佐渡の伝統工芸を体験できる施設「相川技能伝承展示館」で無名異焼(むみょういやき)を体験しました。
陶芸体験には、「ロクロ」「手びねり」「名入れ」の3コースがありますが、人気があるのは「ロクロ」だそうです。早速私も「ロクロ」に挑戦してみたいと思います。
「無名異焼は、陶土に“無名異”と呼ばれる赤褐色をした土を使った陶器です。現在、私たちが手にする無名異焼が始まったのは、明治11年(1878)頃になります。無名異は粒子が細かく、焼くとギュッと締まるので、硬くて丈夫な陶器が生まれるんです」と其田代表。 佐渡で無名異が陶土として使われるようになったのは江戸時代後半。その当時、傷などに効能があるといわれ、止血剤として使われていた漢方薬に“無名異”と呼ばれるものがあり、この土にも同じ効能が認められたため“無名異”と名付けられたそうです。
ロクロ体験では、「水びき」という工程を行います。「良い器を作るには、正しい姿勢でロクロを回すことが大切です。まず浅く腰を掛け、足をレンガの上に置く。次に肩幅くらいに開いた膝に肘を着けてきちんと固定し、少し上から覗くようにしてロクロを回します」と説明しながら、其田代表が手本を見せてくれました。
陶土は、撹拌(かくはん)・ふるいにかけた後、土質のムラを取り除いたものを使っているそうです。焼いたときに土がギュッと締まるから硬くて丈夫。無名異焼が人気なのは、そういうところにもあるんですね。
陶土は塊のままだと、ロクロを回したときに中心が崩れてしまうので、そうならないように中心に陶土を据えます。佐渡ではこれを「芯(中心)出し」と言っているそうです。「一人前に芯出しができるようになるには、半年くらいは土を触らないと・・・」と其田代表。体験では時間も50分と限定されているため、芯出しは講師が担当します。
ロクロ体験というと、成形の途中で土が崩れないかと心配です。どんな点に注意すれば良いのでしょう。ポイントを其田代表に伺いました。「土を抵抗なくスムーズに回転させることが大切です。手が乾いていると回っている土に手が取られます。そうならないように水分のある泥で土の表面を触りながらコーティングして、常に滑りの良い状態を保っていきます」
「さあ、ロクロを回してみましょう」と其田代表。「最初に底の部分を作ります。小指の付け根で軽く土を抱えるように押さえて、遠心力で土が飛び出さないようにします。左手の親指は伸ばしたまま、真ん中をゆっくりグーッと押し、底から1センチくらいになったら、静かに離します。底を広げたければ、親指を手のひらの方に引きながら離します」
どうにか底ができ、ホッとしたのも束の間、「次はサイドを上に伸ばして、高さを出しましょう」と其田代表の声が続きます。 「両手の中指と薬指を使って、指のお腹で仕事をします。手の組み方がポイントで少し難しいですが、頑張ってやってみましょう。左手の中指と薬指の付け根の間に右手の親指を置いて、左手の親指を右手の親指に固定させます。そして、両手の中指、薬指のお腹を合わせます。人差し指と小指は立てずにまっすぐ伸ばします。この形です」と手本を見せてくれました。
ロクロを回しながら、土を伸ばして形を作っていきます。「左手を器の外側、右手は内側にして、お腹を合わせていた両手の中指と薬指で土を挟みながら下ろしていきます。左手の指を少し斜めにして、外側から内側に向けてゆっくり土を押します。押された土が、右手の中指・薬指にぶつかって上がってくるので、土の厚さを確認しながらそのままゆっくりと引き上げ、だんだん薄くなるように土を伸ばしていきます。口元まできたら、力を抜いて静かに開くようにして手を離します。これを繰り返して形を整えます」。其田代表の声に一段と熱がこもります。
高さが出せたら、今度はコップやカップなどイメージした形を作っていきます。「ビールコップのようにストレートなものは、両手で抱えてそのまま上に引き上げるだけ。丸みを出したい場合や口元を広げたい場合は、右手の中指と薬指で内側から外側に向けてゆっくり突き出すように押します。逆に搾りたい場合は、外側からゆっくり土を抱えるようにして内側に寄せます」。実際にロクロを回し、さまざまなパターンを見せていただきました。
「横から見て、だいたいの形が出来ていたら終了です」と其田代表。口元をナメシ皮で整え、コテで器の中をきれいにするなど、仕上げは講師がします。糸を使ってロクロ盤から作品を切り離して完成です。
手の組み方、まだまだぎこちなかったですが、次回はしっかりマスターして、チャレンジしたいと思います。其田代表ありがとうございました。
今回体験で訪れた北沢窯は、相川技能伝承展示館横の小さな橋を渡って1分ほどの所にあります。体験後には、特別にバックヤードを見学させていただきました。
体験で作られた器は、2~3日自然乾燥させてから、北沢窯の陶房で底を削り、再び乾燥させた後、きれいな布で表面を磨いてツヤを出します。これを「生磨き(なまみがき)」と言うそうです。その後、約1200度の高温の電気釜で焼いていきます。
私の作品もこうやって出来るんですね。
陶芸というと、緊張で張り詰めた中で求道者のようにロクロを一心に回すイメージがありましたが、ここ佐渡では、大地と会話をするような癒やしの時間が流れていました。佐渡に来たらぜひ、相川まで足を延ばして陶芸体験をしてみてはいかがでしょうか。
関連リンク
相川技能伝承展示館
新潟県佐渡市相川北沢町2
電話 0259-74-4313
北沢窯
新潟県佐渡市相川北沢町3-1
電話 0259-74-3280