
file-61 つながる!新潟の鉄道:後編~県内の味のある鉄道たち
ロマンあふれる新潟の鉄道

「SL ばんえつ物語号」は、磐越西線の「ばんえつ」に、豊かな森と水に育まれた自然と人が触れ合うことで生まれる「物語」を組み合わせて命名された。
新潟にはSL が現役で運行している―。新潟県人ならよく知っていることだが、県外から見るとこれはちょっとしたトリビアだ。磐越西線の「SLばんえつ物語号」。昭和21 年に誕生し、「貴婦人」と称された蒸気機関車「SL C57-180 号機」を平成11 年に復活。現在は新潟―会津若松間を冬季を除く土・日曜、祝日を中心に運行し、新潟の「顔」の一つになっている。
長野県の豊野駅から新潟県の越後川口駅まで、信濃川を沿うように走る飯山線には、平成24 年夏「SL 信濃川ロマン号」が復活運行(区間はJR長岡駅―十日町駅)した。2 日間のみの運行だったが、折しも「大地の芸術祭」開催年。途中の下条駅には高さ11 メートルの「下条茅葺きの塔」が出現し、アートなコラボを見せてくれた。
昨年は県内在来線の「周年」ラッシュでもあった。大正元年9 月2 日開通の羽越線新津―新発田間は開通100 周年。当日はSL「C57」が同区間を2往復し、沿線の各駅では昔の鉄道写真の展示なども行われた。新津は鉄道の町として知られたところ。後半でも詳しく触れたい。ほかにも越後線白山―吉田間が開業100周年、只見線小出―大白川間が開業70 周年を迎え、それぞれ記念のイベントなどが開催された。
駅舎が写す、地域の姿

糸魚川駅のレンガ車庫(糸魚川運転センター検修庫)は、大正元年に完成した赤レンガ造りの建造物。平成22年春に解体。

新しくなった、塩沢駅の駅舎。牧之通りの風情に合わせ、木や白壁が多く用いられている。
北陸新幹線の開通に向けた工事が進む糸魚川駅も、昨年100 周年を迎えた。東京駅より2年先輩のこの駅には、ちょっと前まで赤レンガの車両基地があった。開業の頃に作られ、歴史を重ねた車両基地にはファンも多かったが、北陸新幹線の工事にともない平成22年、取り壊された。しかし保存を求める地元の声を受け、レンガの一部を保管。新しい糸魚川駅の南口に、正面アーチや壁の一部が復元されることになった。
駅舎は地域の顔である。そこには地域の思いが現れる。全国的に個性を打ち出した駅舎は多いが、県内にもそんな駅は多い。有名なところでは弥彦神社の本殿を模した、木造入母屋造の弥彦線弥彦駅。JR東日本とJR 西日本の境界駅である直江津駅は、直江津港にたびたび帰港した豪華客船「飛鳥」をモチーフに、平成12 年、装いを一新した。北越急行ほくほく線が乗り入れる上越線塩沢駅は、平成24年10 月、雁木(がんぎ)を意識したデザインへと生まれ変わった。この地域では江戸時代、三国街道塩沢宿として栄えた頃の姿を取り戻そうと、地域をあげて町並み造りが行われている。風情あふれる雁木を設けた「牧之(ぼくし)通り」は都市景観大賞など多くの賞を受賞。数多くの観光客も訪れるようになり、その動きに駅舎も合わせた格好だ。地域が変わると駅も変わる。駅舎は常に、人の営みとともにある。
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