没から深夜まではライトアップされ、幻想的な雰囲気を醸し出しているとか。ぜひ、宮島に行って本物を見てみたいですね。
厳島神社の大鳥居の向こうに白と緑の大きな作品が見えます。何でしょう? 富士山です!日本最高峰の名山、富士山は、関連する文化財群とともに「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」(静岡県、山梨県)として、2013年に世界遺産に登録。自然遺産ではなく、文化遺産としての登録で話題になりました。霊山として知られ、人をひきつけてやまないその姿は、葛飾北斎や横山大観等、多くの描き手によって浮世絵や日本画に描かれてきました。
ここからは、アジア、南米、ヨーロッパの順に、代表的な世界遺産をご紹介します。 5千年の歴史を誇る中国には、万里の長城やシルクロードなど世界遺産が50件もあり、イタリアに次いで2番目に多く世界遺産を有しています。7つの自然保護区と9つの自然公園からなる「四川ジャイアントパンダ保護区群」は中国四川省の山奥にあり、9,245平方kmの敷地にパンダのほかユキヒョウやウンピョウなどの絶滅危惧種が保護されています。
アジアからもう1件、印象に残った建造物をご紹介します。ヒンドゥー教と仏教が混在し、歴史があり芸術的にも優れた記念碑や建物が数多く存在するネパール最大の盆地「カトマンズの谷」。その一部で、最古の仏教寺院とも言われる丘の上に建つスワヤンブナート寺院です。中央には南アジア最大級の仏塔がそびえ、カトマンズを象徴する景観をつくっています。
次は南米に回ってみましょう。イースター島と呼ばれる南太平洋上の島にある「ラパ・ヌイ国立公園」(チリ共和国)。日本でもおなじみのモアイ像は、この島に移住してきたポリネシア人によって建てられたそうです。高さ2~20m、最大重量50tもある巨大なモアイ像は、これまでに約1,000体が発見されています。世界の最果てと言われるイースター島にはまだまだ解明されていない謎があるようです。
南米の中でも世界遺産の宝庫と言えるペルー共和国。その南部、標高2,350mの尾根にある都市遺跡「マチュ・ピチュの歴史保護区」は、周囲の広大な自然と合わせて世界複合遺産として登録。宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」のモデルとしても知られています。
展示作品の中で最も高さがあり、会場内でひときわ目を引くのが、スペインの建築家「アントニ・ガウディの作品群」の一つ、サグラダ・ファミリアです。本展を紹介するポスターのメインビジュアルにもなっている大作です。実物の方は、ガウディ没後100周年にあたる2026年の完成を目指して、急ピッチで作業が進められているそうです。
フランスで最も有名な巡礼地といえば、16世紀に完成したモン-サン-ミシェルです。ノルマンディー地方コタンタン半島の小島にある「モン-サン-ミシェルとその湾」(フランス共和国)は1995年から行われていた環境整備が2015年に完了し、本来の美しい姿を見せています。
最後に旧ロシア帝国の時代から国の中枢の機能を持ち続けている「モスクワのクレムリンと赤の広場」(ロシア)をご紹介します。クレムリンは城塞(お城)を意味し、20の城門を備えた広大な敷地に多くの宮殿や聖堂が建てられています。クレムリンに隣接する赤の広場には、ロシア正教会の大聖堂、聖ヴァシーリー聖堂(聖ワシリイ大聖堂)が建ち、中央の主聖堂の周りを8つの小聖堂が囲む独特の外観は、モスクワのシンボルと言われています。
本物の聖ヴァシーリー聖堂は夜になるとライトアップされ、赤の広場にまるで陶器のような美しい姿を現します。モスクワへ出かけたらぜひ見ておきたい世界遺産です。
会場の一角では、来場者参加企画として「みんなで作るPEACE!未来に残したい新潟のたからもの!!」が開催されていました。参加者は白いレゴ®ブロックを自由に組み合わせ、思い思いの新潟のたからものを作っていきます。これを目当てに来場したのかと思うほどの盛況ぶりです。「世界遺産をテキストや映像だけで学ぶのは難しい。そういう意味では、レゴ®ブロックを使って再現された世界遺産というのはとてもおもしろいと思います。子どもたちの親御さんは30代・40代が中心。ちょうどレゴ®ブロックで育った世代なので、親子で会話をしながら一緒に楽しく学べます」と本展の広報を担当している県立自然科学館の百崎幸子さんは言います。
できあがった作品は新潟をかたどった専用のコーナーに展示され、未来の新潟に向けた一人ひとりのピースな想いを伝えていました。
新潟県では佐渡市が中心となり、「金を中心とする佐渡鉱山の遺跡群」の世界遺産登録を目指して活動中です。館内では、関連企画として佐渡金銀山の魅力を再発見する展示会も開催されています。このゴールデンウィークは県立自然科学館へ出かけて、世界遺産巡りをしてみてはいかがでしょう。
春の特別展
世界遺産条約採択40周年記念
世界遺産チャリティーアートエキジビション
「PIECE OF PEACE-『レゴ®ブロック』で作った世界遺産展 PART-3-」
会場:新潟県立自然科学館
1F特別展示室
期間:~5月7日(日) ※4月24日(月)は休館
時間:平日9:30~16:30 土日祝日9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
特別展入場料:高校生以上600円、小・中学生400円
※別途、入館料:高校生以上570円、小・中学生100円(未就学児無料)
関連リンク
新潟県立自然科学館
新潟市中央区女池南3-1-1
電話025-283-3331