file-60 にいがたで楽しむ絵本の世界~にいがたゆかりの絵本作家たち

  

にいがたゆかりの絵本作家たち

あの作品も! 新潟ゆかりの絵本作家を知ろう

でんせつの きょだいあんまんを はこべ

サトシンさんの近著『でんせつのきょだいあんまんをはこべ』(絵・よしなが こうたく 講談社の創作絵本)。アリたちの一大スペクタクル冒険活劇。突然空から降ってきたあんまんを巣に持ち帰るためアリたちは…。

 教科書でおなじみの児童文学『ごん狐』。この作品を、色鉛筆を用いた格調高い絵で再現した黒井 健さんの『ごんぎつね』は、’86年の発行からいまだに読み継がれている名作絵本だ。黒井さんは新潟市の出身で、イラストレーターから絵本の世界に入り、この作品で大きく飛躍した。ほかにも『手ぶくろを買いに』や『猫の事務所』など、作品数は200を超えるほどだ。

 新潟県出身のサトシンさんは、『うんこ!』(絵・西村敏雄)や『とこやにいったライオン』(絵・おくはらゆめ)などで知られる絵本作家。娘と遊んでいるうちに見つけたという親子遊び「おてて絵本」は、子どもの手のひらを絵本に見立てるというユニークな試みだ。従来の絵本の枠にとらわれない活動は、さまざまなメディアからも注目を集めている。

 『落語絵本シリーズ』で知られる川端 誠さんは上越市(旧高田市)出身。’82年にデビュー作『鳥の島』で「第5回絵本にっぽん賞」を受賞している。制作の裏話などのトークをはさんだ、自作絵本の開き読み「絵本ライブ」も精力的に行っている。

 新潟県からはほかにも第8回タリーズピクチャーブックアワード絵本大賞を受賞した嘉村靖子さん(『おばけのだっこ』)や、東日本大震災で被災した子どもをモデルにした絵本『しんちゃんのランドセル』のエイキミナコさん、『ゆきのひのラック』で注目を集めた原 婦実子さんなど、新しい才能も次々と生まれている。

新潟で絵本を作るということ

松岡達英さん

松岡達英さん・昭和19年5月5日長岡市生まれ。25歳でフリーとなり、以後40年間に渡り数々の自然を題材にした絵本や自然図鑑等の本を出版する。2012年9月には偕成社より『でんしゃはっしゃしまーす』を刊行。

『ぴょーん』

『ぴょーん』(ポプラ社刊)。科学絵本の第一人者・松岡達英さんが、子どもたちのために描いた作品。ページをめくるたびに、さまざまな生き物がぴょーん。

 長岡市生まれの松岡達英さんは、昆虫や植物などの自然をモチーフにしたイラストで知られる絵本作家。国内外をフィールドにした自然科学系の絵本は100冊を超えるという。松岡さんの正確な観察による描写は、小さい頃に駆け回った故郷の野や川が育んだものだ。長岡市にあるアトリエにお邪魔して、お話を聞いてみた。

 「小さい頃の僕の遊び場は栖吉川のほとりでした。昆虫や植物、水辺の生物など、さまざまな自然が常に身のまわりにある環境でした。観察に大事なのは、その対象に興味があるかどうかということです。小さい頃は誰でも自然に対して興味を持ちますが、高校生くらいから次第に遠ざかっていきますよね。けれど僕は大人になってもどんどんのめり込んでいった。トリバネアゲハという蝶にあこがれて、20代の終わりに2ヵ月間オーストラリアとニューギニアを旅しました。それを契機に描いた『すばらしい世界の自然』シリーズは厚生省(現・厚生労働省)児童福祉文化賞を受賞して、自分としてもスタートになった作品だと思います。いまもこうして長岡に住んでいますが、子どもの頃から親しんでいる場所なのでどこに行けばどんな生物がいるのか、全部わかります。むしろ大人になって知識が付いた今こそよくわかる。故郷の野山での遊びが、僕の仕事の原動力になっています」。

 新潟の豊かな自然が育んだ松岡さんの作品世界。県内では他にも黒井 健さんが海沿いの国道を舞台にした『月夜のバス』(作・杉 みき子・新潟県生まれ)を発表するなど、新潟ならではの自然をモチーフにした絵本世界はこれからも広がっていくことだろう。

 次のページからは、そんな絵本の世界をより楽しむための、さまざまな取り組みを紹介する。

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にいがたで楽しむ絵本の世界

参加しよう! 絵本の世界

福島はるおさん

2005年から始めた読み聞かせが、昨年で500回以上に達した福島さん。2012年3月に絵本講師33名との共著書籍「続・絵本講師の本棚から」を出版した。
http://blog.livedoor.jp/fukuchan117/
http://blue.ap.teacup.com/fukuchan117/

 「絵本は大人も子どもも楽しめる世界です」。そう語るのは、絵本講師にして読み聞かせ1,000回を目標に活動を続けている福島はるおさん。保育園や公民館、図書館などで行う「絵本らいぶ」は、時には楽器なども加わり1回90分にも及ぶこともあるという。「『読んであげる』というスタンスでは聞き手もすぐに飽きてしまいます。大切なのは一緒に楽しむということ」。読み聞かせでは、子どもだけでなく一緒に訪れる保護者の反応にも気を使うという。時には意図的に話を「ふる」こともある。「絵本はふれあいのツールだと思うんです。こうして読み聞かせをしていますが、これはあくまでも絵本の世界に興味をもってもらうためのもの。本当は親が子どもに読むのが理想的です。読むのが上手いとか下手だとかは全く関係ありません。大好きなお父さん、お母さんが自分のために時間を使ってくれる。それだけでも子どもは嬉しいもの。寝る前の5分でもいい。そんなふれあいの時間を日常に作れるような、そんなお手伝いができればいいなと思います」。

 福島さんのほかにも、県内では多くの読み聞かせボランティアが活動している。小学校などで行われる読み聞かせは参加も限定されるが、公共施設などオープンスペースでの読み聞かせは参加自由なことが多い。さあ、楽しい絵本の世界へ、親子一緒に足を踏み入れてみよう。

行ってみよう!絵本の世界を楽しめる場所

松岡さんの「アトリエ グリーンワークス」

松岡さんの「アトリエ グリーンワークス」。以前は長岡市川口にあったが、中越大震災後に長岡市川崎町に移転した。ネイチャーウォークやアートスクールも行われている。
http://www.gw-gallery.com/

こども図書館

新潟県立図書館の「こども図書室」はくつを脱いで座れるよう、中央部分がマットを敷いたスペースになっている。読み聞かせを行っている光景もそこかしこで見られる。

 絵本を手軽に楽しむなら、やっぱり図書館が一番。新潟県立図書館の「こども図書室」では、ひらがなを読むことのできる子どもなら自分で絵本が探せる子ども用資料検索パソコンを設置している。毎週金曜日には四季の行事に合わせたイベントも開催。読み聞かせ活動も盛んに行われている。

 図書館以外の公共施設でも、絵本に力を入れているところは多い。柏崎市の「こども自然王国」には、図書とおもちゃの部屋が用意され、こちらでもボランティアによる読み聞かせが随時行われている。

 そして見逃せないのが絵本作家による絵本ギャラリーだ。前ページで紹介した松岡達英さんの長岡市川崎町のアトリエは、週末や祝日にはギャラリーとして開放される(訪れる場合は事前に予約が必要)。絵本や原画のほか、流木を使った手作りのおもちゃなど、松岡ワールドを間近に楽しむことができる。「ネイチャーウォーク&アートスクール」や「自然観察会散歩」も折に触れて開催されている。

 十日町市の鉢集落には絵本作家・田島征三さんが地域の方々やボランティアとともに作った「絵本と木の実の美術館」がある(冬季は休館)。こちらは廃校になった小学校を利用したもので、田島さんの原画や映像作品、流木や木の実、和紙を使ったオブジェなどが展示されている。

 さまざまな発想に満ちた絵本の世界。楽しむ気持ちがあれば、それは無限の広がりをみせる。外を見てみよう。雪の向こうから、ほら、なにかがやってこないかい。
  
  

      

参考文献およびホームページ

      

      EhonNavi

      絵本作家サトシンHP

      川端誠のお化け屋敷へようこそ

      めざせ『絵本の読み聞かせ』1000ステージ

      絵本と木の実の美術館

      新潟県立こども自然王国

      新潟県立図書館

      

  

 

    

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県立図書館おすすめ関連書籍

「もっと詳しく知りたい!」、「じっくり読みたい!」という方、こちらの関連書籍はいかがでしょうか。以下で紹介しました書籍は、新潟県立図書館で読むことができます。貸し出しも可能です。ぜひ、県立図書館へ足をお運び下さい。

▷『蕗谷虹児』

(蕗谷虹児著/河出書房新社/2007年)請求記号:郷土資料N726/F73
 新発田市出身の蕗谷虹児は明治31(1898)年に生まれました。雑誌や新聞の挿絵のほか、童謡「花嫁人形」の作詞者としても知られています。
 本書は雑誌『令女界』や『少女画報』を飾った表紙や挿絵のほか、自身の詩画集や童話、絵本に載った作品などがカラーで掲載されています。蕗谷虹児の生涯や年譜も掲載されていますので、蕗谷虹児を知る入門書として手にとってみてはいかがでしょうか。
     

▷『はつてんじん』

(川端 誠作/クレヨンハウス/2003年)請求記号:児童E/カ
 新潟県高田市(現上越市)出身の絵本作家、川端 誠さんは落語の演目を絵本にした「落語絵本シリーズ」や『十二支のお節料理』、「お化けシリーズ」など多くの著作があります。本書は落語の演目「初天神」をもとに絵本にしたものです。天神(菅原道真)をまつった天満宮は、毎月25日が縁日で、その年の最初の縁日を「初天神」といいます。この初天神に出かけた親子のやりとりが楽しく描かれている1冊です。
      

▷『ふる里へ』

(星野知子文/黒井 健絵/小学館/2006年)請求記号:児童E/ク
 新潟市出身の画家黒井 健さんの作品は、国語の教科書にも掲載された「ごんぎつね」の挿絵としてご存知の方も多いのではないでしょうか。
 本書は、新潟の四季を黒井さんが描き、長岡市出身の星野知子さんがふるさとへの思いを綴った絵本です。7・13水害や中越地震からの復興を応援するため、先に新潟日報社から刊行された絵本『きんのいなほ』に新たにエッセーが加え、再構成されて出版されました。田んぼの向こうに沈んでいく夕陽や黄金色の稲穂、雪景色など、新潟ならではの自然が子どもの視点で表現された作品です。
      

      

      

▷『おてて絵本入門 手のひらを絵本に見立てた親子遊び 子育てがもっと楽しくなる』

(サトシン著/小学館/2008年)請求記号:家庭379/Sa87
 「おてて絵本」とは、両手を絵本の形に見立て、左右の手のひらをくっつけたり離したりしながら親子でお話しを楽しむ遊びです。本書の著者である絵本作家のサトシンさんは、このような遊びを「おてて絵本」と名付け、これを普及させる取り組みをしていらっしゃいます。本書には「おてて絵本」遊びの基本やその効果、心構えなどが簡潔に書かれています。実践するための入門書としてご覧になってみてはいかがでしょうか。

ご不明の点がありましたら、こちらへお問い合わせください。
(025)284-6001(代表)
(025)284-6824(貸出延長・調査相談)
新潟県立図書館 http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/

 

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