
file-9 文学の中の新潟~紀行編

最後に林芙美子(はやしふみこ)(1903-1951)。私小説「放浪記」で直江津駅(上越市)に降りるのですが、泊まった駅前の宿「いかや」は今も同じ場所でホテル・センチュリーイカヤとして営業しています。主人公はだんごを食べて生きる気力をとりもどします。
海辺の人がなんて厭な名前をつけるんでしょう、継続だんごだなんて…。駅の歪んだ待合所に腰をかけて、白い継続だんごを食べる。あんこなめていると、あんなにも死ぬる事に明るさを感じていた事が馬鹿らしくなってきた。どんな田舎だって人は生活しているんだ。生きて働かなくてはいけないと思う。
(放浪記)
継続だんごは、閉鎖されそうになった直江津米穀取引所が、住民の反対運動で継続になったことを祝って作られた白あんの団子。今も代表的な直江津みやげとして健在です。
他にも亀田鵬斎(かめだほうさい)、菅江真澄(すがえますみ)や吉田松陰(よしだしょういん)、柳田国男(やなぎたくにお)、種田山頭火(たねださんとうか)、北原白秋(きたはらはくしゅう)など多くの人が新潟を訪れています。白秋は新潟市で愛されている唱歌「砂山」を作詞しています。幕末に活躍した川路聖謨(かわじとしあきら)は佐渡奉行として赴任し「島根のすさみ」を残しました。司馬遼太郎(1923-1996)は新潟、佐渡を度々訪れ「街道をゆく」に記しています。彼は長岡藩最期の家老河井継之助、佐渡生まれの医師、語学者司馬陵海(しばりょうかい)を主人公にした作品「峠」「胡蝶の夢」を書いています。新潟の風土や越後の人を主人公にした文学作品、新潟出身の作家による作品などはまた改めてご紹介します。
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