file-148 落語は新潟で楽しもう!(前編)
時も場も超えて、心に響く落語
実は新潟県民は落語が好き。プロモーターによると、落語の口演回数が北陸エリアにおいては多く、毎回満席。観客の反応がいいと落語家にも好評で、会場は大いに盛り上がります。変わらずに愛され、また、新たなアレンジで活かされる落語の魅力を紐解きます。
「死神」が令和によみがえった
また、最近では、落語をモチーフとして生かしたり、落語家が登場したりするドラマや音楽も登場し、存在感をアピール。たとえば、宮藤官九郎さん脚本のドラマ「タイガー&ドラゴン」、NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」、雲田はるこさんのコミック「昭和元禄落語心中」のアニメ化やドラマ化、記憶に新しいところでは、NHK大河ドラマ「いだてん」など、それまで落語を知らなかった人たちが「落語」を知り、好きになるきっかけにもなっています。
新潟生まれの落語家ふたり
長岡高校3年生、体育祭の集合写真。はちまきを巻いたメガネ男子が、若き日の入船亭扇辰さん。
入船亭扇辰さん。冬の噺「雪とん」で、雪の降る中を歩く様子。
こん平さんと同じ「落語協会」に所属する入船亭扇辰(いりふねてい せんたつ)さんも新潟県長岡市の出身です。「子どものころから落語が好きで、六代目三遊亭圓生(えんしょう)に憧れてましてね、高校・大学では落語研究会に入りました」。その後、平成元年(1989)に九代目入船亭扇橋(せんきょう)に入門し、プロの道を歩き出しました。「落語の演目は200年とか300年の長い時間の中でふるいにかけられ残っているものですから、全てがおもしろいですよ」と扇辰さん。「だから、クラシックは古いと決めてしまわずに、聴いていただきたいですね。中には昔の風習も出てくるので話す方は知識が必要ですが、聴いて笑う分には難しくはありませんから」
「たとえば、新潟ゆかりの『松山鏡』(まつやまかがみ)という古典落語があります」と扇辰さん。舞台は、江戸時代の越後・松山村。まだ誰も鏡を見たことがない田舎として描かれています。親孝行を褒められる「いい話」が、ふたつの勘違いで笑い話に。はるか昔の話なのですが、知識や下調べなどは必要なく、聞けば笑えること間違いなし。扇辰さんの言葉通り、構える必要はありません。
新潟の観客は「わかってる」
11月には地元長岡で独演会を開催予定です。
毎月のように、有名な師匠の口演が新潟で開催されています。
「この日のために描き下ろした新作ネタのみ」を楽しめる若手落語家の口演企画も新潟で楽しめます。
新潟での口演やラジオへの出演も多い扇辰さん。「地元の皆さんが、扇辰は新潟出身だということで、お仕事をくださるんです、ありがたいですね」と、にっこり。「以前は、新潟のお客さんはおとなしいと言われていましたが、最近は反応がいいんですよ」と、新潟の客席の変化を感じていました。
新潟を含む北陸エリアで落語イベントを多く主催するサンライズプロモーション北陸の江部寛さんも、新潟に招いた落語家から同じことを聞いていました。「落語家さんの中には、マクラ(落語の導入部)の間にお客様の笑いが3回揃ったら、大作を仕掛けるという人がいます。お客様のノリを図るということです。新潟ではその確率が高いんだそうです。また、平成20年代からしばしば来ていただいている、ある師匠も『数年くらい前から、新潟のお客さんの質の高さ、熱さを感じるようになった』とおっしゃいます」
その背景にあるのは、観客が生の落語に触れる機会が増えたことではないかと江部さんは考えています。同社が落語口演を手掛け始めたのは、今から14、5年前、柳家花禄(やなぎや かろく)がスーツ姿で話す「同時代落語」に衝撃を受けたのがきっかけでした。その後、立川志の輔の新作落語「歓喜の歌」、立川談春(たてかわ だんしゅん)のエッセイ「赤めだか」に社員一同が感動し、落語口演実現へ拍車がかかり、さらに桂文珍(かつら ぶんちん)、柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)など多くの落語家を招聘。「ここ5、6年で口演数は一気に増え、チケットの売れ行きも上々。リピーターが多いのは新潟の特徴ですね」
後編では、新潟で気軽に楽しめる落語について紹介します。
扇辰さんは落語家3人(左・橘家文蔵さん、右・柳家小せんさん)で結成したバンド「三K辰文舎」での活動もしています。
掲載日:2021/10/4
■ 取材協力
江部寛さん/サンライズプロモーション北陸
入船亭扇辰さん/落語家
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