第35回 Mozu アートワーク 〜ちいさなひみつのせかい〜リポート

新潟県立自然科学館で開催されている、春の特別展「Mozu アートワーク 〜ちいさなひみつのせかい〜」に行ってきました。展示されているのは、コマ撮りアニメ、ミニチュア、錯覚アートという3つの分野で活動するマルチアーティストMozu(モズ)が作り出す不思議な作品の数々。今回は作品だけでなく絵コンテや設計図など、制作の裏側が垣間見える資料も見ることができます。早速、「ちいさなひみつのせかい」にお邪魔してみましょう。

入り口の手前にあるパネルには作者のMozuさんのサイン(写真右)と、Neggicoの2人(Nao☆さん、Kaedeさん)のサイン(写真左)が。作者のサインは、開催初日に来場した際に書かれたものなのだそう。

まずは、ミニチュア展示のコーナーです。もともとプラモデルが好きだったという作者。プラモデル自体から、背景のジオラマへと興味が移っていったことがミニチュア作品制作を始めるきっかけになりました。

小さなショーケースが間隔をあけて並んでいる会場内。ミニチュア作品は、正面からだけでなく、横、後ろ、真上からも覗くことができるようになっています。

初めての作品を制作したのは、なんと高校1年生の時。ご自身の部屋をモチーフにした『自分の部屋』という作品です。翌年、この作品を撮影してSNSに投稿したところ、「本物にしか見えない」と大きな反響を呼び、テレビやメディアからの取材を受けて一躍有名に。ここから、彼の作家としての人生が始まりました。

こちらが作者の自室を忠実に再現した『自分の部屋』。よ〜く見てみると、今回の特別展のポスターが飾られているという遊び心のある仕掛けも。

ミニチュア作品コーナーには全部で7つの作品が展示されていますが、そのなかでちょっと変わった作品を一つご紹介します。下の写真をご覧ください。

何のことはない、今回の展示作品を見るお客さんの様子…ではありませんよ。

こちらは『美術館』という作品。「何でも巨大になったらアート作品のようになるのでは」という発想からつくられた、極小の美術館の一室です。先ほどの画像では、原寸大のルービックキューブが展示品として置かれていました。普段の生活で見ているさまざまなものが、この極小美術館に置かれると相対的に巨大に見えるという不思議な作品です。

ルービックキューブの他にも、さくらんぼや野球ボールが置かれた様子も展示されています。

次のコーナーに向かう通路では、『一筆書』と題されたイラスト作品が楽しめます。さまざまな動物のシルエットが描かれているのですが、それぞれつながった一本の線で形作られているのだそう。どこから描き始めて、どこで描き終わっているのか、形作られる過程を想像しながら見るのも面白いですね。

最初から最後まで同じ色のペンで描かれていますが、筆圧や模様の細かさで色の濃淡が変わって見えるのも味わい深いポイント。

通路の先には、こびとシリーズを展示したコーナーがあります。「自分が小さくなったら楽しいだろうな」という、作者の幼い頃の空想を形にしたミニチュア作品を通して、もしも、自分の部屋にこびとが住んでいたら――そんな想像の世界を楽しむことができます。

部屋の中にこびとが運転する電車が走っていたら、どんな路線があるだろう、と考えて作られた作品『こびとの駅』。この画像では見えませんが、真横から見ると中に線路も作られていることが分かります。

なかでも注目してほしいのが、こびとシリーズ第一弾作品『こびとの階段』。過去のリアルすぎる作品では小ささが伝わりにくかったため、一瞬でサイズ感を伝えるためにコンセントの横に小さな世界を作り始めた最初の作品です。

当初は実家の壁に穴を開けて制作する予定でしたが、家族の反対を受けて壁ごと制作したのだそう。作品紹介のプレートには、こうした裏話が書かれているので、すみずみまで要チェックです。

今回の企画展では、『こびとの階段』を人間大の大きさに拡大した撮影スポットが用意されています。こびとの目線から見たコンセントの大きさにびっくりすると同時に、改めて見比べてみてミニチュア作品の精巧さに驚かされます。

ミニチュア作品を見た後だと、トリックアートの中に入り込んだような不思議な感覚になります。

Twitterで68万いいねと大反響のあった『こびとの秘密基地』も、実物を見ることができます。裏側には部屋のモニター機器を光らせるための電子部品があるのですが、よく見ると小さな現場作業員が。作品の裏側にも、別のミニチュアな世界が広がっていました。

コンパクトな空間に必要最低限の物資を詰め込んだという作者の「理想の空間」。

最後に、これまのでミニチュア作品とは趣の異なるアートをご紹介。目の錯覚を利用したトリックラクガキです。正面から見ると、どこか不自然なイラスト…。ですが、各作品の脇に記された赤い矢印の向きから撮影すると、描かれたイラストが立体的に見えるという参加型アートです。

正面から見ると折れ曲がった電車も…

この角度から見ると、立体的に!トリックアートを「そうはならない角度」からも実際に見ることができるのは、まさに実物が飾られた企画展ならではの醍醐味です。

角度を変えて見るトリックアート以外にも、一見何がすごいのか分からないようなリアルなイラスト作品も展示されています。例えば下の作品は、なにかの計算をしている数学のノート。計算を間違えたのか、勢いよく消しゴムで消して、消しかすが散乱しています。作品のタイトルは『消しかす』。ということは…?

なんと、消しかすも描かれているんです!肉眼で見ても本物の消しかすにしか見えないほどリアル。ですが、本当に消しかすも「絵」なんです。

撮影禁止のためお見せできないのですが、この他にもアイデアノートや、学生時代に作者が卒業制作で作ったアニメーションの絵コンテなども展示されています。作者の言葉を借りると、「『可愛らしさ』や『緻密さ』、近くで見た時の『ここに入ってみたい』と思う感覚など、ミニチュア特有の魅力というのは直接見ることでしか味わえないもの」。この機会にぜひ肉眼で、じっくり見て、「ちいさなひみつのせかい」の魅力を味わってみてください。

2022年春の特別展
「Mozu アートワーク 〜ちいさなひみつのせかい〜」
会場:新潟県立自然科学館 1F特別展示室
期間:~5月8日(日)
時間:平日9:30~16:30 土日祝日9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
◆入館券付きセット料金:高校生以上1,380円、小・中学生500円
◆特別展入場料:高校生以上800円、小・中学生400円
別途、入館料:高校生以上580円、小・中学生100円(未就学児無料)
平日限定入館無料制度あり:小・中学生、60歳以上※、未就学児同伴の保護者(個人利用のご家族の1名まで)※
※身分証明書の提示が必要

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新潟県立自然科学館
新潟市中央区女池南3-1-1
電話025-283-3331

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