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file-155 新潟で縄文のココロに触れる(前編)

  

自然のテンポで生きた人々


 1万年という長きにわたり、縄文時代の人々は戦ったり奪ったりすることなく、山や川の恵みを享受しながら自然と共生して暮らしていました。縄文の暮らしの跡が数多く残る新潟で縄文時代の人々のココロを読み解きます。

日本の自然が1万年を支えた

自然の恵みをおいしく調理

佐藤さん

「自然と共生していた縄文文化を見直そうという気持ちを『JOMON』と名づけて、津南町からJOMONの風を起こしていきたいと思っています」/佐藤さん

 氷河時代が終わり徐々に温暖な気候になった紀元前約1万5000年以降の日本で、獲物を追いかけて移動していた人々がムラを作り定住するようになりました。これが縄文時代の始まりです。中魚沼郡津南町にある「農と縄文の体験実習館 なじょもん」で、縄文研究者の佐藤雅一さんに縄文時代について伺いました。佐藤さんは考古学・地学・民俗学などを融合させた複合的な観点から、縄文の人々の思いにアプローチしています。
「世界の四大文明の中でも、メソポタミア文明は高度な数学や天文学を背景に国家を形成し、奴隷制が敷かれ、人間本位の活動によって自然破壊が進み約千年で滅びました。一方、縄文時代は争うことなく1万年以上も続いていますから、そのすごさは明らかです。それだけ長く続いたのは、日本の豊かな大地、自然の恵みによるところが大きいと思います」

 

「なじょもん」畑

津南町の「農と縄文の体験実習館 なじょもん」では、縄文時代の幻の編み物・アンギンの材料であるカラムシ(麻の一種)、古代の雑穀などを栽培し、縄文を体感できるイベントを開催。

 四季があり湿潤な日本、特に大河の恩恵を受けた新潟では、クリやトチノミなどの木の実、きのこ、山菜が豊富で、川には鮭が、山にはイノシシやシカもいる――それら豊富な食材を、石器等で調達し、土器を使って調理しました。土器では「煮る」ことができます。縄文時代以前の生食か蒸すか焼くかの単品調理と違い、土器ではいくつかの食材を一緒に煮ることができ、栄養のバランスも良くなりカロリーもアップ。体力や健康の増進につながり、行動も活発化したと考えられます。

 

FACE TO FACEのコミュニケーション

竪穴住居 内部

出入口は小さく、窓はない場合もあるので、竪穴住居の内部は日中でも薄暗い。それだけに、炉でおこされていた火は縄文の人々にとって大切な存在だったはず。

「もう一点、注目すべきは、人と人の関係性です。竪穴住居は円形の広場をぐるりと囲んで建てられていました。出入口は広場側にあるから、一歩外に出るとご近所とあいさつしたりおしゃべりしたり、FACE TO FACEのコミュニケ―ションをとっていたと考えられます。祭祀や狩りについて相談する、困難なことがあれば力を合わせて克服するという関係性ができていたと思います」
 広場を囲む環状集落は縄文時代の特徴のひとつです。実際に、津南町にある沖ノ原遺跡では、直径30mの円形広場を49棟の竪穴住居跡や3棟の大型住居跡が囲む、環状集落跡が発掘されています。
 そして、FACE TO FACEのコミュニケ―ションは住居の中でも。「住居の中央には、灯りであり、暖房機であり、調理用のコンロにもなる炉が設けられて、家族はこれを囲んで過ごしていました。囲炉裏の原型のようなものですね」

 

「なじょもん」施設

「なじょもん」のある津南町は、新潟県南西部にあり、全域が苗場山麓ジオパークに認定されている。豊かな森林や日本最大級の河岸段丘、夏のひまわり畑などが楽しめる。

「なじょもん」や十日町市の笹山遺跡では復元された竪穴住居の中で、縄文の暮らしや数千年前の家族団らんの雰囲気を感じることができます。

 

「なじょもん」縄文ムラ

「なじょもん」では開館時から次々と竪穴住居が建てられ、現在は6棟の竪穴住居、体験棟、ものみ台ができあがり、縄文時代のムラを再現。タイムスリップした気分に浸れる。

 

ゆったりと過ぎる時間の中で

阿部さん

「遺跡で出土した約5万点のかけらの中で土器に復元されるのは、わずか10%くらい。発掘調査後の復元や整理には数年かかることもあるんですよ」/阿部さん

阿部さん体験

実際の火焔型土器を見ながら行う土器チョコレート作り体験は子どもに大人気のイベント。十日町市の笹山縄文館などで開催/伊乎乃(いおの)の里・縄文サポートクラブ

土器の破片

土器チョコレート作りに使用する型の元になっているのは、本物の火焔型土器のかけら。実際の文様を忠実に再現したチョコレートを作ることができる。/伊乎乃(いおの)の里・縄文サポートクラブ

「縄文時代の人々がうらやましいです」と言うのは、十日町市の市民グループ「伊乎乃(いおの)の里・縄文サポートクラブ」の阿部美記子さんです。遺跡調査に関わったことをきっかけに縄文時代に興味を持ち、今は縄文をテーマに講習会やイベントなどを開催しています。
「通信手段がなく、人の移動も多くなかった縄文時代では、情報といえば、自分が見たことや聞いたこと、よく知っているムラの人が言うことくらい。入手できる情報は少ないけれど、すべてが信頼できる。情報や他の人の評価があふれて、どれを信じたらいいのかわからなくなる現代と、どちらがいいのだろうと考えてしまいます。私は、情報が少ないことは悪いことじゃないと思うんですよ」
 阿部さんと同じように、佐藤さんも縄文時代の価値観を見習いたいと考えています。「今は何においても進化や変化を求めますが、進化ありきではなく、私は一度立ち止まって『どこまで進むのか』『なぜ変わるのか』を考える必要があると思います。『停滞』してはだめだとよく言われますが、停滞は大切なんです。ゆっくりと進んでいったからこそ、縄文時代は1万年続いた、持続可能な社会だったわけです」
 豊かな自然の中で、仲間と協力しながら生きていた縄文の人々。現代とは違う、あるいは現代にはなくなってしまった暮らし方や知恵や工夫が、今、注目を集めています。後編では、「伊乎乃(いおの)の里・縄文サポートクラブ」で阿部さんが行っている体験イベントをはじめ、令和時代に縄文の魅力を気軽に体感できるコンテンツを紹介します。

 

掲載日:2022/7/25

 

■ 取材協力
佐藤雅一さん/津南町教育委員会 ジオパーク推進室長(学芸員)
阿部美記子さん/伊乎乃(いおの)の里・縄文サポートクラブ 代表
農と縄文の体験実習館 なじょもん

 

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後編 → file-155 新潟で縄文のココロに触れる(後編)
新潟は縄文愛にあふれている

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