
file-161 地域の思いを込め、冬を楽しむ新潟の雪まつり(後編)
「雪を友とし、雪を楽しむ」十日町雪まつり
十日町雪まつりは、誕生から70年以上もの間、受け継がれてきました。時代の変化とともに変容する雪まつりの姿と、大切にそして楽しみながら受け継ぐ人の思いとは。
市民が手づくりの雪像でもてなす「十日町雪まつり」
十日町雪まつりが始まったのは1950年。以来70年以上続く冬のビッグイベントとして全国に知られてきました。
市民が趣向を凝らし制作した雪の芸術作品(雪像)をはじめ、雪の巨大ステージを舞台に開催される、華やかな「きものショー」や「歌謡ショー」といった『雪上カーニバル』などを目当てに、新潟県内外から多くの来場者が十日町市に足を運びました。

2018年の第69回まで実施された「雪上カーニバル」。雪で作られた巨大なステージで多彩なショーが催されました。写真提供/十日町市博物館

十日町雪まつり実行委員会事務局長の樋口正彰さん。抱いているぬいぐるみは、十日町市の公式PRキャラクター「ネージュ」
「十日町雪まつり誕生のきっかけは『雪を友とし、雪を楽しむ』という地域住民の自発的な盛り上がりと、1947年に御巡幸された昭和天皇からの「雪国で何か明るい話題はないか」とのお言葉だったそうです。1950年2月4日・5日が初開催で、日本で最初に住民が主体となって行われた雪まつりとして、『現代雪まつり発祥の地』と呼ばれています」(樋口さん)
70年の歳月をかけて華やかなビッグイベントへと成長

第1回開催時に1位を受賞した雪像「農家の冬」。写真提供/十日町市博物館

十日町雪まつりでは、「きもの女王コンテスト」や「きものファッションショー」など、織物の町として知られる十日町ならではのイベントも実施されてきました。写真提供/十日町市博物館
市内各地に独自にイベントを開催する「雪まつりひろば」も誕生し、1980年代後半からは餅つきや犬ぞり、郷土芸能の披露やクロスカントリースキーなども取り入れられました。
また、コンテストにエントリーする大規模な雪像以外にも、個人や企業などがそれぞれ作った雪像や雪だるまが町中にあふれ「見る」だけに留まらない参加型の祭りへと進化していきました。
雪像作りから生まれる地域のコミュニケーション

「アウト・ドア・ファミリー4クラブ」の大島仁さん。「雪像を作っていると地域の枠を超えたつながりも生まれてきます」

コンパネを組んでその中に雪を入れるところから作業は始まります
「小正月のあたりに図案を出して、1月末に投雪機を使って雪を積み始めます。最初は賞とか関係なく、みんなでワイワイ作れるのが楽しくて参加していました。しかし、コンテストで受賞するとメンバーの家族も喜んでくれるし、見に来てくれる人も増えるので、力が入るようになりました」と大島さん。

県知事賞を受賞した「アウト・ドア・ファミリー4クラブ」の雪像「王家二千年の夢〜風の谷の物語〜」(2019年/第70回)

十日町雪まつり開催中止の年に大島さんたち有志が制作した作品「祈り」(2022年)
春への扉を開く祭りは、新たな時代へ

大勢の来場者で埋まる第74回十日町雪まつりの様子
1日のみの開催とし、大きな雪のステージ制作やアーティストによるイベントなどは行わないことにしました。その代わりに「雪を友とし、雪を楽しむ」という原点回帰を図り、雪に親しむ住民主体のイベントを目指したのです。

ファットバイクを使った雪上コースも出現

十日町市博物館TOPPAKU周辺の「TOPPAKUパーク」会場では「昔の雪遊びチャレンジ」や「ほんやらどう(かまくら)での民族衣装着用体験」など雪を楽しむコンテンツを提供

「おまつりひろば」の一つ、十日町駅西口の「西部ふれ愛ひろば」会場ではファッションショーなどのイベントを開催

「アウト・ドア・ファミリー4クラブ」の2023年の作品「-風の谷からロマンを求めて-2023新たな旅立ち」
樋口さんは、十日町雪まつりの存在を改めてこう表現します。「十日町の人たちにとって、雪まつりは厳しい冬を過ごす上での一つの節目なんです。雪まつりまで頑張ればこのあとの雪は大したことはない、雪まつりが終われば春が近いという思いがある。そういった背景も市民から親しみを持たれる祭りとなった理由の一つだと思います」
十日町雪まつりの情報はこちら(雪まつりホームページへリンク)
主要施設の一つ越後妻有里山現代美術館 MonET(モネ)では、2023年は「越後妻有 雪の様相 I」と題し、4組のアーティストが雪の魅力を再考するアート作品を制作展示しています(2023年1月14日〜3月12日開催)。抽象的かつ雪へのアプローチがそれぞれ異なる、だからこそ想像力を掻き立てられる、そんな作品たちを屋内外で鑑賞することができます。

中に入ることでもできる、銀色の無数のフィルムがきらめくオブジェ群「particles-粒子たち-(加藤ユウ)」

「はるかぜ(小松宏誠)」は和紙のモビールに桜餅のような美しい色が出現

雪に映える色鮮やかなアート作品。「近所のカバ湖(志村リョウ)」

雪原を滑走するバナナボートやスノーチューブは、大迫力!

地元産の餅米・こがねもちで作ったお餅は白とよもぎの2種類から選べます
雪国ならではの風土を全身で味わい、育まれてきた文化を楽しみに、あなたも雪原へ出かけてみませんか。
■ 取材協力
十日町雪まつり実行委員会事務局長/樋口正彰さん
アウト・ドア・ファミリー4クラブ/大島仁さん
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